日記

『地球星人』村田沙耶香

2024/11/18 00:02
小説の話
2024/11/17

『地球星人』村田沙耶香 新潮社 を読んでみた。

 まず始めに、この本を読むつもりの方は「虐待」「性的虐待」「カニバリズム」に耐性があるか自分に確認した方がいい。

 最初はまあ小学生だし、自分が魔法少女と思っていても違和感なかったけれど、主人公の奈月の環境を考えれば、魔法少女ということに逃げていないと、自分が壊れてしまうからだと段々気付く。

 姉ばかりを可愛がる母親、そんな母親は奈月が塾の先生に変なことをされていると勇気を出して告げるも「おまえがいやらしいから」とスリッパで頭を何度も叩かれてしまう。

 この星は蚕の部屋と一緒で、社会貢献(働くこと、女性は子どもを産み育てること)をしていないと生きることを認められないと、だから早く大人に褒められる社会の歯車になろうと必死になる奈月が可哀想だった。

 唯一、奈月の心を支えていたのは、恋人でいとこの由宇と約束した『なにがなんでも生き延びること』だった。

『コンビニ人間』でもそうだったけど、ちょっと考え方が特殊な人が主人公で、そのフィルターを通してみると、確かに彼女の言うとおり、地球星人は工場で働き子孫を生産することに重きを置いている気がしてくる。

 常識とはなんなのかということを問いかけるような、生きていることの価値は子どもを作ることだけなのか、とこの本は訴えかけているように感じる。

 大人になってもポハピピンポボピア星人だと信じる奈月が辿る結末に、衝撃が走った。

 常識ってなんだろう、幸せってなんだろう……。


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