#6 Remains Put your finger in the trigger
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「アイツ、元からペルソナ持ってた様に見えたけど…俺達が助けに行く前にもう一人の自分をどうにかしたって事なのか?」
「いや、そうは見えなかった」
「じゃあ、何で灰音ちゃんは…」
これまで通りなら、心の奥で抑圧した感情が形を為したシャドウと対峙し受け入れる事でペルソナという力を手に入れて来た。陽介や千枝、雪子もそうだ
唯一例外なのは複数のペルソナを行使出来る能力を持った悠、ならば灰音もその類いの能力者なのかと聞かれれば、それはまた違うのではないかと否定論が生まれ、結局は振り出しに戻る事数回
「あー…!この話は神楽坂に聞かねぇと拉致があかねぇ!終わりだ終わり!」
「ちょ、それでいい訳?!」
「やっぱり灰音に話を聞くのが一番だと思う」
「だろー?」
少し休ませて…、と一方的に話を打ち切り、陽介は再び机の上に臥せってしまった。頭を動かし、それを口にするだけで結構な体力を使ってしまったらしい。これでは授業中も集中出来ないのではと危ぶんでしまう
何も話さなくなった彼を横目に千枝が悠の有り余る体力に目をつけた。それを持て余すのは勿体ない、という事で放課後、彼女に連れられた人手不足なバスケ部に入部する事になったのだが…
「おはようございます」
「あらー悠ちゃん。おはよう」
お隣である神楽坂家の前では灰音の祖母である富美代が丁度、掃除の為に家の前に出ていた所だった。挨拶に笑い皺を寄せて微笑む老婆の姿に悠の憂鬱さを少しは緩和してくれる
軽く会釈する頭を少し上げ、神楽坂家の2階を仰ぎ見る。カーテンで閉ざされた窓の奥は灰音の部屋がある。ここ数日、話を聞く事が出来なかった彼女は今も眠っているのだろうか…
「灰音の様子、どうですか?まだ目、覚まさないままで…?」
「それが昨日、階段を下りる音が聞こえたと思ったら、夜中に起きてきたんですよ!灰音ちゃん
悠ちゃんや他の子達には心配かけちゃったねぇ、あの子もその事を少し気にかけてたよ」
「!そうですか、よかった…」
「また時間がある時にでも顔を見せに来てやってくださいな。灰音ちゃん、きっと喜ぶ筈だから」
ご機嫌そうに声を弾ませる富美代。本当に自分の孫を大事にしている事が分かる態度だ、一人っきりの孫だからその愛しさも人一倍なのだろう
良かった、と思わずこぼした通りに悠も灰音の目覚めを聞き、漸く安堵した。陽介達に良い報告が出来そうだと学校へと吉報を胸に悠は歩き出した、今日の足取りは何とも軽やかだ
「え、灰音ちゃん、目が覚めたの?!」
「本当か、鳴上!」
「ああ。今日、折角だしお見舞いに行こうかと思…」
灰音のお見舞いを打ち出そうとする悠の携帯が重苦しい着信音をけたたましく響かせたのはその時だった。悲壮感すらも漂う音色は、実際持ち主の心情を現しているのだろう
この着信音に指定した人間は一人しかいない……その人物から今日はどんな無茶振りがあるのか、どこへ引き摺られるのかと考えるだけで血の気が失せて行く
「携帯鳴ってるよ?」
「あ、う、うん…ちょっと…出てくる…」
挙動不審で携帯を取り出し、そそくさと教室を出ていく悠の背中を残った陽介と千枝は訝しむ。テレビの中で冷静にこちらを指揮する彼からは想像出来ない姿だったからだろう
「何だ、あいつ…そういや、お見舞いどうする?何か持っていった方がいいよな」
「ごめん!あたし、今日雪子の方に行くから…また今度!」
「じゃあ、俺と鳴上だけで行ってくるわ。天城によろしくな」
「分かった。こっちも灰音ちゃんにお大事にって伝えておいて!」
――学生的に放課後に当たる時間を迎えた神楽坂家。数日間、閉ざしっきりだったカーテンを開いた部屋の主は学校帰りの友人から借りたルーズリーフを眺めていた
丁寧な文字で羅列された授業内容を見るにまだそこまで遅れを取る事はなさそうだと胸を撫で下ろす
さて、思わぬ所で貰った休みだ。バイトも学校の事も気にせずにいい日は一体いつぶりだろう、と物思いに耽っている彼女の部屋に入室を求めるノック音が挨拶代わりに一回。どうぞ、と客を迎え入れた
「うーっす、元気か?神楽坂」
「え、花村……センパイ?」
軽く手を頭の部分まで持ち上げ、軽く会釈する先輩の姿に灰音の喉が思わず震える。これは決して数日間、喋っていない為に発声が可笑しくなったとかでは断じてない
殺人事件が始まった時もそうだが、この人は本当に人が良すぎると再度実感する。たかだか同じ学校の、バイト先の後輩を見舞うなんて…陽介の在り方は灰音にとって異質であった
「なに変な顔してんだよ、見舞いに来ちゃいけなかったか?」
「そういうわけじゃなく…まさかセンパイが来るとは想定外だったんでつい
えーっと…お茶…そうだ、お茶持って来ますね」
「ああ、いいっていいって!病人は大人しくしてろって、な?」
まさかの来客に想像以上に混乱する灰音は自身が見舞われる立場なのも忘れ、陽介を持て成そうと立ち上がる。だがそこで黙っている程、陽介は人が悪くなく。病人が立つ事あるか、と寸出の所で彼女を抑えた
ふと自分の手から伝わる微かな温もりに陽介は視線を奪われた。意外と細い肩、決してガリガリという訳はない程よい肉付きの体は柔らかくて、シャワーを浴びたのだろうか清潔な香りが灰音から漂っていて、
いつもはその性格に振り回されてばかりで忘れがちだが、灰音もやはり女の子だと実感し――陽介はそれを実感した事に羞恥を狩られ、ぱっと不自然に肩を支えていた腕を外した
「花ちゃんセンパイ?大丈夫っすか?」
「お、おお…ってかその呼び方ヤメロ」
「あはは、やっといつものセンパイの調子に戻った」
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