日記

『私のサイクロプス』山白朝子

2024/11/15 00:01
小説の話
2024/11/12~11/13

『エムブリヲ奇譚』の続編である『私のサイクロプス』山白朝子 角川書店 を読んでみた。

 今回も厳選してお話を紹介しようと思う。

『私のサイクロプス』一つ目の大男が輪と出会い、死ぬまでのお話。輪とは前作の『エムブリヲ奇譚』の『ラピスラズリ幻想』で、死んだら何度も生を授かり生まれてくる主人公。今作では毎回出てくるようだ。一つ目の巨人を見た後の人々の行動は仕方ないかも知れない。怖がり逃げ惑うか、もしくは恐れから「殺してしまおう」になるのかも知れない。相容れないことはわかっていたけど、悲しい結末だった。

『四角い頭蓋骨と子どもたち』子どもにとって、大人たちの言葉は絶対だ。だからどんなに奇妙な習慣にも、それが当たり前に行われていたら、不思議にも疑問にも思わないだろう。貧しいが故に、見世物小屋に売るための子どもを故意に作り続けていた村。大人たちに食べられてしまった白銀の少女は、今で言うならアルビノかな。彼女は未だ復讐をせんがために、あの村で大人たちを待ち構えているんだろうな。

『呵々の夜』耳彦が蠟庵と輪のふたりとはぐれてしまい泊まった一家で起こる、怪談話。昔は旅の人が道に迷ったりして近隣の家に一晩泊まることも、日常にあっただろうけど、それはどちらにしても怖いことだなと。旅の人が悪人なら一家は殺される可能性があるし、一家が悪人なら旅の人を殺す可能性がある。耳彦の場合は、一家が悪人だったわけだけど、人殺しをする悪人でも幽霊は怖いらしい。私はもちろん、幽霊よりも悪人の方が怖いと思う。


 けれど、荷物持ちの耳彦には読んでいて呆れることもしばしば。

 どう考えても怪しいのに夜に人のあとをつける、博打で金を全部かけてしまい途方に暮れる、夜にふらふら外に出る、拾ってはいけない物を拾ってしまう。

 もう少し学習したらいいのだけど、喉元過ぎればなんとやら。耳彦は懲りずにまた危ない目に遭う。まあそうしないと物語が始まらないんだろうけど。

 山白朝子の作品は今回の2冊とも初めてだったけど、幻想的なお話をたくさん読めてとても楽しかった。


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