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「ユートくん、ご飯もらってきたよ!」
「一人分しかないが…これは姉さんの分じゃないのか?」
「え?うん、でもいいの。私はまた後で貰って来るから、先にユートくんが食べて?」
そんなの嘘だ、困窮している今の状況で貰える物資など1つ2つが限界の筈だ
それが1つしかもらえなかったという事はきっと人の良い姉さんの事だ、他に困っている人達に大丈夫だと言って、自分のものを譲ってしまったんだろう
……何度目だろう、これが1回目でない事は確かだ。オレがどんなに自分のものを他人に譲るのを止めた方がいいと言っても姉さんは聞いてくれない、人の事を気にし過ぎては姉さんが倒れてしまうというのに
「どうしたの?ユートくん、好きなものじゃなかった?」
「いや、こんな状況でそんな我が侭は言ってられない
だけどこれは姉さんが貰って来たものだ、姉さんが食べないとだめだと思う」
「大丈夫!私はまだそんなにお腹減ってないし、まだ支給品はたくさんあるもの
私の食べる分はちゃんとあるから、ユートくんは気にしないで食べなさい」
〇〇姉さんは自分の姉ながら優しいひとだと思う、けどオレを守ろうとする思いが強過ぎて自分を蔑ろにする姿を目の当たりにするのは辛い。今だってこうしてオレの身を案じて、自分の分の食料を渡そうとしてくる
オレが腹が減っているのに〇〇姉さんが満腹な訳がない。第一、昨日だってオレに食料を渡して、後で食べると言っておきながら食べてないのを、水で空腹感を隠そうとしているのをオレは知っているんだ
どうにかこの食料を姉さんの口にいれたいと思うが、オレが食べて欲しいと言った所で姉さんは遠慮するだけなのだろう。そう難儀している時だった、テントの入り口からオレ達以外の人間が入って来たのは
「隼?」
「お前達のやり取りを聞いていると頭が痛くなる…
ユート、たまには〇〇の言う事を聞いてやれ」
「だが、それだと姉さんの食べるものが…」
「〇〇と俺が食料を半々にすればいい、だからお前は腹一杯食べて、〇〇を安心させてやれ」
「えっ?!」
その提案はオレや姉さんにとっては予想外の事だった、あまりの事にわたわたと先程までの落ち着きをどこかに放り捨てて、慌て始めた姉さんの横に立つ隼はほら、とばかりに自分の持っていた食料を姉さんの前に差し出す
どうやら、隼や瑠璃の方は人数分の食料を手にしているから余裕がある様だ。だがどうして隼がそんな事をしてくれるのかは分からなかった、こういう事にはいつも口出しせずに静観する奴が珍しい
「お前達がこうだと、瑠璃も遠慮して食べようとしないんだ」
「あ、瑠璃ちゃん…」
「ユート、〇〇。お前達が食べるまで食べないと言って困る」
テントの外ではオレや姉さんの事を心配そうに見ている瑠璃がこっそりとこちらを見ていた、隼と一緒にテントの中に入って来ないのは多分、オレ達の会話を盗み聞きの形で聞いてしまった負い目からだと思われる
オレ達は気付かない内に二人にとてつもない心配をかけてしまっていたらしい。隼と姉さんが食料を分け合う事で渋々ながら納得し、事態が収束していく中でそれでもオレは腑に落ちない事があったので言わせてもらった
「でもそれだと隼と姉さんの食べる分が少なくなる」
「……いいの、だって私は年上だもの!」
「俺達はお前達の兄だ、妹達を優先するのは当たり前だろう」
「瑠璃ちゃんもおいで、ご飯にしましょう?心配をかけてごめんね?」
「!」
姉さんの一言を受け、こちらを心配そうに見ていた瑠璃の表情がぱぁっと晴れやかなものに変わる。オレ達の問題が解決して、嬉しそうに笑顔を浮かべてテントの中に入って来る瑠璃の姿に隼や姉さんの表情も和らぐ
この中だけだ、戦場の事を考えずに奴らからの侵略前まであった当たり前の日々に戻れるのは。あの頃は姉さんが作った料理を家に遊びに来たり、泊まりに来た隼達と囲んで食べていた
食事を囲む三人の様子を伺う、オレの傍でいつもは険しい表情で戦場に立つ隼が瑠璃と楽しそうに話してる姉さんを見て表情を綻ばせている。あの頃と全く同じ光景であの頃に戻ったんだと錯覚してしまいそうになる
─オレは必ず奴らから取り戻す。あの頃の楽しかったハートランドを、この光景を。
終焉の底で見たアルコル
(あの日々の輝きはまだ)
(色褪せないまま)
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