SS-etc
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「(ああ、疲れた)」
父の望むがままの役割を演じるⅣは演目の中に本物を見失いつつあった
家族の為に自らを犠牲にしている、そんな聞こえだけのいい言葉すらも溶けてしまいそうな夜だった
「…んで、俺はここにいるんだよ」
何を思ったのかも分からない、〇〇の部屋に忍び込んだのも無意識の内だったからだ
ベッドの上ですやすやと穏やかに眠り続ける少女の、平和ボケした寝顔についたため息の中にⅣは自分の中の鬱屈した感情を吐き出す
そうして目の前で考えもしなかったであろう侵入者にも気付かず、眠り続ける姿に無償に腹を立てる
「むきゅ…」
「はは、あほ面
…最初はただの人形にしか見えなかった奴が、よくもまあここまで」
起こさないようにと最小限の手加減をしたおかげか、Ⅳが彼女の頬を引っ張っても〇〇が起きる様子はない
デュエルアンカーにも縛られないとんでもない、自己防衛にだけ特化した人形ーそれがⅣの持った最初の〇〇への印象だ
人形の世話は慣れたものでしょう、とトロンが彼女の世話を言いつけたのは息子の胸中を知ってか否か
けれど人形はいつしか自我を持った少女に、今では立派な決闘バカとも言える決闘者となった。あんなにも無個性であったのに、太陽にも思える笑顔が個性の人間──それが今の〇〇という少女だ
「(元の父さんに戻ってほしかっただけなんだ、フェイカーをぶっ倒せば、それが叶うと思って…
言われるがまま、俺の意志で非道な事にも手を染めた。報いを受ける覚悟だって出来てる)」
「…けどコイツ──〇〇は、」
「……Ⅳ…?」
〇〇の眠るベッドに顔を埋めながら、声量にも気を付けながらこれだ。顔を上げてみれば、夢の途中から眼を覚ました少女の双眸がⅣを見つめている
純粋に、まっすぐに彼を視界に捉える瞳はⅣの弱さを浮き彫りにするようで、居たたまれなくなったⅣは視線を逸らす事で逃亡した
過ぎたお喋りを後悔し、部屋を立ち去ろうとする青年の姿を延珠にはどう見えたのか。眠りの淵から伸ばされた手は迷子になった小さな子の頭をあやす為のものと類似して、
「、は…?」
「いい子、いい子
Ⅳは、がんばってるねぇ…がんばり屋さん、なんだねぇ」
思いもかけない行動にⅣの反応が遅れた
日差しのまぶしさに細めた瞳で微笑み、彼の頭をひとしきり撫で、〇〇は再び一人で夢へ旅立っていった
Ⅳにそれを止める気はさらさらになく寧ろ早く寝てしまえと思った程だ。何がいい子なもんか、どんな眼をしているんだ、心の中でそう悪態をつきながらも感情が荒む事はなくて
「お前は、お前は巻き込まれただけだろ
だから…俺達みたいになるな。トロンの復讐の為の駒になんてなるなよ、なあ〇〇」
こんなにも自分は純粋に決闘を楽しむ姿に、笑顔に正気を保っていられる
だから〇〇の心を真っ黒に染め、復讐に利用とするトロンにも反抗した。救われてるなんて言わない、拠り所にしているのは事実だが
少女の体を微かに持ち上げ、祈りを捧ぐように言葉を紡ぐ
ああ、いつか、いつか──報いを受ける時には彼女に看取ってほしい、なんて
「おかえりなさい、Ⅳ」
「少し、疲れた。寝かせろ」
「……うん。Ⅳ、がんばったもんね」
先に倒れた兄弟と同じく、家に戻る。けれどたどり着いた終わりには〇〇という少女がⅣを抱きとめるもの。彼にだけ用意された特別な墓標
膝に頭を置き、瞳を閉じていく青年の頭を撫でる手はいつかの夜のまま。頬に一つ、二つと落ちる温度を感じる
ああ、もう泣くなよ
拭ってやりたいのに、もう手をあげる事も出来ないんだ。
ラピスラズリの寝台
29/47ページ