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ざぁっと音を立て、〇〇の帰り道に木々の騒めきと風が流れ込む
帰り道には彼女一人のものが存在する、寂しささえも感じさせる在り様は体育祭が終わった後も仲直りできずにいる少年との間の壁を物語るかのよう
―しょ、う、とォ───ッ!
「(あの時の私はどちらかと言うと敵顔、をしてた気がする)」
そこまでしても彼を救ったのは自分ではない、守られるだけの自分じゃないと叫んだ癖に自分は彼の前に倒れた。〇〇の手に残った結果が焦凍への仲直りの道に踏み込む事を躊躇わせる
リカバリーガールのおかげで傷跡さえも残っていない筈なのに、体育祭で受けた凍傷の部分が疼く
「っ…」
ざぁ、と先程よりも強く、大きな音を立てて突風が〇〇の帰りを妨げる
突風が運んできたのはどうやら音だけではなかったようで、ゴミの入り込んでしまった目の痛みに立ち止まる。涙さえも滲んだ時だ、掻こうとした手を引き寄せられたのは
「!焦凍、くん…?」
「何か、あったのか」
「え?」
「…泣いてたんじゃねぇのか?」
「え?」
引き寄せられた手の先では繋ぎ直そうと願い、出来ずにいた彼
どうやら遠目から見た〇〇が泣いていたと思ったらしい。校舎から走ってきたのだろう、捕まれた手首は火傷しそうな程、熱く。微かに上がった肩と呼吸に期待を〇〇はしてしまった
―少し、話せねぇか
「「…………」」
「〇〇ちゃん」/「焦凍くん」
「…なぁに?」
「…〇〇ちゃんこそ」
「「…………」」
ことごとく言葉が被さり合う状況、暫くの無言の後に訪れたのは二つ分の笑い声
ああ、何だ。自分も焦凍もこんなにも──目の前の相手に話したい事があったのだ。それに気付けたのは少し話そうと彼が提案し、この狭いベンチという距離のおかげなのだろう
「聴取・希望。ずっと、体育祭が終わってから聞きたかったの」
「おう」
「……緑谷くんに、全部壊された後に見た光景は、どうだった?」
ずっと〇〇は聞きたかったのだ
エンデヴァーという怨恨に呑まれ続けていた彼が、遺恨や母へのしがらみを緑谷に壊され、そこに何が残ったのか
自分の言葉に見開いた瞳に何が映ったのか、ずっと心配だった
「アイツに全部ぶっ壊されて、親父への感情とか抜きで見た光景は──」
この日、何度も〇〇を襲ってきた突風がその言葉を攫っていく
彼が紡いだ言葉はこの世界で唯一、〇〇にだけ聞こえて。彼の答えを聞いた彼女はただ安心したように、笑う。その笑顔が安堵の色に染まっている、それが答えだ
「それから昔、お母さんに言われた事も思い出した
なりたいものになっていい、自分の道を狭めてたのは俺だった…んじゃねぇかって」
「疑問。守ろうとしていた私は、どう見えた?」
「…俺が思っていた以上に〇〇ちゃんは真っ白じゃなかった、小さい子供なままなんかじゃなかった」
自分は守られるばかりじゃない、という叫び声に目を覚ました
そうやって目を覚ました先には天使でも、守られるだけでもない、同じヒーローを志す少女が焦凍の前に立っていた
「だから、」
「うん」
「ヒーローとして、一緒に強くなろう。〇〇ちゃん」
「うん。勿論、一緒に…強くなろう。一緒にヒーローになろう、焦凍くん」
朗らかに焦凍から伸ばされた手に〇〇は微笑んで応える、そこに握手を添えて
ここが二人のスタートライン。ヒーローとして、焦凍といのりという関係のリスタート地点と言えるのだろう
「提案。言葉が何度も重なるなら、喧嘩の終わりも一緒の言葉を伝え合おう?」
「おっ。…おう、そうだな」
話したい事はいっぱいあるけれど、一緒に強くなると約束もしたけれど──
この言葉はケジメとしてつけないといけないから、二人は視線を交わしながら同じタイミングで唇を動かした
「ごめんね、焦凍くん」
「ごめんな、〇〇ちゃん」
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