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「──有里くんからの告白を断ったァ?!」
「たけ、岳羽さん!声っ、声が……!」
「いやいや、なんで?!」
「"なんで"?!」
星雫より話を聞いてほしいと持ち掛けられたゆかりは、麗らかな昼休みに投下された爆弾発言によって、荒ぶる感情を引き出されていた
密かに応援していた我らがリーダーの春が散っていた事実もさる事ながら、何故 目の前の少女が彼を振るに至ったの見当がつかない。傍目から見てもこの二人は、お互いを思い合っているとバレバレだというのに
「なんで、と聞かれても……」
激しい追及を受けながら、星雫はただただ身を小さくする他ない
断っておくと星雫は湊の事が嫌いな訳ではない、寧ろ好ましい人物だと捉えているし、彼と二人でいる時間は心が満たされるようで落ち着く瞬間でもある。嫌いだからという理由で告白を断った訳では、ない
『──枢さんの事が好きなんだ』
何の前触れもなく、つい先日 いつもと変わらない声色でそう告げられた
けれど告白を受け取った瞬間の星雫が考えた事といえば、端的に言えば、自己の保身に満ちた逃げ向上であった
特別課外活動部の皆を纏める 頼もしいリーダーを務める湊に自分は釣り合わない、その好意は自分が受け取るべきではないと長年、星雫の心に巣食ってきた自己否定が湊からの好意を受け取るのを良しとしなかったのだ
それに、
それに怖くなったのだ
穏やかに好意を告げる湊の瞳から滲む、相反する強い熱に耐えられなかった
──その瞳に見つめられ続けて、愛情を注がれ続けたら、やがては自分を保てなくなると直感したから逃げた
こんなポエムじみた理由を口に出来る程、星雫も幼くはない為、こちらの内心を探ろうと目を細めるゆかりに苦笑を向ける事しか出来ないが
「星雫の事だから、どうせまた『私じゃ有里くんに釣り合わない』って考えたんでしょ」
「どうして分かるんですか…?!」
「だって星雫ってそういうコじゃん」
まだ何かもの言いたげな様子ながら、ゆかりは口から出かかった言葉を手に持ったいちごミルクで飲み込んでしまうので話は聞けず終いで幕を閉じる
誰かにこの話を聞いてもらえば、少しは胸のわだかまりが解消されると思ったが全然そんな事もなく。友人の貴重な昼休みを消費してしまったという罪悪感がそこに加点されただけ。もう終わった事なのだ、終わった事にしていい筈、だ
「枢さん、良かったら勉強会しない?」
「明日の休みって暇?」
「この前のお弁当 美味しかったから、また食べたい」
だというのに、
あの日の告白を終わらせるつもりでいた星雫を許さないとばかりに、何故か振られた本人はお構いなしにグイグイ来る。挙句の果てには──
「真田先輩
枢さんと距離が近くないですか?離れてください」
上級生であり、シャドウとの戦いにおいても先輩にあたる存在にもこの始末
どうか勘違いであってほしいと気付かないフリをしたかった星雫だが、こういった世俗的な事に疎い美鶴からも指摘をされれば、否が応でも湊と対峙しなければならない状況へと追いやられてしまう
「あ、有里くん、ちょっとよろしいですか…?!」
「…? どうしたの?」
「っ……わ、私、有里くんからの告白をその…」
「断られたね。泣きたくなるくらいには凄く傷ついた」
「うっ、うぅ…! それなのに、」
「"どうしてこんなに自分に構うのか"?」
「……はい。そう、です」
告白を断ってから数日ぶりに、こうして湊と二人で会話をしているがいつものように心は穏やかにいられず、逆にそわそわと居心地の悪さばかりが星雫を悪戯に煽る
目を合わせて話すのが対人関係では大切だというのに、目を合わせきれない。湊からの好意を無下にしたという罪悪感もだが、それ以上に──
「確かに断られはしたけど、枢さんを諦めるつもりはない」
「(あ、)」
視界には入っていないものの、自分を見つめる熱に気付き、ぞわりと肌が粟立つ
自分を焦がす熱情、自分を変えてしまいかねない湊からの好意、あの日逃げ出した恐怖の数々が暴力的に引き起こされる
「枢さん」
不意に自分へかけられた呼び声によって反射的に頭を起こし、星雫はすぐさまその行動に後悔した
目を合わせてしまえば、分かってしまう。応えたいと仕舞ったままにしておきたい感情が胸の中で暴れ始めるせいで眩暈がしてしまいそうだった
「──ちゃんと僕を見て」
そして直視しろ
目の前にいる男は、こんなにも君への想いを募らせているのだと──そう、湊の瞳が雄弁に語りかけていた。
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