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「いたくない、ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
本日の試合を勝利で終えたズァークの異変はごく小さなものだった、インタビューの時も彼は笑顔を崩さなかったし、顔に汗の一つもかいていなかった――全くいつも通りのズァークだったのだ
だがそれでも〇〇の目は誤摩化せなかったらしい、彼女は関係者以外の者が立ち入る事が出来ない選手の通路でズァークを待ち伏せ、こう言ったのだ
ーどこか、いたい所があるんじゃないですか?
と
「ズァークくん、今日のデュエルいまいちだったぞ。いつもの君のあの軽快な動きはどこにいったんだ?」
「それは…」
「おとうさま!あっちに行ってて!」
「な、なんだ?どうしたんだ?〇〇」
「いいから…!」
あの通路での問いかけに、実は決闘中に傷を受けていたと明かしたズァークの傷口に更に塩を塗り込もうとする父の言葉をこのままでは幾ら手当をしても間に合わないと感じた〇〇は振り絞る様な声を持って、払い除けた
彼の体に出来た傷も、その心に負った深い影もこのまま放置していては手遅れになってしまう事を子供ながら〇〇は気付いていた
「おとうさまがごめんなさい、ズァークさま…」
「いや、〇〇が謝る事じゃない
今日のデュエルは自分から見ても動きが悪かった、小鳥遊博士や観客に不満を持たせても当然の結果だ」
「…!そんなことない!」
先程の鈴虫が鳴く様な小さな声とは打って変わった大きな声にズァークは大きく見開いた目を〇〇に向け、そして動揺した様に瞬かせた
広い海を彷彿とさせる蒼海の瞳の色は今にも泣き出しそうな空の様に陰り、下瞼には涙腺から溢れた涙を必死に堪えようとする〇〇がズァークの言葉を否定した
「さいきんの皆、おかしい…どうしてあんなデュエルをのぞむの…?あんなの、デュエルじゃないよ…
傷だらけになっても、死ぬことになっても戦えって…おかしい…今日だってほんとうにズァークさま、死んじゃうかと思った…!こわかった…!」
「…観客のニーズは変わっていくもの、今のニーズだってまた新しいものに変わる
そしたらまたあの頃みたいに楽しいデュエルを…観客もモンスターも一つに楽しめる環境が出来る筈だ、…その頃には〇〇もデュエルが出来る様になったらいいな」
そっと壊れ物を扱うかの様に自分の頬に手を沿えて来るズァークの手に巻かれた真新しい包帯は真っ白で目が眩む、でもこの涙腺から溢れて来る涙につけられる理由はそれだけじゃない
ただ悲しかった。彼を取り囲む人々が可笑しい事に気付いていながら、観客の求める激しさを拒めば、一瞬の内に自分の好きな世界から出ていく事しか出来ずに過ぎ去るのを待つしかない事態が、歯痒かった
結局、自分に出来るのは人々の熱狂が早く過ぎ去る事を祈り、ズァークに出来た傷を手当する事しか出来ない、手当だけでも充分だと笑う彼と同じ様に自分も大人であれば――
『もっと!』
『もっと激しい決闘を俺達に見せてくれ!』
『ズァーク!』
『ズァーク!』
『今こそ、一つに!!』
『やめて、ズァークさま!!』
大人であれば、無力という嘆きを叫ぶ日は来なかったのに。
追憶の中で重ねた
(優しい夢と悲しいさよなら)
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