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春は空を覆うような大輪の桜雲
夏は茹だる熱を冷ます雨、澄み渡る青空
秋には燃え盛る紅葉、冬は息さえ凍るような雪原──
「駄目だわ、鶴丸がかっ攫われない季節がない…っ!」
一通り四季を脳内で巡回し、戻ってきた現実で頭を抱え、嘆いているのはこの本丸を預かる審神者 ##NAME2##巴だ
着任した頃より今に至るまで、巴の全幅の信頼を収める刀剣男士。彼が巴に頭を抱えさせる原因なのだが、まさか季節に攫われてしまいそうな恐怖に駆られる事になるなんて、彼女自身も人生の盲点だっただろう
「主、その熱い言葉、俺にもくれよ」
「────?!」
「はは、驚いたか?」
「……盗み聞きなんて、趣味悪すぎ」
ひょっこり、そんな音さえも聞こえてしまいそうな、軽やかな動き
その刀──鶴丸国永は頭上から巴の顔を覗き込んだと思えば、審神者部屋の軒先に作られた縁側、巴の隣へ座り込んでくる。つかみどころがなく、本当に彼は自由な刀だ
ここは執務に疲れ、休憩する為に作られた本丸の庭とは別に用意された箱庭
祖父母宅を想起させる庭と並んだ二人分の影、色んな事を鶴丸とここで話した。きっとこれからも色んな話を、この場所で交わすのだろう
けれど今から話そうとしている事は、巴から彼に打ち明けるのは初めてだ
「……じゃない」
「ん?」
「不安に、なるじゃない、貴方の経歴はちゃんと知ってるし…
だったら今世くらい、私の傍で役割を全うしてほしいと思うのよ。貴方の心に残るような主であり続けたいから」
打ち明けられた言葉の数々は他ならぬ巴の本音の塊だった
人の世に見切りをつけたとしても可笑しくないのに、それでも自分の呼び声に応えてくれた。彼を掘り起こした人と変わらないかもしれない自分に笑いかけてくれる鶴丸国永を、##NAME2##巴は愛している
──願わくば 死した後も共にいてほしいなんて、付喪神である彼の前で願ってしまう程に愛してしまった
「つ──」
「俺からすれば、君の方があっさり攫われてしまいそうだがな」
ひやりとした指先が首に触れた温度に、現実へ戻って来た巴を見下ろす琥珀の視線
穏やかな声音に伴った表情が白い輪郭で浮き出されているようで、目を反らせない。攫われてしまいそうというのは”そういう意味なのだろう”
言葉の真意を理解しながら、不思議と怖くなかった
見つめ合う事、数秒の時間を経た後、不意に鶴丸が巴の体に寄りかかるように少女を抱き込んできた
「はー……」
「つ、鶴丸…?」
「いやなに。俺を信じ切っている主の事が、我が事のように不安になってな」
「す、少なくとも【私の鶴丸国永】はそんな事をしないと知ってるもの」
「全く俺は果報者だな」
肩先に触れる笑い声がくすぐったくて、抱き込まれている状況も相まって、巴の口ぶりが早口のそれへと変化する
きっとこの距離なら口から飛び出していってしまいそうな程、早鐘と化した心音にも気付かれているのだろうなと思えば、悔しく、こっそりと彼の背中を爪先で抓るのであった。