SS-F/EXTRA
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「時々ね、無性にネロと過ごす日が崩れてしまうんじゃないかと感じる事があるんだよ」
「……それは幸せすぎて怖い、と余が感じるものと別物か?」
定められた時間通り、狂いなく落とされる太陽の代わりに注ぐ月光の下
寝ても覚めてもという言葉に相応しく、二人分にしては大きなベッドの上で詩桜にじゃれついていたネロは、彼女の言葉に体を起こした
見つめる翡翠の瞳はどこまでも詩桜の心を下っていき、それはかつて発生したと残る月の裏側での記録に信憑性を持たせるもので。紡いだ言葉の深刻さにいつになく真剣な面持ちのネロに、詩桜は苦笑とも取れる表情を向ける
「ほら。僕は結局、違う世界の人間だからさ
ムーンセルに気に入られてるからこうして留まっているけど、見限られたら異物として排除されてしまうんじゃないかなって」
「~~っその為の余ではないか!
いくらムーンセルであろうと奏者を奪う手段に出るのなら、余は手段を選ばぬ!それなのに何故、そなたが恐怖を感じる必要があるのだ!」
「そうだねぇ…うん、自分が消えてしまう以上に僕がいなくなった後、寂しさで泣いてくれるネロの事を思って苦しくなるの」
「──────」
烈火の如き、激情も夜の雰囲気に溶け込む詩桜の言葉を受けると凪いでしまう
大きな瞳が今にも輪郭から零れ落ちてしまいそうなネロに紡いだ言葉は紛れもない詩桜の本音だ、愛情を注がれている自覚があるからこそ、抱いた弱音だった
──泣いてなんて欲しくない、傷付いてほしくない
────ましてや自分が原因で大好きな笑顔に影を落とすなんて、そんなの自分が許せない
ネロの愛情表現が故に、二人の感情の温度差を指摘される事だって少なくはない
そこに詩桜は憤りも感じない、だってネロさえ分かってくれればいいと思っているのだから。他者の評価で計れるものではない、それが愛情だと教えてもらったから
「そなたは、そなたはいつも誰かや余の事ばかり…!」
「だってネロの事を愛してるから」
「むぅ……本当にそなたはずるい、愛い奴め……」
ずるい、ずるいと何度も口にしながら、ネロは詩桜を抱きしめる腕の力を決して弱めたりはしない
少しの息苦しさと安堵感をそこに感じながら、変な事を言ってしまった事を謝罪しようと口を開きかけた詩桜の異なる双眸に輝く笑顔が笑いかける
経験からしてこれは突拍子もない事を、ネロが考え付いた時だとすぐに判断できた
「そうだ!奏者、結婚しよう!」
「………へえ?!」
「うむうむ、何故この手を思いつかなかったのであろう!そうと決まれば、指のサイズをだな…」
「ちょ、ちょっと待って…!何で?何でいきなり結婚になるの?!」
そんな、"気軽に旅行に行こう"というものではない事は詩桜にだって分かる。だからこそのこの焦りようである
いつの間にか形勢逆転された、この立ち位置こそが本来の彼女達らしさ。慌てふためく詩桜の左手を絡めとる、自分の何もかもを暴いてしまったネロの手に自然と言葉は体の奥へ飲み込まれて行っていた
「余と奏者は夫婦なのだとムーンセルに刻むのだ
この月の海原にて、奏者と縁を結んだのは貴様だけではないと余が宣戦布告してみせよう!」
「っ……もう、なにそれ」
「そなたも分かっている通り、『私』が奏者を愛しているからこそである」
なんてずるくて、我儘な皇帝(ヒト)なのだろうと月明かりを模した光にも隠せない程、今の自分の顔は真っ赤なのだろうなと考えられる
恐る恐ると顔を上げれば、何度も笑いかけられる笑顔に詩桜は覚悟を決め、一呼吸
──私の全て、今度こそあなたに捧げます。
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