SS-enst(2)
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これは夜空に、にんまりと笑う口元が浮かび上がる頃のお話──
「…詩乃、それまだ終わらないの?」
「んー」
朔間家にお泊りにきたものの、何か閃いたらしい詩乃が作曲するサマを凛月はとても面白くなさそうに見つめている。そうして今のように時々、声をかけても彼女の返事は要領を得ない
こうなった詩乃は自らのユニットで、かつて『王さま』であった月永レオと同じように取り付く島がない事を凛月は良く知っている
暇を持て余す彼の視界の中、詩乃が使うシャーペンから流れる黒猫のチャームが空中散歩をしていた
一つのため息をつき、座っていた場所から凛月が行動を起こす。作曲活動における詩乃に取り付く島がないのを知っているのと同時、彼女を引き戻す手も彼は知っている。それはというと、
「りっちゃんの紅茶のにおいがする!」
「ふふ…♪今なら俺お手製のお菓子もつけちゃおうかな~?」
「お菓子と紅茶…!」
「ほら。一回シャーペンを置いて、こっちにおいで」
この通り、詩乃を引き戻す手としては自分のいれる紅茶の香りが最善手である。もう一つの手としては実力行使があるが、それは最終手段。下手をすれば「きらい」と彼女の不機嫌を買ってしまう恐れがあるからだ
紅茶とお菓子の香りに誘われるまま、律儀にも使っていたシャーペンをわざわざペンポーチに収納し、詩乃はお気に入りの黒猫の絵柄が入ったマグカップを包み込む
ペンポーチへの収納などを見る限り、この後に作曲の続きはしないらしい
「ふへへ、りっちゃんのお菓子と紅茶おいしい~」
「セッちゃんが知ったら、とんでもない事だって怒られるだろうねぇ」
「りっちゃんと夜を過ごすようになってから、私 どんどん悪い子になってる気がする」
「俺と詩乃は共犯だからね」
温かな湯気が立つ紅茶の水面に唇を落とし、喉を潤す詩乃の至極幸せそうな笑顔に先程まで凛月が感じていた退屈な時間さえも解けて癒されていくよう
お菓子にフォークを立てる為、横に置かれたマグカップ、そして先程まで視界にあったシャーペンとペンポーチ。今夜はとても黒猫を見る機会が多く、凛月の中でふとそれが疑問となって彼女へぶつけられた
「んん?詩乃ってさぁ…?そのマグカップもなんだけど、シャーペンやペンポーチのキーホルダーに黒猫モチーフ多いよね。そんなに猫好きだった?」
「うん、りっちゃんみたいで好きだよ」
「……俺?」
「まーくんが『凛月は猫みたいな所あるよな』って言ってて、確かにそうだなーって思って!」
「ちょっと待って、二人してそんな話をしてたの?」
自分の知らない所で自分の話で盛り上がる詩乃と真緒に対し、いつもの彼ならば輪の中から外されたように不貞腐れる所だったが、絶妙に似ていないもう一人の幼馴染の物まねに噴き出す方が先だった
なるほど、良くも悪くも感受性が高い彼女はその言葉で黒猫=凛月という考えが頭に埋まってしまった、そして行き着いたのが黒猫グッズの収集
…詩乃の世界の中心に自分や真緒が動かずにいるのだと思わずにはいられない
「本当、詩乃は俺なしじゃ生きていけない子になっちゃったね」
「そうだよ?だからりっちゃんは、ちゃんと責任取ってね」
「勿論そのつもり。そういう訳でお姫様、紅茶のおかわりは?」
「ください!」
瞬時に目の前に差し出される空っぽのマグカップ、器の表面に描かれた黒猫と同じように凛月が笑う
自分の分の紅茶も用意しよう、だけどその前に──口元にクリームをつけたままの笑顔に指を添えてからである
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