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──枢星雫という少女に湊が特別な情を抱くようになったのはいつ頃からだっただろうか
ただの友達という枠組みに想いが納められなくなったのを皮切りに、仲間という響きでは関係を終わらせたくないと願った日が今となっては数年も前の話のように湊は感じていた
「桐条先輩、このお薬、良かったら使ってください」
「ああ、ありがとう
君は生徒会の仕事でもそうだが、とても良く人を見ているな。おかげでこちらは大助かりだ」
「あの美鶴が褒めるなんて中々にないことだが、枢は本当に良くやっていると思うぞ」
「わ、真田先輩からも褒められるなんて…ありがとうございます」
特別課外活動部と学生の二重生活は中々にハードであり、影時間は真夜中に現れる為に寝不足は常。そして隣り合わせの死に命を持っていかれないようにと戦闘にはどこまでも緊張が続く
影時間の中でのみ現れるタルタロス、塔の一階に位置するエントランスはそんな彼らが唯一気の抜ける場所となっている
星雫の些細な気遣いもまた、彼女の尊敬する美鶴や湊を含めた仲間の心のコリを解す癒しとして、欠かせない存在と化していた
穏やかな微笑を絶やさずにいた星雫もエントランスから上階へと一度踏み出せば、待ち受ける戦闘の数々
身の丈はあるバルディッシュでシャドウを蹴散らす少女の背後から奔る一陣の矢、後衛に下がっていた友からの支援攻撃だ
「星雫、ごめん!撃ち漏らした!そっちにシャドウがいってる!」
「心配しないでください!これくらい…!」
「オルフェ「させないのであります!」…………」
「アイギスちゃん…!」
「お怪我はありませんか?星雫さん」
ゆかりの必死な警告からすぐさま迎撃の構えを取る星雫、そんな彼女とは反射的に召喚器を引き抜く湊──その誰の追随も許さなかったのが星雫を襲いかけたシャドウを掃討したアイギスである
星雫が怪我の一つも負わなかったと安堵するべきなのに「助けてくれてありがとう」と彼女から手離しの言葉を一身に受けるアイギスへ嫉妬にも似た感情を湊は抱いてしまう
するとアイギスは何てことないように、けれどこの場の誰にも効果的な爆弾を投下してきた
「湊さんの大切な人は、私にとっても大切でありますから」
────ち ょ っ と 待 て
ナビを担当する風花、否、エントランスで待機している人間全てが絶句しているのを感じつつ、湊はポーカーフェイスをギリギリ保ちながらも、だが感情だけは暴風が如く彼の胸中で暴れ狂っていた
特別課外活動部の誰もが薄々と我らがリーダーは星雫へ並々ならぬ感情を抱いていたのを知りながら、静観を決め込んでいた
誰が言うでなくそうすべきというのが全員の暗黙のルールだったからだ。その約定をアイギスが破った、現場のゆかりは溜まったものではない
「有里くんの…大切……え、それって、」
湊を見る度胸は生憎とゆかりはなかった、代わりに代理告白を受けたに等しい星雫を見て見るとその顔は見る見る内に暗がりでも分かる程に赤くゆだっていて
隙だらけの心に突然舞い込んだ言葉を彼女が徐々に理解していることが分かる反応だが、迷惑といった様子は見受けられない。これは──もしかしなくても?
「あ、ありさ「全員、散策」オッケー!星雫、有里くんもまた後でね!」
「え、じ、じゃあ私も「枢さんは残って」……ひゃい」
巻き込み事故現場よりさっさと離れてしまいたかったゆかりはアイギスを連れ、あれよあれよと言う間にいなくなってしまった
とんでもなく居たたまれない空気に湊と二人きり、この状況を知っている筈のエントランス側の風花達も助け船を星雫へ寄こす気はないらしい
今だけは、まっすぐに湊の顔を見れなくて、星雫は忙しなく視線を散りばめるしかなかった
「枢さん」
「あの、有里くん、あの、」
「何故かアイギスに先に暴露されちゃったけど、大切っていうのはそういうことだから」
「……率先して私の事、戦闘で庇ってもらったり、小さい怪我でも回復を回してもらっていたのも、」
「全部、枢さんが大切だからやってた」
「はわ…………」
それ以上に言葉が見つからないと惚ける姿があまりにも可愛らしくて、湊からは小さく笑みがこぼれる
仕舞い続けたまま、その先はどうするべきかを迷い続けた想いの行き先が事故とは言え、こうして見つかったのは不幸中の幸いか。星雫の反応を前に落とし込んだ蓋の隙間から一気に彼女の想いが溢れだす
一歩近付かれた事に対する反射だろう、同じように後退する星雫の一歩はとても小さく、湊から伸ばされた腕に容易く捕まってしまう。瞬く間にゼロに埋められた距離、湊の腕の中で星雫の息を呑む音が確かに聞こえた
「好きだよ、星雫さん」
小さく強張った肩すら、こんなにも愛しい。
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