SS-enst(4)
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一切の言葉を排し、壬景は静かに眼下で眠り続ける人物を見下ろしている
襖の隙間より不安がる家賊に心配はいらない、そう視線を寄越す事で漸く室内は壬景と──”保護”された天城燐音、二人だけの空間へと転じた
最も転じたと言っても燐音の方は気持ちよさそうに寝息を立てて眠っており、そんな彼から香る匂いに壬景の嗅覚が反応。知らずに壬景の整った眉が片方歪んだ
「…アルコール、お酒の匂い…でありましょうか」
日本の憲法で大人として見做される二十の歳になってから解禁されるそれに、嗅ぎなれない為か壬景の神経をザラザラと逆撫でる
「(壬景の知らぬ数年の内に燐音坊ちゃんの事で知らない事の方が、多くなってしまわれた)」
あの夜、『故郷』を出ていく背中へ自由を願い、見送った事に関して今の今までに壬景が後悔した日はない
──けれど知らぬ間に都会の知識を吸収し、文化に浸透していったこの人に寂しさを覚えない訳ではない
再会するまでの内に大人となり、こうして飲酒するようにもなった彼の胸中が自我を得る前よりも見えづらいものとなっただけだ
「(…自我を持てば、このお方の御心を知れると思っていたのですが)」
そろり、遠慮がちに壬景から伸ばされた指先が燐音の前髪を撫でる
「…壬景、」
──瞬間、目を覚ました燐音に呼吸が止まった感覚
ぼんやりと熱に浮かされた瞳、彼はまだ酔いの中にあると壬景は推測し、表面上は冷静に努めようと心臓を抑え込む。静かな部屋に心音が大きく響きそうな夜だ
「壬景が、いる」
「ここは我ら一賊の隠れ家にありますれば、壬景がいる事に何の問題もないかと」
「ははっ、都合のいい、自分勝手な夢っしょ」
「……燐音坊ちゃん、まだ酔っておいでで?」
「あー…酔ってるんだろうなァ……」
燃え上がる火色の髪を掻きあげるようにして頭を抱える燐音
その様子に頭痛を起こしていると見た壬景が片膝を立たせ、体ごと立ち上がろうとした時、不意に肩へ寄りかかる温度が彼女の動きを封じ込めた
「、燐音坊ちゃん…?」
首筋にかかる息の熱さは、酔いのせいか
「…お前と一緒にいきたかった、壬景」
その一言が壬景の感情を揺れ動かす、たったの、されどの一言
「壬景、とて──」
燐音が目覚めた時にはうたかたと消える夢だ、これは
咄嗟に飲み込んだ言葉の代わり、目頭の熱さに冷えた夜の風が冷たく突き刺さった。
襖の隙間より不安がる家賊に心配はいらない、そう視線を寄越す事で漸く室内は壬景と──”保護”された天城燐音、二人だけの空間へと転じた
最も転じたと言っても燐音の方は気持ちよさそうに寝息を立てて眠っており、そんな彼から香る匂いに壬景の嗅覚が反応。知らずに壬景の整った眉が片方歪んだ
「…アルコール、お酒の匂い…でありましょうか」
日本の憲法で大人として見做される二十の歳になってから解禁されるそれに、嗅ぎなれない為か壬景の神経をザラザラと逆撫でる
「(壬景の知らぬ数年の内に燐音坊ちゃんの事で知らない事の方が、多くなってしまわれた)」
あの夜、『故郷』を出ていく背中へ自由を願い、見送った事に関して今の今までに壬景が後悔した日はない
──けれど知らぬ間に都会の知識を吸収し、文化に浸透していったこの人に寂しさを覚えない訳ではない
再会するまでの内に大人となり、こうして飲酒するようにもなった彼の胸中が自我を得る前よりも見えづらいものとなっただけだ
「(…自我を持てば、このお方の御心を知れると思っていたのですが)」
そろり、遠慮がちに壬景から伸ばされた指先が燐音の前髪を撫でる
「…壬景、」
──瞬間、目を覚ました燐音に呼吸が止まった感覚
ぼんやりと熱に浮かされた瞳、彼はまだ酔いの中にあると壬景は推測し、表面上は冷静に努めようと心臓を抑え込む。静かな部屋に心音が大きく響きそうな夜だ
「壬景が、いる」
「ここは我ら一賊の隠れ家にありますれば、壬景がいる事に何の問題もないかと」
「ははっ、都合のいい、自分勝手な夢っしょ」
「……燐音坊ちゃん、まだ酔っておいでで?」
「あー…酔ってるんだろうなァ……」
燃え上がる火色の髪を掻きあげるようにして頭を抱える燐音
その様子に頭痛を起こしていると見た壬景が片膝を立たせ、体ごと立ち上がろうとした時、不意に肩へ寄りかかる温度が彼女の動きを封じ込めた
「、燐音坊ちゃん…?」
首筋にかかる息の熱さは、酔いのせいか
「…お前と一緒にいきたかった、壬景」
その一言が壬景の感情を揺れ動かす、たったの、されどの一言
「壬景、とて──」
燐音が目覚めた時にはうたかたと消える夢だ、これは
咄嗟に飲み込んだ言葉の代わり、目頭の熱さに冷えた夜の風が冷たく突き刺さった。