SS-p3
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一日と一日の隙間に現れる影時間の中でのみ現れるタルタロス
月まで届かんと背を伸ばす歪な塔の内部は人々に害をもたらすシャドウの巣窟と化している
「──お願い、エウリュアレー!」
「この機を逃がすな、蹴散らすぞ!」
「よし、行こう」
引き金が引かれ、程なくして内部に仕掛けられた撃鉄が重苦しい音を響かせた
星雫の背後へと召喚された女性型のペルソナ『エウリュアレー』からの攻撃にシャドウが蹲る。敵の動きが止まった、またとないチャンスに特別課外活動部の面々がリーダーの指示で一斉に駆け出した
「星雫っち?!」
焦りを伴った順平の声がやけに遠くに聞こえた気がした、分散しないようにと身を固めて動いていたのでそんなに彼が遠くにいた筈もないのに
ああ、そうかと星雫は己から生じた問いに不意に答えを得た。もつれた足に転んでしまうからと意識が現実から遠のいていた、だから順平の声も遠くに聞こえてしまったのだろうと
「…あ、れ?」
「大丈夫?枢さん」
「有里くん…!有里くんが転ばないようにしてくれたんですか?」
「丁度、隣にいたから…間に合って良かった」
幾ら待っても訪れない現実に星雫の意識が立ち戻ると 特別課外活動部のリーダーであり、同級生でもある有里湊が自分を庇ってくれていた事に気付いた
一体、どれくらいの時間をそうしていたかは分からないが、彼を無視していた事実に対し、星雫は大げさな程に頭を下げる
気にしないでと緩く首を横に振り、怪我はないかと気にかける彼の背後でシャドウを倒し終わった友人がエントランスにいる他のメンバーと通信を取っている姿が伺えた
知らず武器として支給されたバルディッシュの柄を強く握る星雫の手元に、湊の視線が落ちた
「枢さん?」
「あ、えっと……我ながら情けないなぁと…
伊織くん達のようには上手くいかなくて、お役立ち出来ない所に歯がゆい気持ちでいっぱいになっちゃいました」
へらり、と戦闘が終わった事も相まって緊張感が緩んだ笑顔だった
友人達を頼もしいと思う一方、彼らの力になりたいと願う程に力の差を痛感する。タルタロスを登るだけで尽きそうになる体がもっと健康であったなら、何か秀でたものがあったのなら──ないものを強請ってしまう
隠し事は嫌だからと素直に胸の内を吐き出してみたはいいものの、募り始めた自己嫌悪の念に待ったをかけたのは他でもない、星雫の特別課外活動部の面々の為に役に立ちたいという本音を受け止めた湊だった
「一斉攻撃の指示に即座に気付く速さも、集中力も枢さん以外に秀でている人はいないよ」
「……えへへ、有里くんに気を使わせちゃいましたね」
「全部近くで、ずっと見て来た君が僕に教えてくれたことだよ」
「っ……」
「そうやって感情が顔に出やすいのも、これまでの枢さんが教えてくれたことだから」
逃走の一心に染まりかけた本心を見透かすように、先程参加できなかった一斉攻撃の要領で湊は星雫の心へと言葉を雪崩れ込ませていく
春先に解ける氷のように彼の言葉はじわじわと星雫の心の隅々にまで浸透していき、やがては彼女の自己嫌悪を滲ませる想いすらも抱き締めてしまうのだ
そこに芽生えるバルディッシュに白旗を巻き付け、彼の前で振ってみせたい程の羞恥心、ひとつまみの嬉しさ
「今日の有里くんは、いつもよりお喋りです……」
「そうかな、君に対してはいつもこんなものだと思うけれど」
それ以上、どうか喋ってくれるなと赤い顔で首を横に振る星雫を見つめる湊の視線はどこまでも甘ったるい
.
1/30ページ