#4 It should not exceed, the boundary
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「お、お前いつから…!ってか見たのか?見ちゃったのか?」
「何言ってるか分からないんで、スルーするっす。私が言いたいのは里中センパイが不安になる様な、危険な事はしないで欲しいってこと
小西センパイみたいな事が起こるのはもう、ごめんですよ」
「わ、悪い、神楽坂…お前も小西先輩が亡くなったばっかだってのに不安な思いさせちまって」
「俺も謝る、それと里中と一緒にいてくれてありがとう」
「いーえ、じゃあこれ花ちゃんセンパイと鳴上センパイに貸し一つってことで」
「げっ、でも仕方ねぇか…」
二人の行動に対して、何やらもの言いたげな瞳でじとりと目で物語る灰音言葉よりも応えたのは亡き小西の名前を出され、その死を悼んでいる様子を見せられた事だった
小西の死の謎を解く為に行動に出たというのにこれでは目的を見失っているではないか。貸しを作るのもやむなし、だが彼女一人だけだとそれでは些か不平等だろう
「……ビフテキ…10皿…」
「えっ?何だって?」
「ビフテキ、10皿…」
「え?!」
「あ、ああ!分かった!お詫びにビフテキ奢る!なあ、鳴上!」
「?!俺も?」
およそ、女子が食べる量ではないその膨大な量の要求には思わず陽介や悠からも驚きの声が上がった
だがそれで千枝の機嫌や今日の事を無かった事にして貰えるなら易いものだ。痛むのは自分達の財布で彼女を不安にさせた罰として甘んじて受けよう
「鳴上くんは肉丼…」
「ええ…」
「わ、分かった」
「じゃあ、許す」
「ワイルドっすね、里中センパイ」
それでいいのか、と思いながらもこれ以上、事態を長引かせるのは得策ではないと判断し、巻き込まれた悠も千枝からの要求を了承
漸く千枝の機嫌を取る事が出来、ほっと一安心ついた所で意地悪く…という意味ではないのだが、灰音が一歩、彼らが直面しているであろう問題へ踏み込んだ
「…センパイ達はここで何してたんすか?」
「それは…」
「センパイ達が私に後ろめたい、やましい事してるなら別っすけどそんな事してないんですよね?」
「当たり前だろ!俺達がそんな事するような奴らに見えるか?」
「んじゃ信じますよ、センパイ達がやってる事は正しい事なんだって」
言い淀む鳴上を見て、灰音はああ、やっぱりそうなのかと勘を働かせた。彼らは他人に口を漏らせないものを見てしまったのだ。かつて、自分が直面したようなものかは不明だが
ここまで似通った話が過去あったと、そして自分の勘づいた事を悟らせない様に灰音は微笑む。自分からは踏み込んでおきながら、自分には踏み込ませない――何とも不平等な関係だった
「さっきはびびったぜ、神楽坂に見られたかと思った」
所変わって、河川敷。長雨のせいで増水した水の影響で彼らの他に人の姿は見られない
それによって変に気を使わずにテレビの中の話が出来ていたが、今や話題は灰音に焦点を合わせていた。先程の質問に肝を冷やしたと言う陽介の言葉には悠も首肯する
「ああ。何してるか聞かれた時はひやっとしたよ。灰音、マヨナカテレビに興味を持ってるみたいだったし…」
「でも、絶対にあいつは巻き込ませたくねぇんだ。小西先輩みたいな目に…危険な目には合わせたくない」
「花村は良く灰音の面倒をみているんだな」
「まあな!あいつがこっちに越して来た時から知ってっから、その成り行きってやつ?」
何だかアイツ、放っとけなくてよーと灰音に必要以上に肩入れする陽介の言葉は問題児程、可愛い後輩を愛でる先輩の精神に則ったものだ
自分よりも彼女を知っているといった様子の陽介は誇らしげで、同時に妬ましくも思った。たった一月会う時間が違うだけでこんなにも――はて何故、こんなにも胸が痛むのかと悠は首を傾げた
「というかお前、神楽坂の事は呼び捨てなんだな」
「ああ、あっちが呼び捨てで良いって言うからお言葉に甘えて」
「それ…多分、名字を呼び捨てでいいって意味だったんじゃねぇの…?」
むっと眉を顰めた陽介に悠の胸に刺さる棘がすっと消え去る気分だった。そうだ、接した時間は劣ってもこっちは名前呼びなのだ、決して悠も彼には負けていなかった
その夜、昨夜は寝不足で今日はすぐに寝れるであろうと踏んでいた自分の思惑が外れた灰音はぼんやりとベッドに寝転がり、天上を見上げていた。時刻はすでに0時近い
課題が嵩張っている訳でもない、体調が悪い訳でもない彼女は音もなく立ち上がると机に向かうでもなく、その足を押し入れへと向けた。引きずり出したのは、遠く避けていたシルバーのトランク
「先輩、あなたは…こんな事が起こると予測していて、私にこれを託したんですか?」
その問いかけに答える者は、誰もいない。自分にこれを託した彼は今や声なき存在となっているのだから
答えは、自分で探し出すしかない。例えそれが――あの人と違う思惑であったとしてもだ
神楽坂家のリビング、そこに静かに鎮座したテレビが今夜のマヨナカテレビを人知れずに放送していた
砂嵐の中、隠れる場所もないただの一本道を逃げ惑う着物姿の女性が映し出されていた――
It should not exceed, the boundary
(越えたくない、知りたくない)
(それでも狭まってくる)