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果たして、巴が本丸の庭先に作られた落とし穴にこうして落ち込むのは何度目だろうか
「驚きをというのなら、せめて誰かを傷付けないものにしなさい」
「こりゃ驚いた、悪戯自体を君は咎めないんだな」
ぎろり、と審神者装束にいくらかの土埃を残す主からの睨みに鶴丸は肩を竦め、口を噤む
自分の事を咎めないと言う鶴丸が落とし穴から脱出を果たした巴から、今の時間まで説教をされた身とは到底思えず
説教を聞いていなかったのかと巴の目じりがこれ以上に吊り上がる前に、黙り込んだ彼は正しい選択を取ったと言える
「ともかく!驚きを追及するのは止めないわ、落とし穴とかそれ以外の術を考えろという話です」
「そうだなあ…何の因果か、掘った穴に引っかかるのは断トツで君が一番多い
初期に顕現されたという縁がここまで影響しているのも、面白い話だと俺は思うんだが」
「…………一期一振!あなたの兄弟達が鶴丸の掘った落とし穴に──」
「分かった!主!俺が悪かったッ!」
以前、現実として粟田口の短刀が落とし穴に落ちた際の一期一振の鬼の形相といったら
真新しい記憶、否、教訓として脳に叩き込まれた鶴丸はというと巴を何とか宥める事で、その場に波乱を起こす引き金となる彼女の怒りを収めるのであった
「ああ、酷い目にあった…驚きだぜ……」
本丸を散策する彼の口から、思わずといった様子でそんな言葉が零れ落ちる。声色に含まれるのは彼にしては珍しい疲労の感情
元はと言えば、自ら出た錆という名の自業自得──とは先程、逃げ込んだ畑にて燭台切──かつて伊達家に共にいた刀達から打ち込まれた釘。同時に鶴丸自身も理解している状況であった
驚きへの追及への苦言がなかったのは巴の甘さ、はたまた優しさか
刀剣男士としての鶴丸国永の生きがいを奪いたくないという主の恩情
無下にはしたくない、とどうにか彼女の気持ちに応えたい為、未だ定まらない表現力を画策する道すがら、不意にそれが鶴丸の眼の端に縫い留められた
「おっとコイツは……新しい悪戯に使えそうだな!」
▽▲▽
審神者部屋から出て、拝借していた本を返しに書庫へ
「(…さっきは言い過ぎたかしら)」
書庫という場所柄、言葉として現れる事のない感情に掘り起こされる先程の会話
熱くなるとだめになってしまう、加えて説教好きという性分。自分の事ながら全く可愛くないと言葉の代わりに小さなため息をつく
最後にページ内へ栞などの忘れ物がないかと確認する為、本を開く
窓も開いていない、書庫で揺れた髪の先。追い風の発現場所へ振り向くと同時、巴の視界は白に埋め尽くされ、そして
──ぱらぱら、と淡く色づいた花びらが舞い降りた
「花…?一体、どこから……?」
「──よっ、主。驚いたか?」
手の内で開いたままのページ内に落ちる花びらに気を取られ過ぎたせいで、視界を埋め尽くしていた白の正体に気付くのが遅れた
鶴丸、と呼びかける主の亜麻色の髪にその##RUBY#刀#ヒト##が不意に触れる、動向を注視していると離れた骨ばった指先には花びらの一片
髪についていた花びらを取ってくれたのかと理解し、瞬いた紫水晶にも似た瞳に穏やかな笑みが映り込む
「庭先で見つけてな
どうだい、こういう趣向の驚きは君に似合うと思ったんだが」
「ええ、…そうね、とても驚いたわ」
「はは、そうかいそうかい!主にだけは、」
「?私が、なに?」
最早、この場所がどういった場所なのかを忘れたように普通に話し込む二人
学校といった多くの人々が利用する公共機関であれば、注意する誰かしらがいても可笑しくないが、この場にはそういった人もいない
「主にだけは驚きの他、穏やかな日々を齎したいもんだ
…俺がそんな感情を抱く日が来るとは!いやはや、君といると退屈せずに済む!」
「鶴丸、耳、真っ赤よ」
「…………」
書庫であって良かったと巴は微笑む
そっと視線を反らしてしまった鶴丸の本心を取りこぼす事もなく、この表情を自分の内に秘める事が出来るのだから。