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満月が近いからであろう、星雫の体調が不安定になっている事に湊は薄々気付いていた
何とか登校した今日も午前中で早退する、という文面の並ぶメールを読み終え、彼女が休んでいるであろう 保健室へ昼休みを利用して湊は足を運ぶことにした
未だに体調不良で気にかけてもらうのは星雫の中では後ろめたい事のようで、中々体調の悪さを打ち明けては貰えないものの、無理をしないようになったのは及第点と取るべきなのだろう
「枢さん、いる?」
「有里くん?」
カーテンが開かれた先にあるベッドの縁に座った姿の星雫へ、一直線に歩み寄る
少しばかり眠っていたから、はたまた自分がやってきた為にか想定していたよりも幾分か明るく返ってきた返事に湊は虚をつかれた。それでも顔色の悪さは睡眠で補えるものではないらしい
「あ、有里くん。今日ってご飯はもう食べられたか、ご自身で用意されていますか?」
「購買でパンとか買ってるけど……どうして?」
「食欲がないので良ければ、有里くんに貰っていただけたらなと思ったんです
でもパンがあるのに、お弁当までとなるとお腹が苦しくなっちゃいますよね…」
「全然余裕。枢さんが良ければ、貰ってもいい?」
半ば星雫の言葉にかぶさるようにしての返事。ここまで食いつかれるのは予想外であった少女も、あまりの速さに反応できずに硬直してしまっている
気になる異性による手作り弁当を頂ける機会を逃す者など世界中のどこを探してもいないだろう、ここにいる湊もその一人だったというだけ
星雫から受け取った弁当を手にした湊の体からは、小さな花が幾つも生み出されていた
「っ……」
「!枢さん、横になる?」
「……あ、れ?ん?」
「…………どうかした?」
「……有里くんに触れて貰ってると、頭痛が収まったみたいで」
「え?」
一際強い痛みに頭を締め付けられた筈が、湊に支えられた瞬間に嘘みたいにその痛みが消えたと星雫は信じられないような口ぶりで説明する
大型シャドウの出現と関連付けられている症状を体験する事は出来ずとも、その酷さは彼女が気絶するサマを見て来た為に想像する事は可能だ
実際に今も座っていられない程の衝撃だった筈なのに、星雫はけろりとしている。まさか本当に自分との接触で症状を緩和出来ているのか──?
「僕も早退する」
「え?! 有里くんもどこか具合が…?」
「本当に枢さんの頭痛が、僕がいるだけで軽減するのか試したくて」
「そ、それは確かに気になりますが……
いえ、やっぱりダメです。試すなら学校が終わった後でも間に合うので早退はダメ、ですよ」
「……放課後ならいいんだ?」
体調不良が原因による早退は今に始まった事ではない、そして早退した後が心配だからと湊まで早退してきた事も何度かある
その度に申し訳ない気持ちがせり上がってきて、自分は大丈夫と彼に説得を続けて来た。今の星雫からかけられた言葉もその延長線上から成るものだ。だが──今日は何かしらのスイッチを押してしまったらしい
「じゃあ寄り道せずに真っすぐに帰るから、待ってて」
罪悪感から生み出され始めた頭痛も、今のように湊が手を包み込んでくれただけで去っていったようだ
彼は自分の頭痛が緩和される為の方法を模索しているだけ、ここで見つかった手がかりの検証をしたいだけ──の筈なのに後戻りできない道へ、突き放された気がするのはどうしてなのだろうか。
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