日記

『山白朝子短編集 死者のための音楽』山白朝子

2024/11/18 00:01
小説の話
2024/11/17

『山白朝子短編集 死者のための音楽』山白朝子 メディアファクトリー を読んでみた。

 この間の旅本作家の和泉蠟庵の話が面白かったので、短編集も買ってみた。

 7つある短編集の中から少し紹介しようと思う。

『長い旅のはじまり』山で父親が殺され、命からがら寺へ逃げてきたお宮の話。お宮の産んだ息子はなぜか色々なことを知っていて、見知らぬ土地の景色も竹トンボウの作り方も、誰に教わったわけではないのに知っていた。でもそれはお宮の父親の生まれ変わりだったからで、親子はついに自分たちの仇である男を見つけて殺し、世話になった和尚を置いて、長い旅に出てしまう。仇は討てども追われる身になった親子は、果たして安住の地を見つけ出せたのだろうか。

『黄金工場』工場の廃液を被った生き物は黄金になってしまうというお話。まるでおとぎ話の魔法のようなお話で、虫も鶏も猫も犬も黄金になる。それらを町でお金に換えたくなる気持ちはよくわかり、また「もっと、もっと」と欲深くなってしまうのもわかる。最後、魔法が解けてしまった千絵ねえちゃんはどうしたのだろうか……。

『鳥とファフロッキーズ現象について』もう動物が可哀想な目に遭うのは見るのが辛い。烏のような漆黒の羽を持ち鷹のような顔付きの大きな鳥。鳥は助けてくれたお礼として、親子の心に望んだ物を届けてくれた。それが本当には望まないものだとしても。仕方ないとはいえ、懐く鳥に刃物で羽の筋肉を傷つけて、飛べなくするシーンはつらかった。最後まで助けてくれた少女を守ってくれた鳥の物語は、私の心に悲しい余韻と共に残った。

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