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ざあざあ、と降る雨のせいで見通しが悪くなる戦場に今日は珍しくアカデミアの戦士はいない様だ。どうか、この雨が長く続く様に祈る〇〇。長い戦闘で傷付いた仲間達を少しでも休ませる、恵みの雨になって欲しい
ああ、そういえば、あの日もこんな風に長く降り続く雨をぼんやり眺めていたなと今となっては遠くなった出来事を〇〇は思い出していた。あれはまだ自分と隼が出会って間もない頃だった
「…〇〇、だったか」
「え?あ…えっと、確か…」
「隼だ、黒咲隼」
「瑠璃ちゃんのお兄さん、でしたよね」
教室の窓からも見えていたが、こう天から大粒の雨が降っているのを実際に見ると憂鬱な気分に陥るのは仕方ないと思われる。屋根から伝い落ちる雨に足止めをくらった〇〇に声をかけてきたのは、その瑠璃の兄だった
学校が終わった放課後。いつもなら、部活や委員会に所属してない〇〇は家にそのまま帰る事が多かった、ユートを通じて出来た友達の瑠璃やサヤカに遊びに誘われる事もたまにあったが
「瑠璃を知らないか」
「瑠璃ちゃんなら、雨が降る前に帰ったみたいですよ」
「そうか…」
この黒咲隼という人と〇〇が出会ったのは、つい最近のこと。出会いは瑠璃と知り合った時と同じくユートを通じてだった、自分の親友だという言葉には驚いた。こんな年上の人が弟の親友なんて思いもしなかった
しかしユートには悪いが、少し隼という人に〇〇は苦手意識を持っていた。対人恐怖症というにはまだ酷くないが、〇〇は人付き合いが苦手だった。友達も年下の瑠璃を含めても少ない
その名前通りにハヤブサの様に鋭い隼の瞳が怖かった、だからあまり関わらずにいようと思ったのに、まさかこうやって出会う事になるなんて思いもしなかった。もしかすると、これは神様が人付き合いを少しは良くしろと言っているのだろうか
「傘はどうしたんだ?」
「えっと、取られちゃったみたいで」
「それは災難だったな」
「いえ。その人が雨に濡れなければ、それでいいんです」
「……」
これは少し突き放しすぎただろうか。思い返せば、自分の声色も素っ気ないというか冷たい様にも感じた。あわわ、と心の中で自分の失態に慌てふためく。隼は気を悪くしてないだろうか、してない事を祈るしかない
ざあざあ、と雨の音が更に強まった気がする、それは〇〇と隼の間に会話がないからだろう。何か話そうとしても、もしかしたらさっきの会話で彼は自分と話すのが嫌かもしれない、と考えて、言葉が出なかった
「ここで雨がやむのを待っていても仕方ない、送っていこう」
「そんな!悪いです…!」
「家ならユートに聞いた事がある
それに丁度、ユートに用事があった。家まで案内してくれないか」
「そ、そういうことでしたら…」
普通は瑠璃の傘を持って来ていても可笑しくないが、隼は自分の傘しか持って来ていなかった。もしかすると瑠璃とはこうやって普段から相合い傘をするのだろうか、この二人の事だ、恋人と間違えられる事も少なくないだろう
しかし一体、彼はユートに何の用事だったのだろうかと疑問符を浮かべる。こんな雨の日にユートがわざわざ、家に呼ぶとは思えない。あの子は気遣いが出来る子だ。だとすると、隼がユートに用があって家に行く事にしたのだろうか
「あ、あの…」
「どうした?」
「ユートくんにはどんな用事で…」
「…実は用事はない」
「え?!ないんですか?!じゃあ、どうして…」
増々、〇〇は隼の行動が分からなくなって来た
ユートに用事がない、それに学校に瑠璃がいないと知ったなら、先程家に真っ直ぐ帰ればよかったではないか。態々、自分を送り届けるなんて遠回りになってしまう
「ユートの姉である君を放っておけなかった
あそこで待っていても、いつまでも雨が止まないだろうと思ってな」
「……」
「それとも、ユートが傘を持って来る手筈だったのか?」
ふるふる、とその言葉を否定する為に横に振った頭に隼はそうか、と穏やかに微笑んだ。そんな表情を彼が〇〇に見せたのは初めてだと思われる。否、初めてではなかった、と〇〇は自分の勘違いを否定する
彼の穏やかな表情を初めて見たのは、遠目から瑠璃と彼が話している所を目撃した以来だ。その時はああいう表情も出来るんだ、という失礼な感想を抱いたものだ
少しだけ自分の思い込みを反省する。その瞳は本当に鋭くて、見つめられると心臓が忙しくなるので怖かった。けれど黒咲隼という人は本当は穏やかな性格をした、優しい兄の様な人なのかもしれないと考えを改める
そんな性質を持つ隼だからこそ、ユートも彼を親友だと自分に紹介してくれたかもしれない――そう思うと隼と目を合わせて話す事への恐怖も薄らいでいくのを、〇〇は感じていた
「それじゃあ、ユートによろしく言っておいてくれ」
「ま、待ってください、隼さん!
送っていただいたお礼にコーヒー、飲んでいってください!ユートくんも隼さんに会いたいと思うんです!」
「……〇〇は律儀だな、知らなかった」
ふ、とまた先程の穏やかなものとは違い、〇〇の必死な様子を面白がって笑う隼。あ、まただ、と〇〇は自分の心臓がとくり、と疼くのを感じた。その疼きはどこか苦しくて、でも決して嫌なものではない
それよりも今までは怖くて、その姿を目に映す事もままならなかったのに今はどうだ、傘を畳む隼の姿を追いかけている自分がいる。一体、自分はどうしたのだろう。これではまるで――
この瞳が追っていたのは
(まるで、彼に)
(恋をしているみたいだ、なんて)
ああ、そういえば、あの日もこんな風に長く降り続く雨をぼんやり眺めていたなと今となっては遠くなった出来事を〇〇は思い出していた。あれはまだ自分と隼が出会って間もない頃だった
「…〇〇、だったか」
「え?あ…えっと、確か…」
「隼だ、黒咲隼」
「瑠璃ちゃんのお兄さん、でしたよね」
教室の窓からも見えていたが、こう天から大粒の雨が降っているのを実際に見ると憂鬱な気分に陥るのは仕方ないと思われる。屋根から伝い落ちる雨に足止めをくらった〇〇に声をかけてきたのは、その瑠璃の兄だった
学校が終わった放課後。いつもなら、部活や委員会に所属してない〇〇は家にそのまま帰る事が多かった、ユートを通じて出来た友達の瑠璃やサヤカに遊びに誘われる事もたまにあったが
「瑠璃を知らないか」
「瑠璃ちゃんなら、雨が降る前に帰ったみたいですよ」
「そうか…」
この黒咲隼という人と〇〇が出会ったのは、つい最近のこと。出会いは瑠璃と知り合った時と同じくユートを通じてだった、自分の親友だという言葉には驚いた。こんな年上の人が弟の親友なんて思いもしなかった
しかしユートには悪いが、少し隼という人に〇〇は苦手意識を持っていた。対人恐怖症というにはまだ酷くないが、〇〇は人付き合いが苦手だった。友達も年下の瑠璃を含めても少ない
その名前通りにハヤブサの様に鋭い隼の瞳が怖かった、だからあまり関わらずにいようと思ったのに、まさかこうやって出会う事になるなんて思いもしなかった。もしかすると、これは神様が人付き合いを少しは良くしろと言っているのだろうか
「傘はどうしたんだ?」
「えっと、取られちゃったみたいで」
「それは災難だったな」
「いえ。その人が雨に濡れなければ、それでいいんです」
「……」
これは少し突き放しすぎただろうか。思い返せば、自分の声色も素っ気ないというか冷たい様にも感じた。あわわ、と心の中で自分の失態に慌てふためく。隼は気を悪くしてないだろうか、してない事を祈るしかない
ざあざあ、と雨の音が更に強まった気がする、それは〇〇と隼の間に会話がないからだろう。何か話そうとしても、もしかしたらさっきの会話で彼は自分と話すのが嫌かもしれない、と考えて、言葉が出なかった
「ここで雨がやむのを待っていても仕方ない、送っていこう」
「そんな!悪いです…!」
「家ならユートに聞いた事がある
それに丁度、ユートに用事があった。家まで案内してくれないか」
「そ、そういうことでしたら…」
普通は瑠璃の傘を持って来ていても可笑しくないが、隼は自分の傘しか持って来ていなかった。もしかすると瑠璃とはこうやって普段から相合い傘をするのだろうか、この二人の事だ、恋人と間違えられる事も少なくないだろう
しかし一体、彼はユートに何の用事だったのだろうかと疑問符を浮かべる。こんな雨の日にユートがわざわざ、家に呼ぶとは思えない。あの子は気遣いが出来る子だ。だとすると、隼がユートに用があって家に行く事にしたのだろうか
「あ、あの…」
「どうした?」
「ユートくんにはどんな用事で…」
「…実は用事はない」
「え?!ないんですか?!じゃあ、どうして…」
増々、〇〇は隼の行動が分からなくなって来た
ユートに用事がない、それに学校に瑠璃がいないと知ったなら、先程家に真っ直ぐ帰ればよかったではないか。態々、自分を送り届けるなんて遠回りになってしまう
「ユートの姉である君を放っておけなかった
あそこで待っていても、いつまでも雨が止まないだろうと思ってな」
「……」
「それとも、ユートが傘を持って来る手筈だったのか?」
ふるふる、とその言葉を否定する為に横に振った頭に隼はそうか、と穏やかに微笑んだ。そんな表情を彼が〇〇に見せたのは初めてだと思われる。否、初めてではなかった、と〇〇は自分の勘違いを否定する
彼の穏やかな表情を初めて見たのは、遠目から瑠璃と彼が話している所を目撃した以来だ。その時はああいう表情も出来るんだ、という失礼な感想を抱いたものだ
少しだけ自分の思い込みを反省する。その瞳は本当に鋭くて、見つめられると心臓が忙しくなるので怖かった。けれど黒咲隼という人は本当は穏やかな性格をした、優しい兄の様な人なのかもしれないと考えを改める
そんな性質を持つ隼だからこそ、ユートも彼を親友だと自分に紹介してくれたかもしれない――そう思うと隼と目を合わせて話す事への恐怖も薄らいでいくのを、〇〇は感じていた
「それじゃあ、ユートによろしく言っておいてくれ」
「ま、待ってください、隼さん!
送っていただいたお礼にコーヒー、飲んでいってください!ユートくんも隼さんに会いたいと思うんです!」
「……〇〇は律儀だな、知らなかった」
ふ、とまた先程の穏やかなものとは違い、〇〇の必死な様子を面白がって笑う隼。あ、まただ、と〇〇は自分の心臓がとくり、と疼くのを感じた。その疼きはどこか苦しくて、でも決して嫌なものではない
それよりも今までは怖くて、その姿を目に映す事もままならなかったのに今はどうだ、傘を畳む隼の姿を追いかけている自分がいる。一体、自分はどうしたのだろう。これではまるで――
この瞳が追っていたのは
(まるで、彼に)
(恋をしているみたいだ、なんて)
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