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斜陽に照らされた旧校舎の階段を軽やかに駆けのぼる足音
今日も今日とて三階に設置された女子トイレには、放課後を告げる少女が訪れるのであった
「花子さん、こんにちは」
「あれ?今日はヤシロと一緒じゃないんだ?」
「うん、寧々ちゃんは用事があるみたいだったから先に来たの」
「ふぅん…」
ふよふよと中空に浮かぶ人ならざる存在、かもめ学園に伝わる七不思議が七番目『トイレの花子さん』。通称花子くん
橙色混じりの桜色の髪を一つに纏め上げ、掃除道具片手にトイレ掃除に勤しむ少女・●●の生真面目さに彼がついたため息
それに反応し、●●が振り返ると思っていたよりも近い距離にいた花子に気押された形で片足が一歩、後ろに下がる
「〇〇は熱心に掃除してくれていい子だよね、ヤシロもこれくらいの熱意を持ってほしい所なんだケド」
「あ、あはは……」
「ところで聞きたい事があるんだけどさ」
「なぁに?」
「勝手に〇〇の体に取り憑いた覚悟、出来てるんだよね?」
「…………え?」
──取り繕う暇を与えない、まさに刹那の出来事
既に後ろ手に組まれた掌が握る包丁が描く鋭い一閃は、●●に取り憑いていたとされる怪異を脅かすには充分で
意識なく、重力に任せるがままに倒れ込む●●の体を抱き留めた彼の前には影、それ以外のものには形容しがたい怪異が忌々し気に恨み言を吐き散らかしている
『おのれ、おのれ七不思議め!油断させ、あとはその首を取るだけだったというのに!』
「それは残念。でも確かに〇〇の真似は上手かったよ、あとちょっとで騙されそうだった」
『ならば何故…!』
「──〇〇はさ、そんな風に笑わないんだよ」
眠っている意識の隙間に入り込む小さな──声ともとれるような音に目を覚ます
うっすらと開いた瞳に注がれる光が痛いほどに眩しい、けれどいつの間に放課後になったのだろうか。昼休みに寧々と葵と話し、席を立ってからここまでの時間がない事に●●は違和感を覚えた
「起きた?おはよ、寝坊助さん」
「花子、さ…?……ち、近、い?!」
「うっわ、そんないきなり起きたら…!」
寝起きに花子との密接は初心な●●には刺激が強すぎたのである
飛び起きた本人よりも、今の彼女の状態を熟知している花子の腕の中へ再び倒れ込む華奢な体。目眩のような感覚に覚えのない少女は混乱を極めているようだ
「な、なん、で…?」
「ほら、言わんこっちゃない
変なのに体乗っ取られてたんだよ、〇〇。フラフラなのはそのせいネ」
「う…あの、もう大丈夫だから離して…クダサイ」
「だーめ、しかも嘘だってバレバレだし
……あーあ、おれ、嘘つかれて傷付いちゃったナー」
いつものように目を細めて笑う花子の姿に心臓が一層大きく跳ねた瞬間、●●の体は彼の腕の中にいとも簡単に抱き込まれていた
思考回路が仕事を放棄しそうな程の衝撃、羞恥心から駆られた涙。恥ずかしくて死んでしまいそうなくらいだというのに不思議と心が満たされて行く、最中に耳を擽る吐息交じりの笑みが一気に現実へと●●を引き戻した
「オシオキ、暫くこのままでいようね」
「そ、そそそんなのだめ…!やだ…!」
「そんな可愛い顔してもだーめ、嫌なのに煽ってどーすんの?
それとも……本当は嫌じゃないトカ?」
額と額を触れ合わせ、そんな事を言う花子の方が立派に煽っていると見られる場面も今の●●には想像が及ばず
体の内側から満たされる感覚に実際の所、嫌でもないなんて見透かされたくないと急激に上昇した体温から生まれる赤面を必死に花子の肩に埋めるしか●●に手段は残されていなかった。
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