硝子越しのマリアへ
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「みんなー!今日はみんなが会いたがってた人が来てくれましたよ!」
「あー!Go鬼塚だー!」
「本物だー!!」
「チャンピオン!ぼくたちに決闘教えて!」
「ははっ!いいぜ!」
カリスマデュエリストの一人である鬼塚がDen cityの一角に存在する総合病院の小児病棟に訪れたのは、ある日の午後だった
わっと集まってくる子供達の姿に笑顔で対応する彼は、自身の出身である孤児院の子供達のチャンピオンではなくなった。けれどここではまだチャンピオンでいられる、その事に心の何処かで安堵していた
本当に病気なのかと思う程に明るく、元気な小児科病棟の子供達に決闘を教えている中、一人の少女が車椅子で図書室から出て来るのを鬼塚は目で追っていた、何故か目を引く少女だ
「綾乃おねえちゃん!」
「こんにちは、みんな」
呼びかけに車椅子の軌道を反転させ、鬼塚と子供達の方へ動かす綾乃と呼ばれた少女の元へ鬼塚も一人の子供を肩車した状態で歩み寄る
少女の膝には「初心者でも分かる!決闘の基本知識」と初心者の決闘者が読むであろう本。なるほど、鬼塚自身がこの少女に目を引かれたのは同類の匂いを感じ取ったからなのかもしれない
「アンタも決闘を?」
「あ、はい。LINK VRAINSでまた始めたんですけど、まだ未熟だって言われちゃって」
「おねえちゃんも決闘つよいんだぜ!」
「そうだ、鬼塚おにいちゃんと決闘してよ!」
「えっ!…うーん、今日、鬼塚さんは皆の為に病院に来てくれたから…また今度ね?」
「はーい…」
瞬く間にしょんぼりとする少年に苦笑を浮かべる少女―綾乃は頭を撫でる、途端に今までの事を忘れた様に鬼塚に遊ぼうと誘ってくる少年と他の子供達と遊ぶ鬼塚
そのLINK VRAINSのカリスマデュエリストでも、チャンピオンでもなく、一人の子供達にとっての兄貴的存在であるヒーローに見えた
「ここの子供達はまだ俺の事をチャンピオンと呼んでくれるんだな」
「?」
「いや、俺が育った孤児院ではもうプレイメーカーの話題で持ちきりでよ
子供ってのは素直だ、新しいもの、強いものに心奪われる。過去のものにはもう目もくれない、だが!」
ひとしきり遊び、疲れた子供達が寝付くまで病棟にいた鬼塚は綾乃を誘い、中庭で己が胸にため込んでいた覚悟を彼女に打ち明ける事にした
自分、鬼塚が綾乃に目を引かれたのは同類であったこと・そして子供達のチャンピオンだけではなく彼女の様な人間にこそ、自分はヒーローでありたい/見てほしいと思ったのだ
「俺はチャンピオンの座を簡単にはプレイメーカーとかいう新人に明け渡す気はない!
またアイツらのキラキラした目を、関心を得るのはこの俺…Go鬼塚だ!その為にも奴に決闘を挑むつもりだ」
「でもプレイメーカー…はハノイの騎士以外は相手にしないのでは…」
「なに、俺に考えがある。絶対にこの決闘に挑ませる策がな、内緒だぞ?」
「ふふ…分かりました。内緒、ですね?」
悪戯気に人差し指を唇に近付けて笑う綾乃おう、と鬼塚も笑い返す。けれど綾乃の心中は複雑だ
自分を偽物とはいえ、ハノイの騎士から助けてくれたPlaymaker。そしてその彼を倒そうとするGo鬼塚も子供達のチャンピオンとして存在し続ける覚悟を見せてくれた。そんな人を無下に切り捨てられない
どちらを応援すればいいのかとつい考え込んでしまうが、今回は子供達の側に立って、どっちつかずとも取られても構わない勢いで両方の決闘を楽しみにする、という言葉を選ぶことにした
「きっとプレイメーカーと鬼塚さんの決闘、病院の子供達も楽しみにすると思います。世紀の一戦ですから
今日、鬼塚さんが来てくれただけであの盛り上がりでしたから…きっと元気を出してくれます」
「子供達だけじゃなく、えー…アンタ、綾乃って言ったか?」
「どうして…あ、子供達が呼んでましたね」
「ああ。綾乃って呼んでいいか?」
「はい、好きに呼んでください」
「綾乃、アンタにも元気を与える決闘が出来たらいいな
アンタの足が治って、元気な姿を見せる事で子供達にも自分も治るんだって希望になってほしい」
そこまで分かっていたのか、と改めてカリスマデュエリストとしての戦況を見据え、確実な一手を生じさせる鬼塚の観察眼に恐れ入る綾乃
自分の病は手術をすれば、治る”かもしれない”もの。治ると断言されたものではない、それでも治るのだと信じている鬼塚の自信に満ちた表情から逃げる様に綾乃は俯いた
「そう、なれるでしょうか…私は、臆病で…手術もまだ同意できないのに」
病院のスタッフや主治医を信頼していない訳ではない、リスクの少ない道を模索して、綾乃の心が決まるまでは手術の話をしないでくれている。そう、後は綾乃の心次第なのだ
自分が決められないで、結果として自分を苦しめている―分かっているのに決まらない状態を作っているのは自分自身なのに、誰かのせいにしてしまいそうな事実に嫌気が指す
「お、鬼塚さん?」
「綾乃が手術を受けられる自信がつくまで、このGo鬼塚が応援する!それなら百人力だろ?」
いつぶりだろうか、そんな、真っ直ぐな言葉を受けたのは
幼馴染である葵は「支える」と言ってくれた、そして鬼塚は「応援する」と言ってくれた。何て真っ直ぐに芯が通った人達なのだろう、と目が眩みそうな程に眩しく、そうなりたいと思う
「近々、また来るぜ!アイツを決闘でぶっ倒した後にな!
決闘の感想も聞きに来る!だから、ちゃんと俺の雄姿を見てろよ!綾乃!」
「英雄」という冠が選んだのは
(私にはあなた達の輝きは)
(眩しすぎて、泣きたくなるの。)