#16 Madness is dirty, mind of that person
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「……”先、輩”…」
あの時と同じシチュエーションだ、自分が立ち向かおうとしているのは強大で絶対な"死"。恐怖によって、目を覆いたくなる自分の唇を灰音は強く噛み締める、今度は逃げるなと言い聞かせる
思わず思い出した"あの人"、"あの人"も忘れようとして忘れられなかった2年前の冬、灰音と同じ様に"死"と対峙し打ち勝った。それは"あの人"が特別だったから、出来た事で灰音に同じ事が出来ると本人も思っていない
けれど、それでも――今、自分の後ろに控える人達を守る盾になる事は出来る筈だと灰音は銃口を覚醒音と見立てて、目の前の敵を刮目した
「――オルフェウス!!」
「バカ、無理すんな!」
《まだ動けるの?もう、しつこい!》
再び灰音がオルフェウスを召喚した事により、状況に動きが現れる。その後ろに控える悠達と同じ様に満身創痍状態にまで、叩きのめした彼女が戦意を失っていない事にはシャドウも驚き、そのしつこさに苦言を呈する
けれど、彼女が動き出した所で弱点などはこの手の内。再びシャドウから放たれた攻撃は向かってくるペルソナ――ではなく、後方にて耳を劈く様な爆音と激しい光を周囲へ撒き散らす
計三度の攻撃でその光線が発射されるまでの時間と弾道を予測した灰音の思考とリンクしたオルフェウスがそれを初めて回避に成功したのだ
「その隙を狙って!オルフェウス!!」
《うそ~!》
吟遊詩人の指が水面を凪ぐ様な仕草で、竪琴から音――火炎魔法を激しく奏であげる。シャドウを囲う様に立ち上る無数の火柱によって、舞台を一瞬の内に火の海に変貌を遂げる
まさか、この攻撃が回避されるとは思ってもみなかったと虚を衝かれた声を上げるシャドウは火の海で溺れる。シャドウだけではない、灰音の仲間とて目を見張り、この状況に見入っている所だ
初めてテレビの世界に足を踏み込み、生命の危機に晒された時も灰音はこの状況と同じ様に爆発的な力や戦術を繰り広げた、まるで死がトリガーになっているかの様に。だがそれがここで引かれた事で一筋の光明が差し込んだのも事実
「行けるか…?!」
ーもう何も出来ないまま、身近にいた人と二度と会えなくなるのは堪え難いから……あんな思いをもうしたくないんだ、私は
「センパイ達にこれ以上…っ手を出すな…!オルフェウス!」
炎の海を生み出していた演奏を止め、オルフェウスはその竪琴を構えてシャドウへ迫る。物理攻撃に変更し、一気に戦いを決めようという灰音の思惑にオルフェウスが応えた形だ
――竪琴を振り下ろす刹那、灰音の視界を先の見えない闇が妨げる。それはオルフェウスを通じて見た、オルフェウスが置かれる状況。先の見えない闇と間違えたのは、銃口
《先にあんたから、始末してあげる》
「っ…!」
脳に伝わるリアルな痛みはたった今、その目を通じて、オルフェウスの視界を体験した様にオルフェウスを通して伝わって来たもの。弱点を突かれたから、こんなにも痛いのかと朧げに感じられた
意識が揺れる、自分が生きているのか死んでいるのか分からなくなる程に不安定に落ちていく。これはきっとシャドウの攻撃を受けた後遺症ではない、体が死を経験した事によって恐慌状態に陥ったのだ
「くっ…あぁぁ…!あぁぁぁぁぁ?!」
「神楽坂?!」
《ちょっ、なにこれ?!》
獣の様な咆哮を上げたのが、あの灰音だという事実を陽介達は信じられなかった。滅多な事で声を上げないあの灰音が叫んでいる、それだけで彼女の身に異変が起こっていると申告を受け取れた
そして主人の制御下を離れたオルフェウス。灰音が命令も出せないのにシャドウへ無差別に襲いかかる姿は、正常な判断能力を失ったバーサーカーを連想させた。そしてそれを止める事が今の灰音には出来ない
「あ、あぁぁ…っ!私……わたし、が…っ」
「どうしちゃったの、灰音ちゃん!」
「ペルソナが、暴走してるのか…?!」
「わたしが、守る…っ!わたしがやら、ないと…!」
ー誰も、もう目の前で死なせない、死なせて、たまるか
もう、誰も失わない。失いたく、ないよ
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