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疲労を訴える仲間がまた一人 戦線から離脱して、暫く一人でタルタロスを駆け上っていた
一人による編成では行ける場所に限りが出てしまうし、引き際くらいは僕にも分かっているつもり。他の仲間同様に疲労感が声に表れ始めた山岸にも寮へ戻るように提案した
シャドウに気取られないように背面を取る
弱点を突く為、有利なペルソナを召喚して戦い進む。仲間がいるのは頼もしいけど、一人は一人で気楽なものがあるのもまた事実だ。だって他人のことまで考えないで済むし
影時間を解消する、何とも立派な大義だと思う
だけど実際は足並みはすぐにばらつくし、皆が皆、自分の事で手一杯感は否めないし。それは僕も同じなんだけどな
────── いっその事、このまま世界の滅びを見届けるのも悪くないんじゃないか?なんて思わなくもないし
『有里くん、聞こえますか?』
「……え?」
『枢です、突然ごめんなさい
風花ちゃんも帰り支度を始めましたし、今夜は一緒に撤収しませんか?』
聞きたい事はたくさん言葉として浮かぶけれど、通信機器越しに話すのもじれったい
影時間が始まり、いつものようにタルタロスをのぼる初期パーティから離脱したままだった星雫さんの声が、どうして聞こえるのか。他の皆と撤収せずにエントランスに残っている理由は?
それら全てを呑み込み、エントランスで待つ星雫さんにすぐ降りる事を告げてから下の階へ続く階段を駆け下りる。道中のシャドウが何とも鬱陶しかった
「……あ、おかえりなさい!」
タルタロスから急いで降りて来た僕を視界に捉えただけで、この笑顔
そう、僕が行った事と言えば戻ってきただけだ。それなのに、それだけでそんな笑顔を向けてもらえると自分は何か偉業を成し遂げたのではないかと勘違いをしそうになる。それ程の魔力を秘めた笑顔だと断言する
笑顔に連なるようにキラキラと真っ青に輝く楕円形の大きな瞳、極めつけが彼女がタルタロスを先に降りる際、体を冷やさないようにと僕が貸していた上着だ
細っこいと評される事が多い僕の体格に合わせて作られた制服であっても、星雫さんの体躯には有り余るようで、袖どころか全体でダボダボだ
服を着ているというよりも着られているというのが正しい。地上にある可愛さは全て星雫さんに凝縮されているのではなかろうか
「枢さんも無理しないで、先に帰っていてよかったのに」
「エントランスに戻ってきた時、一人で戦ってくれていた有里くんを誰も出迎えないのは失礼でしょう?
早々に戦線から離脱した私が何を言ってるんだって話で、そう言われると返す言葉もないのですが……」
もっと体力をつけますね、とふんすと燃えている星雫さんが可愛い。少し意地の悪い言葉を発したに関わらず、僕の力になる為に頑張るだなんていちいちいじらしすぎる
胸元で握りこぶしを作ってやる気満々なのが十分に伝わって来るのも相まって、そろそろ僕のポーカーフェイスも機能不全に陥りかけている
「皆さんもお疲れでしたし、有里くんも疲れていますよね
影時間もそろそろ明けますし、一緒に帰りましょう?」
「そうだね。……枢さん」
「はい、何でしょう?」
「少しだけ、肩を借りてもいい?」
「! もちろんですっ」
……彼女の優しさと無防備につけ込んでいる僕自身が言うのも何だが、星雫さんはもっと他人を疑う癖を付けた方がいいと思う
この場合は肩とだけ信じた素直さが仇になったのか。ポーカーフェイスよりも先に崩れ、節度を失った僕は頼られたと嬉しそうに表情を綻ばせていた星雫さんを抱き込んでしまったのである
「あ、あの、肩を借りるという話だった筈、なのですが……」
「うん。だからちゃんと肩も借りてるよ」
「うっ…それは、そうなのですが……」
口籠って強く出られない所も弱弱しくて愛しい、もう少しだけと更に密着度を高めると星雫さんはカチカチに体を固めてしまった
そんな彼女の混乱をついた僕といえば 体の柔らかさや細さを堪能し、肩口に顔を埋めて深呼吸と好き勝手
さっきまで不穏な事を考えていた気がするけどもう忘れた、というかこの瞬間以外の事に考えを割く時間がもったいない、どうでも良すぎた
(────この日、少女は人知れず世界を救ったのである)
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