SS-enst(2)
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「詩乃、起きてる?入るよ…?」
「あ、りっちゃんだ。いらっしゃーい」
日々の暮らしの中で様々な体験、刺激を余すことなく楽しむ姿を見せる一方で置き去りにされがちな事実がある
元来、凛月の体質とはまた異なる形で詩乃の体の作りは一般的な人間よりも少しばかり脆いということ。額に冷却シートを貼り、出迎える姿はまるで現実へ引き戻す為にあるようにも感じられた
「試験、追試になっちゃったよ…頑張って勉強したのにな」
「今は試験の事とか考えなくていいから
薬は?もう飲んだの?水分補給もちゃんとしてる?食欲は?」
「早く治したいから、ちゃんとしてるよ
自分のお世話なら任せて!アフターケアなんて慣れっこだもん」
「…ほら、そろそろ病人はお布団に帰ろうね~」
あっけらかんに自分の状態を『慣れっこ』だと笑う詩乃に対し、何かを言いかけて凛月は結局言葉にする事を躊躇した
水分を取り込んだのを確認し、自室の床に座る少女の体を抱き上げる。素直に体を預ける所を見るにまだ本調子でもなく、取り繕う事もままならないのだと推測する
「……りっちゃん、どうしたの?風邪移るよ?」
ベッドの端に下ろされた体へ覆いかぶさるように凛月から抱き着かれ、詩乃は大きく目を見開いた
病魔が巣食うせいで思うように動けない己よりも他者を気遣う言葉に、抱き上げた拍子に感じた体の軽さに凛月の胸が押しつぶされそうになる
────幸せの脆さというものをここに痛感してしまって、取りこぼさないようにたまらず彼女を抱きしめてしまったのだ
「普段の詩乃があんまりにも普通にしてるから忘れちゃうんだよね、元々は体が強いって訳じゃないこと」
「それは……うん、実は私も自分で忘れがちだから分かるよ」
「そのせいで、ふとした瞬間に幸せが詩乃と一緒に消えてなくなりそうで怖くなる
……そう思うと同時に、この瞬間がどれだけ幸せなのかって実感するんだよねぇ」
「ふふ、そう言われてみると確かに、だね」
「つい長話して疲れちゃった。ねえ、一緒に寝てもいいでしょ?」
「風邪移っちゃうってばぁ……」
責めるような口調とは裏腹に詩乃は凛月のされるがまま、こうなっては何を言っても聞きはしないと長年の経験で分かっているからだろう。また、好きな人だからこその安心感に身を委ねたとも言う
まだぼんやりとした熱を保ったままの体を抱き寄せ、魔法のように大丈夫という言葉を詩乃へと唱える。薬の影響で早々に眠りについた顔にかかる髪を払い、今度は自分の為のまじないを彼女へとかける
「…俺も詩乃のことを今以上に幸せにするから、詩乃も俺からこの幸せを奪わないで」
何も知らずにすやすやと眠り続ける姿にさえ、幸せを感じるようになっては後戻りなんてできやしないのだから。
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