#6 Remains Put your finger in the trigger
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車種はリムジンだろうか?霧深い林の中を黒塗りの車がエンジン音を微かにさせながら、走っていた
目的地も明らかにさせずにリムジンはただ走り続ける、夢と現実――意識と無意識の狭間を。ここはベルベットルーム、育むべき自我を持つ者が訪れる場所
「あら、これはこれは…」
客人を前にしながら落ち着いた品のある声をさせ、女性はそう呟く。どこか驚いた様子の中に興味深さが混じり合う声音だ
清楚な見た目の女性の名はマーガレット。この部屋の主人であるイゴールの助手を務め、訪れる客人を迎え入れ、サポートを行う立場にある存在
「申し訳ありません。お客様からまだ遠い未来に見られるアルカナがどうも懐かしく思えてしまって」
感慨深そうに呟くマーガレットの言葉に首を傾げ、彼女と対峙する客人は問いかける。懐かしいとはどういう意味かと
この部屋の住人である限り、客人からの追求を無視する事は出来ない。マーガレットは半ば独り言の様な言葉を止め、妖艶ささえも感じられる笑みで振り返る
「そのアルカナというものから、以前この部屋にいた私の妹が請け負ったお客様の気配を感じられます。そう……"彼女"があの方の後継者なのね
どうやら、お客様以上に自分の存在を確立出来ない為にこの様な現象が起こった様で…」
そう呟きながら、マーガレットは自身の膝に置いていた分厚い本を開く。辞書の様に何百と折り重なったページから突き止めたそのページは、空白
まだ何も記されていないページこそがマーガレットの言う"彼女"のアルカナが該当する欄なのだろう。そして今、その人物は過去、この部屋を使用していた誰かのアルカナを乗っ取っている、と
「ですが、所詮は他者の仮面…どこまで持ちこたえる事が出来るか、大変興味が尽きません
彼女が本当の自分を見出すまでの旅…見届けさせていただきましょう?」
「おっはよー!」
「おはよう」
「よう…」
「昨日はお疲れさま!」
数日前とは打って変わった明るい声で朝の挨拶を交わす千枝、それに応える声は様々である。疲労の色も見せない悠とは逆に陽介は疲労を隠そうともしない態度
今日は4月の19日、その前日――18日は失踪してしまった雪子を救出する為に彼らはテレビの中の世界を奔走。その甲斐あって雪子を救出出来たが、今日になってその疲れが体に表れた、という訳だ
「疲れたよ、本当…けど、俺達が天城を助けたんだ!自信、持とうぜ
天城、どうしてる?」
「雪子ね、まだ体調良くないみたいで暫く学校休むって
あ、でも心配しないで、って言ってたから…」
「そっか、よかった」
千枝の言葉を聞くに雪子を学校で拝むのは当分、先の事になりそうだ。心身に悪影響を及ぼす霧が立ち込めるテレビの中に長くいたのだ、無理もない
それでも無事に自分達の手で彼女を救い出し、山野アナ、小西と続いた連続殺人事件を食い止める事が出来たのだ。その事は陽介達の大きな自信に繋がった
「雪子も帰って来て、これで一安心だね。漸く元通りの生活に戻れる!」
「つうか里中、元気だよなー…」
「ん?」
「流石に俺、ここんとこの疲れがどっと来たっていうか…なあ、鳴上?」
あの霧の中を突き進むだけでなく、昨日は雪子のシャドウと交戦する為にペルソナを行使し続けたのだ。陽介の状態から学校に登校しただけでも合格点だろう
机に臥せりながら、この疲労感を同意してもらおうと悠に意見を求める陽介を彼は不思議そうに首を傾げ、
「え?俺、平気だけど…」
「何だよ?!お前ら、どういう体してんだよ?!俺なんてなぁ…」
「あー、はいはい。……それにしても灰音ちゃん、まだ学校来てないみたいだね…」
「……」
テレビの中の世界に時を同じくして飛び込んだらしい灰音を救出したのは雪子を救出した一日前。あの時、彼女は自身の手でペルソナを召喚し、陽介達の助けもなくシャドウを撃退した
――問題はその後だ。ペルソナ召喚による精神の消耗とシャドウによって怪我を負わされた彼女は彼らの目の前で倒れた。その体が彼女の祖父に回収されてからの数日間、陽介達は灰音を見かけずにいた
もう少し早く自分達がその場に駆けつけていたなら、何故一人でシャドウと交戦させたのか…雪子を無事救出出来たからこそ、その痛手が重くのしかかる。そんな空気を変えようと陽介がわたわたと忙しなく動き出す
「だ、大丈夫だろ!神楽坂の事だし、その内けろっとした顔で学校来るって!」
「今朝、富美代さんに会ったけど、まだ目が覚めないままらしい」
「おま…こっちが必死に取り繕うとしてんのに……」
「ごめん」
空気読み人知れずかよ…とがっくしと項垂れる陽介だが、その言葉はどこか信用の置けるものと受けとれた。この中では彼が灰音を良く知る人物だからなのかもしれない
そんな彼の言う通り、きっと灰音の性格の事だ。さも何事もなかった様子でいつもの調子で雰囲気を掻き回す為に顔を出す……そう陽介に免じて信じる事にしよう
「でも、雪子もそうだけど灰音ちゃんも助けられてよかったよね」
「神楽坂の場合は自分でどうにかしたって話だけどなー…」
鈍色に冷たく輝く銃の筒口を米神に宛てがい、一瞬の迷いを振り払った動作で灰音は自身の頭を撃ち抜いた。大きな発砲音は何とも非現実な効果音として、陽介達の頭の奥にこびり付いたままだ
一連の動作を鍵として、その心の海から解き放たれたのは頭部以外を人形の体に持つペルソナ。シャドウを迎撃する際に灰音が叫んだその名は"オルフェウス"、ギリシャ神話に登場する吟遊詩人の名だ
けれど幾つか問題が残る。一体灰音はどこでペルソナを手に入れたのか、シャドウやテレビの中の異空間を前にして、冷静に対処出来た事に対する疑問についてだ
目的地も明らかにさせずにリムジンはただ走り続ける、夢と現実――意識と無意識の狭間を。ここはベルベットルーム、育むべき自我を持つ者が訪れる場所
「あら、これはこれは…」
客人を前にしながら落ち着いた品のある声をさせ、女性はそう呟く。どこか驚いた様子の中に興味深さが混じり合う声音だ
清楚な見た目の女性の名はマーガレット。この部屋の主人であるイゴールの助手を務め、訪れる客人を迎え入れ、サポートを行う立場にある存在
「申し訳ありません。お客様からまだ遠い未来に見られるアルカナがどうも懐かしく思えてしまって」
感慨深そうに呟くマーガレットの言葉に首を傾げ、彼女と対峙する客人は問いかける。懐かしいとはどういう意味かと
この部屋の住人である限り、客人からの追求を無視する事は出来ない。マーガレットは半ば独り言の様な言葉を止め、妖艶ささえも感じられる笑みで振り返る
「そのアルカナというものから、以前この部屋にいた私の妹が請け負ったお客様の気配を感じられます。そう……"彼女"があの方の後継者なのね
どうやら、お客様以上に自分の存在を確立出来ない為にこの様な現象が起こった様で…」
そう呟きながら、マーガレットは自身の膝に置いていた分厚い本を開く。辞書の様に何百と折り重なったページから突き止めたそのページは、空白
まだ何も記されていないページこそがマーガレットの言う"彼女"のアルカナが該当する欄なのだろう。そして今、その人物は過去、この部屋を使用していた誰かのアルカナを乗っ取っている、と
「ですが、所詮は他者の仮面…どこまで持ちこたえる事が出来るか、大変興味が尽きません
彼女が本当の自分を見出すまでの旅…見届けさせていただきましょう?」
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「おっはよー!」
「おはよう」
「よう…」
「昨日はお疲れさま!」
数日前とは打って変わった明るい声で朝の挨拶を交わす千枝、それに応える声は様々である。疲労の色も見せない悠とは逆に陽介は疲労を隠そうともしない態度
今日は4月の19日、その前日――18日は失踪してしまった雪子を救出する為に彼らはテレビの中の世界を奔走。その甲斐あって雪子を救出出来たが、今日になってその疲れが体に表れた、という訳だ
「疲れたよ、本当…けど、俺達が天城を助けたんだ!自信、持とうぜ
天城、どうしてる?」
「雪子ね、まだ体調良くないみたいで暫く学校休むって
あ、でも心配しないで、って言ってたから…」
「そっか、よかった」
千枝の言葉を聞くに雪子を学校で拝むのは当分、先の事になりそうだ。心身に悪影響を及ぼす霧が立ち込めるテレビの中に長くいたのだ、無理もない
それでも無事に自分達の手で彼女を救い出し、山野アナ、小西と続いた連続殺人事件を食い止める事が出来たのだ。その事は陽介達の大きな自信に繋がった
「雪子も帰って来て、これで一安心だね。漸く元通りの生活に戻れる!」
「つうか里中、元気だよなー…」
「ん?」
「流石に俺、ここんとこの疲れがどっと来たっていうか…なあ、鳴上?」
あの霧の中を突き進むだけでなく、昨日は雪子のシャドウと交戦する為にペルソナを行使し続けたのだ。陽介の状態から学校に登校しただけでも合格点だろう
机に臥せりながら、この疲労感を同意してもらおうと悠に意見を求める陽介を彼は不思議そうに首を傾げ、
「え?俺、平気だけど…」
「何だよ?!お前ら、どういう体してんだよ?!俺なんてなぁ…」
「あー、はいはい。……それにしても灰音ちゃん、まだ学校来てないみたいだね…」
「……」
テレビの中の世界に時を同じくして飛び込んだらしい灰音を救出したのは雪子を救出した一日前。あの時、彼女は自身の手でペルソナを召喚し、陽介達の助けもなくシャドウを撃退した
――問題はその後だ。ペルソナ召喚による精神の消耗とシャドウによって怪我を負わされた彼女は彼らの目の前で倒れた。その体が彼女の祖父に回収されてからの数日間、陽介達は灰音を見かけずにいた
もう少し早く自分達がその場に駆けつけていたなら、何故一人でシャドウと交戦させたのか…雪子を無事救出出来たからこそ、その痛手が重くのしかかる。そんな空気を変えようと陽介がわたわたと忙しなく動き出す
「だ、大丈夫だろ!神楽坂の事だし、その内けろっとした顔で学校来るって!」
「今朝、富美代さんに会ったけど、まだ目が覚めないままらしい」
「おま…こっちが必死に取り繕うとしてんのに……」
「ごめん」
空気読み人知れずかよ…とがっくしと項垂れる陽介だが、その言葉はどこか信用の置けるものと受けとれた。この中では彼が灰音を良く知る人物だからなのかもしれない
そんな彼の言う通り、きっと灰音の性格の事だ。さも何事もなかった様子でいつもの調子で雰囲気を掻き回す為に顔を出す……そう陽介に免じて信じる事にしよう
「でも、雪子もそうだけど灰音ちゃんも助けられてよかったよね」
「神楽坂の場合は自分でどうにかしたって話だけどなー…」
鈍色に冷たく輝く銃の筒口を米神に宛てがい、一瞬の迷いを振り払った動作で灰音は自身の頭を撃ち抜いた。大きな発砲音は何とも非現実な効果音として、陽介達の頭の奥にこびり付いたままだ
一連の動作を鍵として、その心の海から解き放たれたのは頭部以外を人形の体に持つペルソナ。シャドウを迎撃する際に灰音が叫んだその名は"オルフェウス"、ギリシャ神話に登場する吟遊詩人の名だ
けれど幾つか問題が残る。一体灰音はどこでペルソナを手に入れたのか、シャドウやテレビの中の異空間を前にして、冷静に対処出来た事に対する疑問についてだ