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ソファに座ったままの人物の後ろ姿を眺め、獲得したばかりの心が発する困惑に背を押される形で少女がある人物へ電話をかけていた
両親の後を継いだばかりで慣れない作業に引き継ぎ業務、目まぐるしく過ぎ去る日々の連続ではあるが、部屋に帰って意中の少年が機嫌を損ねていれば、否が応でも〇〇の目はそこに止まるというものだ
「榊くんがずっとご機嫌斜めでね、どうしたらいいかな」
『一緒にいる〇〇が分からなかったら、私にもどうしたらいいか分からないわね…』
「そっか…柚子ちゃんなら分かるかと思ったんだ」
『どうしても分からないなら、本人に聞いてみるのも手だと思うわよ』
「……榊くん本人に?」
この部屋の主である〇〇がアドバイスを求めたのは、彼の幼馴染である柊柚子
電話を切って暫く観察してみても遊矢が場所を移動したり、抱えたクッションを手放したりしないままに時間が過ぎていく
確かに柚子から教わった通り、この状況は〇〇から動かないことには後にも先にも動きを見出せない所にあるらしい
「榊くん、榊くん、機嫌が悪いようだけどどうしたの?」
「…………」
「柚子ちゃんにも相談したのだけど、君の機嫌が悪い原因が私には全く分からないの」
「……〇〇先輩が良く笑うようになって、」
「……ん?」
「今までだって先輩はいい所でいっぱいだったのに、笑顔がかわいいとか今更言ってる奴が多すぎる!」
「榊くん?」
「先輩がかわいいとか、笑顔も素敵なんて俺の方が先に知ってたのに!今更って言いたかったけど我慢して帰ってきました!
……しかも名前の呼び方だって柚子は柚子なのに、俺はまだ榊くん呼び止まりだし」
クッションをばふばふと叩いたと思いきや、次の瞬間には袋叩きになっていたクッションに顔を埋めてみたりと彼の心境は〇〇が思っている以上に複雑な渦を巻いているようだ
けれど荒れ狂う胸中とは裏腹に年相応に抱く悩みのなんと愛らしいことか、遊矢といると〇〇も確立し始めた自分の心の存在を他の誰かといるよりも強く認識できる
「あ、笑っただろ」
「うん、笑っちゃった
……だってあまりにも君が、遊矢くんが私を好きでいてくれるから」
「〇〇先輩は?先輩は俺のこと、どう思ってます?」
自分でも拗らせた感情だと分かっているのだろう、罰が悪そうに遊矢が〇〇から眼を反らす
〇〇が自分を好きでいてくれるなんて事、常日頃から明確な言葉で表現してくれる為に本当は聞かずとも理解しているのに
──胸中で発生した暗雲が頭にまで及びそうになった時、不意に頬に柔らかさを感じ、たまらず遊矢の視線が上向く
「……!」
「こんなこと、好きな人じゃないとしないよ」
「〇〇、せ、先輩…っ」
頬に感じた柔らかさは、言葉だけでは表現しきれない〇〇からの想いを形にした口付け
真実、愛しい人にしか向けない眼差しと穏やかな春を思わせる笑顔。嫉妬が巣食った思想は〇〇の行動によって晴れ間を覗かせる
──俺は〇〇先輩の全部が大好きです
〇〇が獲得した新規のファンに、何より〇〇の想いにも負けぬように練られた言葉には遊矢の熱量、つまりは〇〇への好意がありったけに詰め込まれていた。
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