SS-enst(1)
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あの部屋に続く階段をこうやって登るのは、とても久しぶりの気がした。実際、花音とああなってからこの家に来る事は久しぶりなんだけど
事の発端は花音ママが夜になって熱を出した花音の為に薬局にスタートダッシュを決める際、お隣の月永の長男―うん、おれの事を見守り役に抜擢したからだ
「──」
そうやって辿り着いた部屋に置かれたベッドの上で、花音は夏の湿度と相まって熱に喘いでいた
細い眉を潜めて苦しそうだ、今夜は花火大会だって言うのに一人だけこんな所で苦しんで──でもお前がいなくなった後のおれも、これくらい
おれに背を向けて去ったお前はどんな感情を抱いて過ごしてきたんだ?-刹那、感情が弾けた様に視界が真っ白に飛んだ
「(あ)」
「…れお、く……」
「(おれ、今)」
おれ、花音の首に手をかけてそれから、何をしようとした?
どくり、どくりと心臓が嫌な音を立てて、冷や汗が背中を伝ってきもちがわるい
花音がおれの前から去るきっかけになった時の様に、おれは今 確かにコイツを壊そうとした
花火の光と音がなかったら、制止しなかったどうなっていた?その先を考えたくなくて、逃げようとしたのに服の裾を掴む指が許してくれない
「…花音、起きてるのか?」
「嬉しい、なぁ…夢の中ではれおくんと…こうしてまた……」
「…ああ。これは夢だよ」
おれにとっても、花音にとってもこれは──自分達にとって都合のいい夢だ
逃げようとしたおれを寸手で引き留めた手を、花音がこの夢から目覚めない程度の力で指と指を絡めて笑いかける。夢でくらい、いい恰好したいからな
「れおく…れお、くん……」
「ん?何だ?」
「ごめん、ね」
逃げてごめんなさい、一緒にいてあげられなくてごめんね、私じゃレオくんを助けられなくてごめんね
一つの言葉を告げては繰り返す後悔と伝う涙は花音の心はまだ過去にある事を知る。それを知って、過去を想う言葉におれは──
「嫌だ、許さない」
「……」
「許さない、絶対におれは花音を許したりしない
…お願い、頼むからおれを忘れないで。お前だけは、覚えてて」
「そ、っか…それが、貴方のおねがいなら…それくらいなら……」
電柱に寄り掛かりながら、最後にと放たれた花火の光と音を浴びる
夢で処理されると知っていたから花音にキスした。柔らかい唇の感触が残る自分の口と、キスの後に見せた花音の柔らかな微笑みに期待してしまいそうになる
「愛してるよ。おれの──」
今はただ、無性に泣きたい筈なのに泣けずに佇む自分の影を見つめていた。
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