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「はぁ、は……っ」
「星雫さん、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫、です……少し、待って、もらえれば……」
「幾らでも待ちます、どうかゆっくりと息を整えて頂ければ」
雪崩れ込むようにして巌戸台分寮のロビーに二つの影が転がり込む。アイギスと星雫、二人の少女だ
休学中に落ちた体力をいくらか取り戻せたという自負に対し、まさかこんな落とし穴が用意されているとは思ってもいない事で
ぜいぜい、と必死に呼吸を繰り返すばかりの肩を撫でるアイギスの表情が不意に悲痛な面持ちへと歪む
「……アイギスちゃん?」
「先程は、申し訳ありませんでした
あの人達が星雫さんを取り囲んでいるのを見た瞬間、体が勝手に動いてしまって…」
────話は数分前までに遡る、今日は星雫にとって部活や生徒会の活動が一切ない珍しい休養日であった
それを聞きつけてやって来たアイギスと共に放課後の街を散策しようと提案し、アイギスもそれに賛同してくれた
店先に並べられた小物を見たり、一緒に食事を取ったり、滅多にない事だからとはしゃぐ星雫の姿にやがてつられるようにしてアイギスも調子を上げて来た頃、早めに飲酒を始めていた男達に絡まれる事態が発生したのである
─星雫さんから離れてください!
─何だコイ…ッ?!
─ぎゃー?!投げ飛ばされたぞ!大丈夫か?!
─退路確保。今の内です、星雫さん!
「……美鶴さんにも目立つような行動は控えるように、と言われたばかりなのに」
しゅん、という音が聞こえてきそうな程にアイギスは自らの行いを反省し、落ち込んでいる
喜怒哀楽のはっきりとした表情、感情の乗った言葉、人間と何ら変わりないと言えどもアイギスが機械仕掛けの乙女である事実は覆らない
普段は素性を隠して学校生活を送っている為、どうしても色んな制約が彼女を縛り付けてしまう
アイギス自身がそれを理解しているからこそ、感情に任せた行動を彼女は恥じていた。自分を助けてくれた恩人に、彼女自身の正義感が間違ったものだと思ってほしくなくて、星雫は俯きがちのアイギスへ手を伸ばした
「私がこんなだからアイギスちゃんには戦闘でもそうだけど、守ってもらってばかりだね
どうにかお返しをしたいと思ってるのに、全然行動が追いつかないんです」
「……星雫さん」
「助けてくれて、ありがとうございます
とても困っていたから、あなたが来てくれてほっとしました」
「…………お礼も、お返しも私には必要ありません」
「え」
「あ、迷惑などとそういった意味ではなく…!星雫さんは私にお返しを、と言ってくれましたが、逆です
今の私はあなたから貰ったものに対して、私の全てを以てお返しをさせて貰っているだけなのですから」
アイギスの中で何を差し置いてでも優先すべき最優先事項というものがある、細かく分ければそれは二つに渡る
一つは有里湊という青年の傍にいる事、そしてもう一つが砲身の役目を備えた手を握る、この少女を守る事である
生を受けたばかりのアイギスへより細かで豊かな感情を与える事を目的に、教育係として寄越されたのが幼い星雫だった
初めて見る人間の子供、その子と共に過ごす内、育まれた感情がアイギスに星雫を守るという行動に駆り立てさせるのだ、今も昔も、そして──これからも変わらず
「一つだけ、我儘を言ってもいいでしょうか?」
「!うん、何でも言って」
「……これからも星雫さんや、湊さんのお傍にいる許可を私に下さい
私にとっての『一番大切』を失いたく、ないのです」
「許可、なんていらないよ
有里くんもそう言うに決まってます!」
不安な気持ちのままにこぼされた願いは、間髪入れずに発せられた星雫の言葉によって聞き届けられる
まだ彼女達の傍にいる事が出来る、未来を共に歩んでいける。眩い光を見たように、アイギスの瞳は弧を描き、やがて笑顔となって星雫の前に描き出されるのであった。
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