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──白羽根が舞うような軽やかな足音が、午後の麗らかな雰囲気漂う時間に良く響いた
「ベディヴィエール様、こちらにいらっしゃったのですねっ」
「……〇〇、その姿は────」
「本日、マスターがわたしの霊基再臨をしてくださったのです!」
喜び、嬉しさを隠しきれないと言わんばかりにどこまでも弾む声、明るさに満たされた笑顔
『騎士王の愛娘』『円卓の姫君』と後の世にひっそりと名を残す〇〇の姿は少女期より脱し、大人の霊基へと羽化を遂げていた
今までは大人と子供として恋人とは見られずにいた彼女も、こうして並べば恋慕うベディヴィエールと並んでも遜色ない。その事実が何よりもこんなに〇〇を浮き足立たせているのだと想像に容易い事であった
「体の方は湖の乙女として適したものに成長したものの、精神に影響なく”〇〇”としての自我を保っています
髪が伸びたり、体の一部が今までとは変わっている為にまだおぼつ──ベディヴィエール様…?」
「っ…………」
「ベディヴィエール様…?何故、そのように涙を流されているの、ですか?」
初めて見た、愛したヒトの涙を前にして〇〇の心は急速に冷え切っていく
否、彼の涙を見たのはこれが初めてではない。本当に、最初の最後、彼の涙を見たのはもっと昔。あれはそう、生前のカムランの丘より深い森を抜けた湖で─────
「叶うなら、と何度も夢に見てきた事があるのです
王の命で聖剣と貴女を湖に還し、水面に貴女が溶けた先より現れた『湖の乙女』。彼女が〇〇、貴女として私の元に戻ってきてくれたなら、と」
「────!」
「こうして成就された願いを前に、思わず感情を抑えきれなくなってしまいました
円卓の騎士としてあるまじき無様な姿を晒し、驚かせてしまいましたね」
「いいえ、確かにベディヴィエール様の涙には驚きましたが……それはわたしを想っての涙
温かな想いの欠片を誰が無様だと笑いましょう、一度は湖の水泡と帰した”〇〇”の為に泣いてくださってありがとうございます」
泣かないでと生前の最期、水面に消えゆくだけの自我から伸ばそうとした手は水泡に崩れ去った
けれど今、同じように願えば、こうして彼の頬を伝う涙を拭う事が出来る、ベディヴィエールの為に想った行動へと移れる。それはまさに奇跡のようで、生前の最期の後悔が〇〇の胸の内から払拭されていく感覚を覚えた
──生前の後悔が昇華された後に残ったのは、獅子王の統治する白亜の城での出来事
湖に還される事のなかった乙女のIF、そこで抱いたままの懺悔と夢。この想いに行き場を与える事が出来るのはこの瞬間を除いて、きっと存在しない
「ある特異点で告げられなかった想いを、やっと口にできます」
「それは、」
「ベディヴィエール様、わたし────貴方さまの事を、愛しています」
「〇〇、貴女は……私でいいと、そう言ってくれるのですか?」
「ええ!他ならぬ貴方にこそ、わたしの想いを受け取ってほしいと願っています」
「ああ……私もやっと、この想いを告げる事が出来る」
──貴女を愛しています
抱擁の中に溶けた二人分の温かさは、涙を止めるよりも溢れさせる術として心に染み渡っていった。
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