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(東卍軸)
某日、武蔵神社にて
たったの数十分前に地平線の向こうに太陽が沈んだのと入れ違いに、境内には黒い特攻服の少年達が集まり始めていた
「…あれ、タケミっち。〇〇ちんは?」
「え?先に出たんですけどまだ来てないですか?」
最初に違和感に気付いたのは、ここに集まる集団の総長である万次郎だった
妹の姿が見えない事にそこから気付き、どこで道草を食っているのかとアドレス帳から〇〇の番号に──とタイミングを見計らったように、軽い着信音が操作していた画面を強制終了
けれど携帯電話に入った着信の発信先は今、まさに探していた宛先から。手間が省けたと耳に当てて数秒後、〇〇の行方が分かってよかったと和やかな雰囲気の中、武道が異常を発した
「…は?!」
「ん?」
「どしたん、タケミっち」
「ち、千冬…!何か〇〇を預かってるって変な電話が…」
「!貸して」
和やかな雰囲気を真逆の方向へ捻じ曲げる、不穏な単語
真っ黒な感情が心の奥から沸き、心臓を掴むような感覚。後ろから名前を叫ぶ声に振り向く時間も惜しいと彼は愛機に走っていた
『お前がマイキーの嫁だな?!』
『嫁かは知りません、花垣武道の妹なら私の事ですが』
『御託抜かしてんじゃねえよ!』
これは武蔵神社に赴く道中での出来事
数の暴力に屈し、埃っぽい倉庫のような場所に縛られ、地面に転がされている〇〇の追想だ
「遅くね?ちゃんと電話したよな?」
「日和って逃げたんだろ、無敵とか言われても中身はガキだし」
「人質も見捨てて、自分だけ保身かよ!」
「…、」
「あ?今、てめえ鼻で笑ったか?」
瞬間、鈍い音が響いた
肩に深く入り込んだ、名も知らない不良の蹴りに少しだけ体が浮いた〇〇が咳き込むのを見下ろし、嗤い声が降り注ぐ
何だ、やっぱり彼とは何もかも違う。そもそも彼は絶対に女性に手を出さないし、このように力を示すだけの暴力を好まない。比べるのもそもそもが、烏滸がましかったのだ
「…無知って本当に罪ですね」
「は?」
「あなた達があがる土俵程度にあの人は、佐野万次郎はいないってことに気付いていないようで笑っちゃいますよ」
みっともなく転んでいる筈の子供、しかも女だった
だがどうしたことか、前髪の隙間から覗く眼光はナイフのように首筋に突き付けられたように恐ろしいと思ってしまったのだ
遠くから響くエンジン音が徐々に近付いてくる事にも気付かない程に、目を奪われていた
人質に取っていた少女の眼光に怯み、動く事もままならなかった彼らに迫るカウントダウン
倉庫に差し込む外からの人工の灯りに照らされ、浮き出されたシルエットは大きな獣を彷彿させた
「〇〇に先に手ェ上げたやつ、前に出てこい」
「佐野、さ……」
「──やっぱいいわ、全員まとめて殺す」
そこからは宣告通り、やけっぱちになった不良を物ともしない万次郎の独壇場であった
本当に人を殺してしまいそうな荒々しさにたまらず〇〇が声を上げなければ、ここはきっと殺人現場となっていたに違いない
ゴミを捨てるような動作で締め上げた不良を捨て置き、尻尾を巻いて逃げる背中よりも彼は座り込んでいた〇〇を優先する。肩から広がる痣にぴくり、整った眉が動き、収まりつつあった殺気の片鱗が一瞬見えた気がした
「あの、佐野さん。私……」
「さっきの啖呵、めちゃくちゃかっこよかった」
「え、」
「でも見境ない奴相手にあんな無茶しちゃだめ、何かあって間に合わなかったらどーすんの」
「…本当にそう、ですよね…ごめんなさい
佐野さんの事、良く知らない癖に侮辱する言葉が聞こえちゃって、つい」
「う、あー……もう!んな顔されたら、怒れねーじゃん!
……遅くなってごめん、痛かったよな」
「平気ですよ、これくらい」
自分の痛み、傷のように受け止めるものだから、遮られて消える筈だった『大丈夫』を掘り起こして彼へ言い聞かせる
躊躇いがちに痣の隅に触れられるだけでも痛覚が刺激されるも、自分よりも痛みに耐える表情をしている男の子の前に〇〇は強がってみせた
守るべき存在に手を出した相手を殺すのも厭わない側面も、こうして誰かの痛みを受け止められる感受性も、無邪気に笑う顔も全て、全部──佐野万次郎という一人の男の子が持つ顔なのだろう
「…傷が残ったら、ちゃんと責任取るから」
「……ん?」
「約束な」
「いや、いやいやいや?!」
やけに痣を気にしていると思えば、そういう事だったのかと〇〇の口調が荒ぶる
そもそも責任を取る、なんてどういう意味なのか分かっているのだろうか。だが背筋を這い上がる嫌な予感というものは外れた試しはなくて、これは傷を残す訳にはいかないと〇〇は決意するのであった。
▽▲▽
「にしても〇〇ちん、俺の嫁ってことになってんだな~
そうだよな~、だってあんな啖呵切ってくれるくらいに俺、大切にされてんだもんな~?本物の嫁になるのが当たり前だよな~?」
「マイキー、そろそろやめとけ。〇〇ちゃんを宥めてる千冬とタケミっちがかわいそうだろ」
某日、武蔵神社にて
たったの数十分前に地平線の向こうに太陽が沈んだのと入れ違いに、境内には黒い特攻服の少年達が集まり始めていた
「…あれ、タケミっち。〇〇ちんは?」
「え?先に出たんですけどまだ来てないですか?」
最初に違和感に気付いたのは、ここに集まる集団の総長である万次郎だった
妹の姿が見えない事にそこから気付き、どこで道草を食っているのかとアドレス帳から〇〇の番号に──とタイミングを見計らったように、軽い着信音が操作していた画面を強制終了
けれど携帯電話に入った着信の発信先は今、まさに探していた宛先から。手間が省けたと耳に当てて数秒後、〇〇の行方が分かってよかったと和やかな雰囲気の中、武道が異常を発した
「…は?!」
「ん?」
「どしたん、タケミっち」
「ち、千冬…!何か〇〇を預かってるって変な電話が…」
「!貸して」
和やかな雰囲気を真逆の方向へ捻じ曲げる、不穏な単語
真っ黒な感情が心の奥から沸き、心臓を掴むような感覚。後ろから名前を叫ぶ声に振り向く時間も惜しいと彼は愛機に走っていた
『お前がマイキーの嫁だな?!』
『嫁かは知りません、花垣武道の妹なら私の事ですが』
『御託抜かしてんじゃねえよ!』
これは武蔵神社に赴く道中での出来事
数の暴力に屈し、埃っぽい倉庫のような場所に縛られ、地面に転がされている〇〇の追想だ
「遅くね?ちゃんと電話したよな?」
「日和って逃げたんだろ、無敵とか言われても中身はガキだし」
「人質も見捨てて、自分だけ保身かよ!」
「…、」
「あ?今、てめえ鼻で笑ったか?」
瞬間、鈍い音が響いた
肩に深く入り込んだ、名も知らない不良の蹴りに少しだけ体が浮いた〇〇が咳き込むのを見下ろし、嗤い声が降り注ぐ
何だ、やっぱり彼とは何もかも違う。そもそも彼は絶対に女性に手を出さないし、このように力を示すだけの暴力を好まない。比べるのもそもそもが、烏滸がましかったのだ
「…無知って本当に罪ですね」
「は?」
「あなた達があがる土俵程度にあの人は、佐野万次郎はいないってことに気付いていないようで笑っちゃいますよ」
みっともなく転んでいる筈の子供、しかも女だった
だがどうしたことか、前髪の隙間から覗く眼光はナイフのように首筋に突き付けられたように恐ろしいと思ってしまったのだ
遠くから響くエンジン音が徐々に近付いてくる事にも気付かない程に、目を奪われていた
人質に取っていた少女の眼光に怯み、動く事もままならなかった彼らに迫るカウントダウン
倉庫に差し込む外からの人工の灯りに照らされ、浮き出されたシルエットは大きな獣を彷彿させた
「〇〇に先に手ェ上げたやつ、前に出てこい」
「佐野、さ……」
「──やっぱいいわ、全員まとめて殺す」
そこからは宣告通り、やけっぱちになった不良を物ともしない万次郎の独壇場であった
本当に人を殺してしまいそうな荒々しさにたまらず〇〇が声を上げなければ、ここはきっと殺人現場となっていたに違いない
ゴミを捨てるような動作で締め上げた不良を捨て置き、尻尾を巻いて逃げる背中よりも彼は座り込んでいた〇〇を優先する。肩から広がる痣にぴくり、整った眉が動き、収まりつつあった殺気の片鱗が一瞬見えた気がした
「あの、佐野さん。私……」
「さっきの啖呵、めちゃくちゃかっこよかった」
「え、」
「でも見境ない奴相手にあんな無茶しちゃだめ、何かあって間に合わなかったらどーすんの」
「…本当にそう、ですよね…ごめんなさい
佐野さんの事、良く知らない癖に侮辱する言葉が聞こえちゃって、つい」
「う、あー……もう!んな顔されたら、怒れねーじゃん!
……遅くなってごめん、痛かったよな」
「平気ですよ、これくらい」
自分の痛み、傷のように受け止めるものだから、遮られて消える筈だった『大丈夫』を掘り起こして彼へ言い聞かせる
躊躇いがちに痣の隅に触れられるだけでも痛覚が刺激されるも、自分よりも痛みに耐える表情をしている男の子の前に〇〇は強がってみせた
守るべき存在に手を出した相手を殺すのも厭わない側面も、こうして誰かの痛みを受け止められる感受性も、無邪気に笑う顔も全て、全部──佐野万次郎という一人の男の子が持つ顔なのだろう
「…傷が残ったら、ちゃんと責任取るから」
「……ん?」
「約束な」
「いや、いやいやいや?!」
やけに痣を気にしていると思えば、そういう事だったのかと〇〇の口調が荒ぶる
そもそも責任を取る、なんてどういう意味なのか分かっているのだろうか。だが背筋を這い上がる嫌な予感というものは外れた試しはなくて、これは傷を残す訳にはいかないと〇〇は決意するのであった。
▽▲▽
「にしても〇〇ちん、俺の嫁ってことになってんだな~
そうだよな~、だってあんな啖呵切ってくれるくらいに俺、大切にされてんだもんな~?本物の嫁になるのが当たり前だよな~?」
「マイキー、そろそろやめとけ。〇〇ちゃんを宥めてる千冬とタケミっちがかわいそうだろ」
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