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住宅街の一角に存在するとある家、その2階
100円均一で購入されたスタンドに立てられたスマートフォン越しに2人の少年少女が談笑に明け暮れていた
『今週中には帰国するからな!楽しみにしててくれ!』
「瀬名先輩とレオくんが帰って来るの楽しみにしてるね」
『そこはおれだけで良くない?』
「もう、そんな風に言っちゃだめだよ」
窓を開けば、すぐに会えた距離から今や9632kmという途方もない遠距離に阻まれるレオと花音の日課はこうして時間を見つけて、電話をする事であった
簡単に会える訳でもない距離だからこそ、寂しさを感じる日もあった。学生業と仕事の板挟みに悩んだ日もある、その度に花音が挫けずにいられたのは彼とのこの時間があったから
自分がそうであったようにレオにとっての支えになれたら、と通話を欠かさない日はない
『あ、仕事抱え込みすぎてないか?花音はすぐ無理するからな~』
「うぐ、確かに今はちょっとバタバタしてるけど…
でも忙しくて大変でも、プロデューサーの仕事が楽しくてどうしようもないんだ」
『…そっか。そんなにキラキラした笑顔で言ってくれるなら大丈夫だな』
元より切れ長の目を更に細めて笑うレオの破壊力は通話越しにも満点で、どうにか熱くなった頬を冷まそうといれてきた飲み物を花音が一気に煽れば、途端にあがる笑い声
ちらりとスマホの液晶画面の隅っこを見ると既に22時を過ぎており、週も木曜日を終える目前。名残惜しさを感じつつも終わりを告げないといけない頃合いだ
「じゃあ、もうそろそろ切るね?帰国の日、迎えにいくから!」
『ん。ゆっくり休めよ~?おやすみ、それから……』
──愛してる
最後の最後に投下された爆弾を受けた花音は通話が切れた後も暫く、真っ暗な液晶画面越しに自分と睨めっこをしていたのは言うまでもない
慈しむ事を惜しむさまも全く見せずに告げられた言葉のおかげで寝不足というステータス付与、小さくついたため息の中からは回してもらった仕事を捌ききれない不甲斐なさもにじみ出ていた
「レオくんの前でかっこつけちゃったなあ~…!」
仕事が楽しいと話したのは本心だ、自分が寝る間も惜しんで考えたステージの中で輝く『Knights』を見るのも、お姫様達へその姿を届けるのも誇らしい。ライブが呼び水となって舞い込む仕事も彼らの箔となるのだ
だからもう一息、手元で丁度いい温度になった紅茶を飲み干し、花音はデスクワークへと向き直る。これさえ乗り切った頃にはレオも帰って来ている頃だろう、彼が帰国したら何をしようと考えるだけで心が弾む
──そうして彼の存在に支えられ、無事に今週を乗り切った花音は目を疑う光景に出会う。何故、帰国は今週中としか曖昧に伝えられたレオが家の前にいるのか?
「あ、花音、おかえり~!あとたっだいま~!」
「え、……ええ?!なんで!?なんでいるの、レオくん!」
「こら、もう夜なんだからそんなに大きい声出したら近所迷惑になっちゃうだろ~?」
「た、確かに…ってそうなんだけど、そうじゃないっていうか……!
帰国の日はまだ分からないけど今週中だってレオくん、電話で言ってたよねっ?」
「仕事が早く終わったのと、おれが花音の顔を早く見たかったからサプライズ!」
行動力に満ち溢れた彼はにこにこ、と夜にも関わらず輝いて見える笑顔を浮かべている
フィレンツェから日本の間に存在する時差は約8時間、疲れもあるだろうに笑うレオを前に今週の疲れが吹き飛ぶ感覚を花音は覚えた。なんて単純、けれどそこに確かに存在するレオへの愛情に胸が温かくなっていく
まずは彼も言った通り、夜もそこそこなので家の中へ入ってもらおうと声をかけるより先に花音の体は子供のように高い温度に抱きしめられ、否が応でもレオの存在をなお強く認識してしまうのであった
「やっぱり花音を抱き締めたら、日本に帰ってきたって気がするなっ」
「こ、こういうのは外でやるものじゃないよ…!」
「わはは!家の中までは我慢しようとしてたけど無理だった!
あっちにいる間、花音を想って出来た曲がいっぱいあるんだ。聞いてくれる?」
「それは……勿論、喜んで。でもそれとこれとは話が別です」
「花音のケチ!家に入ったら覚えてろ~!」
腕を引き剥がした事で不満を買ったレオが喚いているものの、花音も花音で忙しない心臓が口から出ないようにと抑えるのに必死だ
果たして家の中で再現される抱擁にもう一度、だなんて。心臓が今度こそ悲鳴をあげてはちきれてしまうのではないかと危惧と羞恥心にどうにかなってしまいそうだ。