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「内容はもう殆ど覚えて、ないんです
でも、ただの夢の筈なのに春の匂いや風の感触が、とてもリアルな夢…だったとしか……」
──ただの夢である筈の内容を、まるで体験談のようにして語る星雫さんは見ているこっちが心配になる程、華奢な肩を小刻みに震わせていた
夢として処理したいのにそれも出来ないジレンマ、一部だけを持って帰ってきてしまったせいで逆に忘れがたいものとして刻まれた恐怖に彼女の心は今、直面しているのだろう
「枢さん」
体調不良も相まって、更に白さに拍車をかけた体を抱きしめる
ふと壁際に備え付けられた窓ガラスに映る自分に目をやると、星雫さんには見えない角度で部屋の中を傍観する僕が笑っているのが見て取れた
──いつかの時、寮での生活に違和感を覚えるようになったのがすべての始まりだった
小さな違和感はやがて確信に変わり、やがて この一年間を星雫さんが巻き戻し続けている事実に辿り着いた
未来を犠牲にしてでも、途方もない、永い時間を放浪する中でその事実を忘れてしまいながらも彼女は繰り返すのを止めはしなかった。有里湊という人間が生きる未来を得る、ただその一点を諦められなかったゆえに罪を犯した
ベルベットルームでエリザベスからその話を聞かされた時、僕は歓喜に胸を震わせた
それはつまり他者を害する行為を極端に恐れる彼女が僕の選択、有里湊がいない未来を否定してでも僕の命に執着してくれた、そういう事だと解釈したからだ
…けれど僕の生存が確定した未来を得た瞬間、その執着心はどこにいくのだろうと考えた。他の誰かへ心変わりする可能性だってないと断言は出来ない、だから僕は星雫さんへ保険をかける事にした
何巡目かの最中、“こたえ”を得た先で手に入れたユニバースの力を使って、繰り返す力を彼女から奪い取った
それから何度も何度も──星雫さんが繰り返した数には及ばないものの、そこそこの回数で僕は一年間を繰り返し続けた。彼女へ僕の死を見せつける為だけに、この時間の中へと閉じ込めたのだ
──全ては“死”を忘れさせない為に
死へ思い馳せる度、彼女が僕を思い出すようになるまで繰り返し続けた
これでやっと星雫さんの心の中へ、本当の意味で僕を刻み付ける事が出来た
永劫 忘れさせてなんてやらない、僕以外の誰にも彼女の心を明け渡すなんて許してやるものか。
(死を思え)
(僕を忘れるな。)
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