#16 Madness is dirty, mind of that person
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オルフェウスが無造作に竪琴を振るうごとに割れそうに軋む頭を灰音は抑え込み、横に振るう。こんな状態にあっても、意識を失わずに狂わずにいれるのは一握りの理性と願望が彼女を繋ぎ止めているからだ
隣人に降って来た理不尽な死を2年前、厭な程に見てきた。だからもうこれ以上は体験しなくていい、もうこりごりだと疲労した彼女が自分に科した願い、力を得た今こそ悠達を守るのだと、例え自分の命と引き換えになったとしても――
「――神楽坂!!」
「…!」
例え自分の命と引き換えになったとしても、必ずこの人達を守る――
その願望が狂気に飲まれつつある中、自分の腕を引き上げる声に灰音は辛うじて反応した。この暖かな声を、自分は知っている
「セン、パイ…?」
「もういい!もういいから、ペルソナをしまえ!神楽坂!!
俺達を守ってくれようとして前に出たお前が、一人で全部受け止められる訳ないだろうがっ!」
「でも、そうしたら…センパイたち…」
「お前は何でもかんでも、一人で背負い込みなんだよ。俺達を守れたら死んでもいいって思ってんなら、本当に怒るぞ
死ぬって事がどんなに辛いのか、俺達が死ぬのはだめだって思ってる神楽坂が一番分かってるはずだろ。そんなお前が自分は死んでもいい、なんて矛盾してんだって何で分かんねぇんだよ!」
「!灰音ちゃんっ!!」
「え…?」
背中を焼く様な閃光の熱に、灰音の意識は暗い海へ放り出された
・
・
・
――ゆらゆらと、暗い海の底で眠っていた意識が揺り起こされる。微かな振動から伝わる温もりはまだ、自分が幼い頃に父親におぶってもらった記憶を呼び覚ました
あの時は広い背中に安心してつい眠ってしまったが、今回は逆に目を覚ます事となる様だ。綿毛の様にゆっくりと浮上する意識が見たのは、夕日に焼ける海面だった様に思われる
「お、眼が覚めたか?神楽坂」
「…花村、センパイ……?」
「おう。倒れたお前を俺が今、ばあちゃん家に代表して連れ帰ってるとこだよ」
どうやら、幼い頃に父親におぶってもらった記憶を思い出したのはこの為だった様だ。あちら側でシャドウの攻撃を受けたままに意識を取り戻さない灰音を陽介が背負い、河川敷を歩いている
寝起きで朧げな頭が徐々に意識を失う前の事を掘り起こす、意識を失った全ての要因は自分が勝手に使命感に駆り立てられ、シャドウの攻撃を受けてしまい、暴走した事にある。それをこの人はどう思っただろうと、陽介の心境を考察してしまう
「…センパイ、私…」
「それにしても、今日は疲れたよなぁ。色々あってさ!
神楽坂が気を失った後に色々あったんだぜ?クマなんかぺらっぺらになって、元に戻る為にトレーニングするって言いだしてよー」
「……?」
「だから、何があったかなんて忘れちまったよ」
「……」
――思わず、言葉を失ってしまった。この人は自分に何も聞かぬまま、今日の事を終わらせようとしている。普通は何故暴走したのか、あの状態が昔にも起こった事なのかと聞かれる所だ
確かに深く掘り下げられず、根掘り葉掘り聞かれないのは灰音にとっては助かる事に他ならない。けれどあまりにもあっさりし過ぎて、逆に不安になってしまい、自分から自分で首を絞める言葉が思わず口から漏れていた
「センパイは、それでいいんですか…?」
「あん?」
「本当は聞きたい、んでしょう。私が隠してる事が何か、とか…なのにどうしてこんなに…」
「んー…神楽坂は全然、俺達に甘えてこないからさ、なーんか甘やかしたくなるんだよなー
まあ、とにかく知っておいて欲しいのは俺や鳴上、里中や天城にクマ。頼れる奴がお前の周りにはちゃーんといるって事、神楽坂がどんな事を抱えてても受け止めてやるから」
だから、さっきみたいに一人で全部抱え込んでやろうとすんなよ、と言う陽介の横顔を灰音は見つめる。一片の負的な感情は見受けられない様子で彼は微笑んでいる、微かに目を伏せて
彼は本当に灰音から秘密を打ち明けるまで待つつもりらしい、今は言いたくないという彼女に配慮し、少しも詮索してこない優しさに温かさと罪悪感を覚え、灰音は顔をその肩に埋めた
隣人に降って来た理不尽な死を2年前、厭な程に見てきた。だからもうこれ以上は体験しなくていい、もうこりごりだと疲労した彼女が自分に科した願い、力を得た今こそ悠達を守るのだと、例え自分の命と引き換えになったとしても――
「――神楽坂!!」
「…!」
例え自分の命と引き換えになったとしても、必ずこの人達を守る――
その願望が狂気に飲まれつつある中、自分の腕を引き上げる声に灰音は辛うじて反応した。この暖かな声を、自分は知っている
「セン、パイ…?」
「もういい!もういいから、ペルソナをしまえ!神楽坂!!
俺達を守ってくれようとして前に出たお前が、一人で全部受け止められる訳ないだろうがっ!」
「でも、そうしたら…センパイたち…」
「お前は何でもかんでも、一人で背負い込みなんだよ。俺達を守れたら死んでもいいって思ってんなら、本当に怒るぞ
死ぬって事がどんなに辛いのか、俺達が死ぬのはだめだって思ってる神楽坂が一番分かってるはずだろ。そんなお前が自分は死んでもいい、なんて矛盾してんだって何で分かんねぇんだよ!」
「!灰音ちゃんっ!!」
「え…?」
背中を焼く様な閃光の熱に、灰音の意識は暗い海へ放り出された
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――ゆらゆらと、暗い海の底で眠っていた意識が揺り起こされる。微かな振動から伝わる温もりはまだ、自分が幼い頃に父親におぶってもらった記憶を呼び覚ました
あの時は広い背中に安心してつい眠ってしまったが、今回は逆に目を覚ます事となる様だ。綿毛の様にゆっくりと浮上する意識が見たのは、夕日に焼ける海面だった様に思われる
「お、眼が覚めたか?神楽坂」
「…花村、センパイ……?」
「おう。倒れたお前を俺が今、ばあちゃん家に代表して連れ帰ってるとこだよ」
どうやら、幼い頃に父親におぶってもらった記憶を思い出したのはこの為だった様だ。あちら側でシャドウの攻撃を受けたままに意識を取り戻さない灰音を陽介が背負い、河川敷を歩いている
寝起きで朧げな頭が徐々に意識を失う前の事を掘り起こす、意識を失った全ての要因は自分が勝手に使命感に駆り立てられ、シャドウの攻撃を受けてしまい、暴走した事にある。それをこの人はどう思っただろうと、陽介の心境を考察してしまう
「…センパイ、私…」
「それにしても、今日は疲れたよなぁ。色々あってさ!
神楽坂が気を失った後に色々あったんだぜ?クマなんかぺらっぺらになって、元に戻る為にトレーニングするって言いだしてよー」
「……?」
「だから、何があったかなんて忘れちまったよ」
「……」
――思わず、言葉を失ってしまった。この人は自分に何も聞かぬまま、今日の事を終わらせようとしている。普通は何故暴走したのか、あの状態が昔にも起こった事なのかと聞かれる所だ
確かに深く掘り下げられず、根掘り葉掘り聞かれないのは灰音にとっては助かる事に他ならない。けれどあまりにもあっさりし過ぎて、逆に不安になってしまい、自分から自分で首を絞める言葉が思わず口から漏れていた
「センパイは、それでいいんですか…?」
「あん?」
「本当は聞きたい、んでしょう。私が隠してる事が何か、とか…なのにどうしてこんなに…」
「んー…神楽坂は全然、俺達に甘えてこないからさ、なーんか甘やかしたくなるんだよなー
まあ、とにかく知っておいて欲しいのは俺や鳴上、里中や天城にクマ。頼れる奴がお前の周りにはちゃーんといるって事、神楽坂がどんな事を抱えてても受け止めてやるから」
だから、さっきみたいに一人で全部抱え込んでやろうとすんなよ、と言う陽介の横顔を灰音は見つめる。一片の負的な感情は見受けられない様子で彼は微笑んでいる、微かに目を伏せて
彼は本当に灰音から秘密を打ち明けるまで待つつもりらしい、今は言いたくないという彼女に配慮し、少しも詮索してこない優しさに温かさと罪悪感を覚え、灰音は顔をその肩に埋めた