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(中学軸→フィリピン軸)
待ち合わせの時刻から既に10分が経過していた
待ちぼうけを食らわせている相手と繋がる電話口、〇〇のちくちくとした恨み節がこちらへ向かっているであろう彼の足を急かす
「佐野さん、また遅刻ですか?」
『もうちょいで行くから待ってて!ほんっとーにゴメン!』
「…今回だけですからね」
電話口の向こうで忙しなく動き回る音が聞こえる。万次郎の遅刻癖は今日に限った事ではない、幼馴染や彼の妹でも匙を投げたそれを〇〇が治せるとも思っていないので受け入れるしかないのである
彼に限ってとは思ったものの、急ぐあまり事故を起こさないようにとつい念押しし、終話ボタンで会話を切り上げる
周辺にある店を適当に選び、入っておこうか。脳内で自分に提案しながらも足はこの場に縫い付けられたように動かない
もう少ししたら──
もう少ししたら、バブという愛称で教えてもらったバイクの音が聞こえてくるかもしれないから待ってみたい
「(私はそれだけで良かったのにな)」
今回だけ、と言いながら、後にも遅刻癖が治らなかった万次郎を待ち続けた
抗争のせいですっぽかされた事もあったけれど、いつしか彼を思い、遠くから響いてくるエンジン音の逞しさを待つ時間を愛しいと思うようになった
──それだけで、〇〇は幸せだった
けれど立て続けに大切なものを失い続けた彼の中の淀は、周囲を巻き込んで彼を壊していった
暗い衝動の矛先は勿論、〇〇を例外にする筈もなく。
「ごめん」
「はい」
「ごめん、〇〇」
「…はい」
「後から俺もいくから、絶対に、すぐにいくから」
「…すぐに、じゃなくて、」
全てを伝えきる前に心臓付近にまで突き立てられていたナイフの先端が入れ違いに、深く沈んだ
それ以上に痛いと思う暇もないまま、花垣〇〇の人生は万次郎の腕の中で恋心と同時に埋没した
「な、んで…いつもは遅刻してたのに、こんな時だけ早く来ないでいいじゃないですか…っ」
「死んだ後も〇〇を待たせる訳にもいかないじゃん」
待つのは得意だから、すぐに来なくていいと祈っていたのに。生きてる内にそう伝えたかった
願わくば1秒でも長く生きて、それからゆっくり来てほしいと願っていた
──ただ一緒に生きていきたい、それを叶えることがこんなにも難しいだなんて彼女はそこで初めて知った。
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