#12 Youth to the other side of the deodorant
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「やっぱりこういう暑い時こそ、熱いカップ麺が腹に染みるわ~」
「何か蒸し蒸しするよね」
6月ともなり、季節は梅雨に差し掛かる。その影響によってか空模様は生憎の曇り空、加えて梅雨の蒸し暑さも相まって、今日の不快指数は相当なものだろうと思われる
そんな空の下に作られた八十神高校の屋上ではいつもの面子が集い、昼食に当たっている。蒸し暑さも気にせずに自身の好物「緑のたぬき」を美味しそうに啜る千枝を筆頭に、解禁した夏服に灰音達は身を包んでいた
「梅雨入りしちゃいましたからね。毎朝、髪が大変なことになって大変っす」
「あ、灰音ちゃんの髪、少しクセっ毛だもんね。やっぱり早起きしたりしてんの?」
「いつもより少し早くですけど…。天城センパイのロングストレートとか、里中センパイのショートが羨ましいです
いっその事、切ろうかなって毎年この時期は思いますよ」
「灰音ちゃんだったら、ショートも似合うかも
切るとしたら、千枝より少し長めが良いんじゃないかな?」
どうやら、現在は灰音のクセっ毛と彼女に似合う髪型議論に花を咲かせているらしい。男子以上に身だしなみに気をつける女子だからこその話題だ
この蒸し暑い天候の中での三人のガールズトークは華やかな清涼剤にも感じられる。しかも彼女達は揃って美少女ときた、ある意味の贅沢に今まで空気だった陽介から感嘆の溜息さえも溢れる
「やっぱりいいよな~…」
「ああ、いいな!」
「え?何が?」
賛同を得た陽介の呟きは思わぬ所、ガールズトークに花を咲かせる灰音達にも拾われる事となった。だが残念ながら、彼女達には陽介の発言の意図というものが分からず終い
灰音の髪型に議論を重ねる理由が男子に分からないのと同じ様に、陽介の呟きというのも彼と同じ性別である悠にしか理解出来ないものなのか。だが今回は陽介の口の軽さが謎を解明してくれた
「夏服って新鮮♪」
「何かやらしいよ、その目つき」
「言い方も気持ち悪い」
「おい、待てぇ!今、こいつも一緒に見てただろ?!なーんで俺だけ?!」
「鳴上センパイは花村センパイに同意しただけじゃないですか…」
物言いと夏服に身を包んだ灰音達を見る陽介の目線に散々な批判の矛先が向かう。確かに一人だけ、批判されるのは不服だろうが事の発端は自分なのだから責任は持って欲しい
これが普段からガッカリと呼称される人間と、本物の王子様然の差というものである。陽介も黙っていれば爽やかイケメンなのだが、今回は悠の方に軍配が上がった様だ
「ねえ、話は変わるけど…」
「変えんなぁ!」
「梅雨になったら毎晩テレビ、チェックしなきゃいけないね」
「ああ。マヨナカテレビか」
自分の反論を横に反らし、本当に話題を変更させた雪子の前に陽介はとうとう撃沈。結局、変更前の話題はただ夏服がいいと言っただけで打ちのめされ、陽介が傷付いただけ損で幕を閉ざした
これは日頃、彼を弄る灰音の目にも同情的に映り、打ちひしがれる先輩の肩を励ます。綺麗な薔薇には棘があるというが、陽介に刺さった棘というものは中々に抜けそうにない
「確かに!雨が続くもんなぁ…」
「梅雨ですからね、仕方ない仕方ない」
「お前、今日そればっかだな…ってか今週末だけは晴れて欲しいよな」
「え、何で?」
「林間学校!」
梅雨時期は春よりも雨の日が増え、マヨナカテレビが放送される確率が跳ね上がる。それは事件の発生を防ごうとする灰音達にとって、チェックが欠かせない日が増えるという事でもある
キャンプ場で雨が降られてはテレビを確認する事も出来ないから、困る――というのは勿論あるものの、今週の陽介がそれ以上に困るのは高校生活での一大イベント中止の方であった
「はい。後はこれで少し煮込んだらいい筈だよ」
「わー…灰音ちゃん、手際いいね!」
月日は流れ、17日。林間学校1日目のお昼時
以前、女子陣にとことん打ちのめされ、可哀想な思いをした陽介を少しは労ってやろうと神様が思ったのか天候は快晴。絶好の林間学校日和だ
「本当、すっかり神楽坂さんの指示で動いてる様なもんだよな。俺ら」
「普段から自炊したりしてんの?」
「自炊、っていうか手伝いかな?」
自分の班でのカレーを作り終わり、後は煮込むだけという段階になった灰音。後片付けでもやっていれば、その内勝手も素朴なカレーを昼食としてありつく事が出来る筈だ
日頃2年の陽介達と行動を共にする事が多い灰音にとっては、今回の林間学校は同じ学年で班を作って行動する貴重な3日間でもある
だがやはり少々、物足りないと思うのはあの人達の賑やかさに慣れてしまったからだろう。今頃どうしているかな、と思い馳せている灰音に悲鳴が聞こえたのはその時だった
「な、何だ?今の…」
「また!今度は違う人の悲鳴だよ、あっちって2年生だっけ?」
「…どっかの誰かが同じ班の人に作ってもらったご飯に感激したんじゃないかな」
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