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「花音、見て見て!」
「どうしたの?何か嬉しいこと、あった?」
「MVを見たファンの皆から色んなメッセージが来てるんだ!」
現在、日本を離れ、遠くフィレンツェに活動拠点を置くレオがこの家に泊まりにくるのは今やそんなにも珍しい事でもなくなってしまった
最初こそスクープを狙ったゴシップ記者もいたものの、あまりの日常茶飯事っぷりに筆を折る始末。レオの保護者である瀬名が花音とその家族へと持ってきてくれたお菓子を口の中へ詰め込み、レオが見下ろす端末を覗き込んだ
MVというのは本日解禁されたばかりのKnightsの曲のことだ
既存曲としてライブでも高い人気を誇るその曲は、花音も大好きな曲の1つとなっている
だからこそMV撮影のコンセプトなどには気を配り、昨年になって漸く企画書を通した。さてファンの反応はいかがか
『今でも大好きな歌です!』
『MV、ネットにもあげてくれて嬉しい~!』
「────」
そこには投稿されたMV動画に賑わう世界が広がっていた
想像していた以上の反響の大きさに面を食らいつつも、ほっと安堵している自分がいる事に気付く。それもそうだ、この歌はKnightsにとって転換期に生まれ落ちた大切な曲でプレッシャーは相当のものだったのだ
分岐路に立った彼らが織り上げた、新しい場所への誓いの歌、曲名を『Promise Swords』
──それは今、ファンからの声援に目を通して笑う月永レオが先代の『王さま』だった頃、薄暮の時期に手掛けられた歌
夢ノ咲の抗争時代、様々な人間の悪意によって一度は挫けてしまった彼を花音は知っている。温かさと光に溢れた歌と笑顔をレオから奪われた瞬間を忘れたりしない
「わっ、花音?どうした~?お腹でも痛いのか~?」
「ううん、ううん……」
「…本当にどうしたんだ?何か嫌な事、あった?」
突如として抱きしめられ、花音の様子にただ事ではない様子を感じたレオの声が真剣みを帯びる
他人の痛みも同じくらいに、否、それ以上に受け止めてしまう程に感受性の高い彼だから、もう戻ってきてくれないとさえ思った。帰ってきたとしても以前までの月永レオでなくなってるかもしれないと怖かった
だけど彼は変わったりしなかった、背丈や後頭部を撫でる手の大きさは抗う事なく成長したけれど心の温かさも優しさも、花音の『お日様』のままでいてくれた
それはレオが過去を乗り切ろうと暗闇の中でもがき続け、一歩も動けないでいた彼の背負うものを少しずつKnightsの仲間が取り除いてくれたからこその価値、奇跡だ
彼の手によって生まれ落ちた歌の美しさ、光に満ち溢れた世界観が損なわれないでいてくれたこと。暗闇に墜ちても光を目指す事を諦めないでいてくれたから、今の彼がいるのだと愛しさが溢れてしまった
「あのね、あのね、レオくん」
「うん、何でも聞くから言ってみろ」
「…戴冠式の日まで『王冠』を守ってくれて、ありがとう」
「え、何で?どうして今更、」
「それから長い間、『王さま』としてのお勤め、ご苦労様でした
ううん、そんな言葉だけで収まらないくらい、本当に大変だったよね。それでもありがとう、今の『Knights』があるのは君が頑張った3年間があってのものなんだよ」
「…………」
「帰ってきてくれて、ありがとう」
今日もこんな何でもない日に一緒にいれる日常を『奇跡』と尊べるようになったのは、血まみれの抗争を経たからだ。そして今のこのステージが存在するのも彼らががむしゃらに駆け抜けた3年間があったからだ
今にも零れ落ちそうな涙をこらえて笑う花音を凝視し、そしてレオは俯く。一体どうしたのと前髪の奧で影のかかるペリドットの瞳に浮かびあがるのは少しの後悔の色
「ずっと待たせちゃって、おまえだけを『お姫様』にしてあげられなくてごめん」
「違うよ!レオくんが謝る事なんかじゃ…っ!」
「だからこれからの事を誓うよ
おれを待ってくれていた、たった一人の大切な『お姫様』に『王さま』じゃなくて一人の『騎士』として」
「…、」
「花音と一緒に生きていく、おまえの涙に誓う
この手ともう二度と逸れたりなんてしない、”大丈夫”」
いつの間にか立ち位置が逆転している事に花音が気付いたのは、自分の背がソファの背もたれに触れた瞬間
眼前には片膝を立て、座る自分の手を握りしめる誓いの騎士が一人。手の甲に帯びる熱はレオがその部分に口付けたからだ、花音の瞳から溢れる涙さえも愛おしむように彼が笑っている。その事実が更に涙腺を刺激していく
「わはは!花音は泣き虫だな!もう泣くなよ~!」
「レオくんが優しくしてくれるからだよぅ~!」
「えっ、おれのせい?!」
▽▲▽
2022.2.24 Promise Swords 実装おめでとう!