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「ん、ん~…」
ぐっと書類とにらみ合いをする為に縮こまっていた体を伸ばし、巴はすっかり温くなってしまった緑茶に口をつけた
筆記で書いた書類はいわばプロット、ここからパソコンで清書作業に入る所だがその前に休憩をと息を吐くと、くぅと小腹から空き腹だと鳴き声が上がって来た
「お腹、空いたわね…でもこの時間に食べたら…」
時刻は既に深夜―こんな時間に食べてしまえば、確実に体のぜい肉となるだろう
元々、早く作業に入りたい為に夕餉を疎かにした巴に非があるのだ。そう自分に言い聞かせて空き腹をごまかそうとした所、遠くより間食を促す香りが漂ってきた
離れになる執務室の襖を薄く開くと本丸の厨にうっすらと灯りが見えた。自分以外の誰かが起きている事、この香りの正体を突き詰める為に巴は音も静かに執務室を出た
「…鶴丸?」
「うお?!主…!驚いたぜ…」
「貴方、何をしているのよ」
「いやな、夜遅くまで起きている主に何か差し入れでもと思ったんだがなぁ…」
「…お雑煮?」
見知った白い背中は巴の声がかかると大げさに跳ねた
その背中から覗き見る様にして、手元を見てみるとおぼんに巴用にと誰かが買ってくれた汁椀にもちが一つ入った雑煮が一つ
言葉から察するに鶴丸が作ってくれたものに間違いないそれは、どこか野菜の形はいびつで料理初心者が作ったものと分かる形をしていた
「いやはや。料理というのは中々に難しいな
良く光坊はこんな作業を毎日してくれるものだと感心していた所だ
待っていろ、確か万事屋で買って来たいんすたんと製品がここに…」
「……」
「な…!き、きみ?!」
驚く鶴丸を横目に巴はおぼんから自分の汁椀を手にし、作ってくれた雑煮に口をつけた
味を確かめる様に咀嚼する巴を信じられないものを見ている様な視線で鶴丸が見つめる、その表情はみるみる内に先程までの自嘲から巴の身を案じるものへと変わっていった
「そんな酷いものを良く食べる気になったな!ほら、口から出した方がいいぞ!」
「…ちょっとお醤油をいれすぎね、後は具の薄さがまばら
これじゃあ火の通りもまばらになってしまうわね、ちょっと貸して」
「あ、ああ。主、袖を結ばせてもらってもいいか?」
「ええ、お願い」
鶴丸から寝間着の袖をたすき掛けにしてもらい、巴は慣れた手つきで調味料を引き出しから取り出すと味の見直しを行い始める
確かこうだった筈とこの本丸に来てから、久しぶりに行う料理という作業に手が覚える動きに身を任せる。そうして出来上がった雑煮を自分の汁椀にはいれず、鶴丸の汁椀にだけ装った
「──美味い!おお、おれが作ったものでここまで出来るか!」
「貴方の作ったものもそこまで酷いって訳じゃなかったわよ、鶴丸」
「主、なぜさっきおれが作ったものを…こっちの方が十分に美味いだろう」
「いいの。…私、こっちの方が好き」
「…そうか。主の口に合った様で嬉しいぜ」
歪な形をする野菜達はこの刀が与えてくれる、自分への信頼や愛情の形の様がして愛しい
鶴丸は巴が作ったものを食すと巴の作業を近侍として付き合うと名乗りをあげてくれる。ああ、やっぱりこの神様は誰よりも優しくて頼もしいと巴は口を緩めた