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2月14日は何の日か。そう、バレンタインである
時代の荒波の中で元の意味を変え、今では恋人、あるいは恋する人達にとって欠かす事の出来ない年間行事の1つに数えられるだろう
ESビルで今日もプロデューサー業務に励む花音もその中の1人なのだが────
「~♪」
何せ恋人である彼がこの調子の為、バレンタイン一色に染まり上がっている世間との乖離を感じずにはいられない
街中を漂う甘い香り、ピンクや赤色のハート、果てはラッピングのリボンから霊感が湧いてきたと楽譜へ一心不乱に音符を書き込んでいる最中。いつもよりも愛が篭った歌が出来上がるに違いない
彼の作る曲も含めてレオが好きだからこそ、邪魔をしたくないという乙女心が形になったような小さなチロルチョコ。丁寧に包装紙を剥がし、名前を呼ばれて振り向いた無邪気な彼の口へそれを放り込んだ
「んぐっ、なんだなんだ?!甘いのが口に突撃してきたっ!」
「今日はバレンタインでしょ?だからチョコ」
「…………」
「レ、レオくん?どうしたの?
いきなり口の中に放り込んだから怒っちゃった…?」
「……何で無言で放り込むんだよ~!
おまえからのチョコ、味わう暇もなく飲み込んじゃった!勿体ない!」
「そ、そんな大げさな…コンビニで慌てて買ってきたものだし……」
「花音がおれに用意してくれたものなら、ちゃんと味わいたかった!」
このサイズなら作曲中であっても口にいれやすいと手に取ったチョコレートは、彼の中ではそれはそれは、とても大きな損失として嘆くに値したらしい
あまりにも──それこそ世界の終わりを前にしたようなオーバーリアクションだった
罪悪感が刺激される形で居たたまれない気持ちに板挟みになっていると認識する花音が両頬を挟み込まれる感覚に驚き、目を見張れば、そこにあるレオのペリドット色の瞳に飛び込む形になる
「なあ、おれが材料持ってきたら、チョコ作ってくれる?」
「…えっ」
「やっぱり花音の手作りが欲しい、……ダメ?」
首を傾げられてのお願いに花音が弱い事を知ってか知らずか、そんな風にチョコを強請ってくるレオ
寒さが苦手と言うだけあって、少しばかり冷たい掌に彼のせいで沸いた花音の体温が移っていくようだった
「それ、ならちゃんとしたものを贈りたいから、明日まで待ってくれる?」
「ん、花音が納得して作ったものをくれるなら全然待てるぞ」
「材料も自分で用意するから、レオくんはお財布の紐をきつく締めてください」
「なんで?!材料費出すって言ったじゃんか!」
「レオくんの事だけを考えて用意する材料費も、ちゃんと自分で出したいの」
「…その言い方、どこで覚えたんだよ~……」
するり、と街中を飾るリボンが抜け落ちる如く、レオの両手が花音の頬から離れていく
嬉しさが混在する瞳で恨めし気に見つめてくるもので、苦笑で返す他ない。誰に教わったでもなく、心からの本音だと告げれば──彼は喜んでくれるだろうか?