日記

お礼と『エムブリヲ奇譚』山白朝子

2024/11/12 00:00
小説の話
 11/10、スキをして頂きありがとうございます!いつも訪問してくださる皆様、ありがとうございます!




 2024/11/10

『エムブリヲ奇譚』山白朝子 メディアファクトリーを読んでみた。

 こちらは雨宮夜雨さんに紹介してもらった本です。夜雨さんありがとうございます!

 カバーのイラストが山本タカトで嬉しく思った。いつか展覧会行きたい。

 そして物語は江戸時代。旅本作家の和泉蠟庵が、様々な不思議に出会う連作短編集で、9つのお話が収録されていた。

 どれも面白く印象深かったけど、この中で厳選してお話を紹介しようと思う。

『エムブリヲ奇譚』表題作のこちらは、エムブリヲとはなんぞ?と思ったが、未熟な胎児のことだった。その普通では考えられない発想にびっくりした。拾った指先ほどにしかない生きた胎児を一生懸命世話する男。やがては胎児と別れることになるけれど、ちゃんと成長した胎児と再び出会うオチに、不思議な余韻が残った。

『ラピスラズリ幻想』ひとつのラピスラズリをもらったことから、生を何度も繰り返す輪のお話。しかも違う生ではなく、おんなじ輪としての生を繰り返す彼女。自殺だけはしてはいけないと言われながらも、母の生を思い決心して自殺した輪は、地獄に堕ちたとのことだが、きっと輪は責め苦に遭おうとも後悔はしなかったことだろう。

『〆』この〆というタイトルで鶏が出てきたから「ああ、やめてよ、やめてよ」と結末を悟りながら読んだ。懐いていた鶏を〆なくてはならないほど、追い詰められた状況。その漁村で取れる野菜や魚には人の顔、顔、顔が付いている。私も食の好き嫌いが激しい方で、猪肉や鹿肉でさえ食べられない。そんな中で人の顔のついた食べ物しかないならば、鶏を食べしまった彼を責めることは出来なかった。でも最早ペットとして一緒にいた鶏をさばくのは、私は出来ないなぁ……。

『地獄』蛆虫が沸き、食べ物は穴の上から落とされる肉だけで、凄まじい臭気のする穴に閉じ込められていたら、果たして私なら正気を失わずに済むだろうか?しかも肉が人肉と知ったなら。それでも空腹を前に食べずにはいられなかったら。15世紀にスコットランドで実在した、洞窟に住み人肉を食べるビーン一族を思い出した。

『「さあ、行こう」と少年が言った』和泉蠟庵の少年時代のお話。蠟庵の迷い癖のおかげで、彼女はひどい仕打ちをする夫の家族たちから離れられて、幸せに暮らせてよかったと思う。私の曾祖母もこのような仕打ちを受けて逃げたと聞いたことがあるので、昔のお嫁さんに対する価値観は、ただの小間使いに思っていることも多かったのかもしれない。「3年子無きは去れ」とかの酷い時代も確かにあったわけで、今の時代は本当に良くなったんだなと思った。

コメント

[ ログインして送信 ]

名前
コメント内容
削除用パスワード ※空欄可