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小さな頃から世界というものは二つ存在すると知っていた
一つは生者が住む此岸、もう一つは亡者が住む彼岸。相容れてはならない世界である
少女は霊媒体質であった、しかも底抜けのお人好しという性格のせいでこうして何かしらの未練を残した亡者に好かれるという人生を送り続け、早くも15年が経とうとしていた
『その体、寄越せ。《ヒモロギ》の娘』
「さ、差し上げる訳にはいかないんです!ごめんなさいっ!」
……けれど15年が経とうとも自分の命を狙われるのは恐ろしく恐怖だ
顔面蒼白で恐怖心から溢れる涙を拭う暇もなく、怪異との追いかけっこを続けていた●●だったが体力には限界というものがあり、彼女はそれを迎えてしまった
吸っても吸っても肺に満たされない空気という虚空、命を奪おうとする怪異の前に身を晒したのは自分と同じ背丈の少年。リン、と聞こえる鈴の音が知らす存在の名を知らず、口にしていた
「つ…つ、かさくん…?」
「だいじょーぶ?怪我してない?」
「……助けて、くれたの?」
「〇〇が怪我するとあまねも、おれも悲しいからネ」
柔らかな頬に触れる手の冷たさに●●の肩が震えても、関係ないようにその少年──つかさは笑みを絶やさない
あんなにも大きな口で●●を喰らおうとしていた怪異もつかさの小柄な体躯に隠れ、どうなったかさえ判別できない。頬に点々と飛び散った血はこの上なく恐ろしい、けれどそうさせたのは他ならない自分自身だ
──つかさという少年は●●にとって『怖いヒト』であるのに変わりはないが、助けてくれた事実にも変わりはない
何かお礼を、そう思っていた所に降ってきた調理実習。しかも作る内容はお菓子という出来過ぎた幸運に感謝しながら出来上がったお菓子を包んだラッピングを抱え、●●は校舎を散策していた
「……つかさくん、つかさくん。私の声が聞こえたなら返事をして、くれませんか」
「あは、〇〇から呼ぶなんてめずらしー!」
「…?!」
「……おれの事、呼んだの〇〇だよね?何でそんなに驚いてんの?」
「だ、だって!こんな早くに来てくれるって、思わなかったんだもの…」
同じ顔をした花子も神出鬼没ではあるが、輪をかけてどこからやって来るか掴めないのがこのつかさである
しかも普通に目の前に現れてくれればいいものの、元より人懐っこいのかこうして後ろから抱き着いて来たりとスキンシップが激しく振り回されてばかり
怖さからか、はたまた照れからなのかこの早い鼓動に理由をつけられずにいた
──それはさておき、こうして姿を現してくれた彼に勇気を振り絞る瞬間が訪れた訳である
「それでね、つかさくんってお菓子食べる…?」
「お菓子?」
「この前、助けてもらったお礼…今日、調理実習でお菓子作ったからあげる
いっぱいあるから、七峰先輩達と一緒に──?!」
「んー?」
絶句。
ラッピング済みのお菓子をものの数秒で開封し、中身を食べ始めているつかさに●●は言葉を失った
「全部食べちゃう気なの?!」
「え?これ、お礼なんデショ?全部、おれのじゃないの?」
「う、うぅぅ……」
「これ、おいしいから〇〇にもあげるねー!」
「むぐっ」
遠慮なく口に突っ込まれたクッキーは焼きたての時よりも、甘さを感じやすくなっている。紅茶の供にすれば、またおいしかっただろうと遅い後悔を感じつつ、咀嚼する
見る見るうちにつかさの体の中へ消えていくクッキー、食べる手が止まらない所を見るにお気に召したらしく、●●にとって安堵出来る部分だ
「〇〇みたいに甘くておいしいネ」
「~~~?!」
二分された世界、本来なら交わってはいけないと知っている
それでも一つの良心が、つかさという亡者に執着を植え付けて●●を離しはしないのだろう。
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