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閃光が視界を駆け抜けたまま、眩いほどの白い光に閉ざされた世界が段々と暗く萎んでいく
あまりの痛みに声も出せず、辛うじて吐き出せたのも呼吸だけという有様
「(……いた、い)」
遠くでは耳をつんざくような悲鳴が聞こえる、自分にかけられているものだと分かっているのに返事も出来ない
─────現実からなおも追いかけてくる鎖の音から逃げるようにして、星雫は深い意識の水底へ身を投げた
───────、
頬に落ちる温かなものが一つ二つと数を増やしていき、意識の海面を震わせる
鎖の音はもう聞こえない、聞こえていたとしても今の彼女には気にする余裕もなく。自分を呼ぶ人がいるのだ、早く、早く──逸る想いが背中を後押しする
「……っ?!」
咄嗟に吸い込んだ酸素の量に咳き込みかけるのを抑えながら、彼女は自分の身に何が起こったのかを脳内で整理する
タルタロスでの探索中、風花の眼を掻い潜って現れた『死神』の圧倒的な力を前に、その場にいた誰もが手も足も出せなかった。唯一出来た事といえば、どうにか逃走経路を確保する為の時間稼ぎくらいだったと思われる
自分はその攻撃を受け、瀕死の状態に陥った。誰かが運んでくれた自室で着替えさせられた寝巻を捲った素肌には、あの時に受けた致命傷は見当たらない。魔法で治療されたのだろう
十分に酸素が脳に行き渡り、視界が開けた頃になってふとベッド脇のテーブル上に置かれた携帯が点灯している事に気付いた
『時間は気にしなくていいから、起きたら報せて』
シンプルで飾り気のない文章。どうしようかと少し悩んだ末、星雫はこのメールを送ってくれた相手に目覚めの文章を打つ
来訪を知らせるノック音が響いたのはそこからすぐの話であった
「有里、くん……?」
彼以外の仲間がいたら それはそれで驚きであったが、未だ起きたままの湊が部屋にまで来た事に対しても驚きを隠せずにいた
部屋の中へ素直に足を踏み入れるものの、静寂は二人を包んだまま。じっとこちらを見つめる瞳に、流石の星雫であっても居たたまれない感情に支配されてしまう
「、わ」
何か声をと開きかけた口から出た悲鳴ごと、湊の胸の中に吸い込まれる。押し倒される形でベッドに逆戻りとなった星雫はそこで彼の体が震えていることに気付く
服一枚を隔てているだけで感じ取る事を難しくさせる程、それ程までに小さい微かな震え。ぎゅうぎゅうと包み込む腕の強さは、湊の怯えを表わしているかのようだ
「……有里くん。私、ちゃんと生きてます、大丈夫ですよ
びっくりしちゃいましたね、怖かった、ですよね。でもどうか……安心してください」
こちらの呼びかけに起き上がった頬へ手を沿え、優しく輪郭をなぞる
彼の瞳を覆っていた透明な膜が崩れ、温かな雫となって星雫に降り注ぐ。「泣かないで」と幼い子供に呼びかけるように声をかけ続けながら、自分からも湊を抱きしめる為に腕を伸ばした
「……枢、さん」
「えっと、落ち着かれましたか…?」
「……まだもう少しかかりそう
お願い。今夜だけは、君と一緒にいさせて」
例え星雫がここで拒否しても到底、離してくれはしないであろう力で願いを口にする湊をもう一度、抱き締め返す
ありがとう、と安堵しても腕の力が緩まる訳でもなく。寮のルールを破ってしまった罪悪感と湊の腕の狭間で、星雫は再び目を閉じる。──鎖の音に変わり、湊の呼吸、鼓動が意識の中へと溶け込んでくるようであった。
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