SS-enst(2)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
果たして最初に彼に血を捧げたのはいつの頃だったろうかと詩乃は追想する
追想の中で心を開いてもらうまでに時間がかかったのは確かなものの、そこからは早かったという記憶を幼少期の出来事の中に見つけた
何故、今になって詩乃は過去を思い出すことにしたのか。今まで流されるがまま、受け身であった自分を振り返り、そして『吸血鬼』というものを真に理解していないと学習し直すようになったから
──とは今更の話ではある
「詩乃の血、ちょうだい」
「だ、だめ…かなぁ……」
「え」
お菓子でも強請るような気軽さで、凛月はいつものように詩乃へ血を強請った
そう、いつものように詩乃は何の疑いもなく、血をくれると思っていた凛月の予想を裏切る形で事態は思わぬ方向へ進む
彼女が吸血を拒否するのは初めてと言ってもいい行動だった。それ程までに衝撃は凄まじく、凛月の深紅色に塗れる瞳は驚愕に揺れ、「どうして」という問いかけが溜まらずに口から零れ落ちる
断った手前、目を合わせきれない詩乃の群青色の瞳が道に迷っていた
「吸血鬼って好きな人が出来たらその人の血しか飲めなくなるんでしょ?
その人以外の血は飲めなくなるし、美味しくてその人が死んじゃうまで吸血するって知ったの」
「そのせいで詩乃は俺に血を吸われるのが怖くなったってこと?」
「私が死んじゃったら、りっちゃんも一緒に死んじゃうから。だからだめだし、やだ」
「…………」
「ご、ごめんね、嫌な気持ちにさせて…」
「……んーん、その逆
思っていた以上に詩乃に愛されてるなぁって分かって、悪くない気分」
申し訳なさげに小さな体躯を更に縮めようとする詩乃の正面から抱き着き、凛月は楽しそうに己の機嫌の良さをアピールする
自分の全てを肯定し続けた詩乃からの反抗、つまりそれは彼女を盲目にさせていた心を覆う霧が晴れ始めたという兆しに他ならない
閉塞的な依存という箱庭から一緒に未来へ歩み始めた事実が、詩乃の自分を思う心が凛月の心を弾ませていた──だがそれはそれ、これはこれである
「でも血は欲しいなぁ、俺」
「……りっちゃん、実は私の話、聞いてなかったでしょ」
「ひどーい。でも今日は詩乃の言う事、聞いてあげられないかも」
「うぁ、り、りっちゃ…!」
油断をしていたのか、既に抱き込んでいた体は簡単に眼下へと押し倒されて
押し倒された衝撃に詩乃が驚いている間にも、慣れた手付きで凛月はブラウスのボタンを順調に外していく
露わになった首筋の白さに、今日は一段と美味しそうだと自分でも感化できない内に喉が上下する
「……確かに、詩乃の言った通りかもね」
愛してるから壊したくないのに
愛してるからこそ、こんなにも甘美で、全て食らいつくしたいと思ってしまう。