TURN-021 祈った奇跡が色付く瞬間、
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──規則的に自分の心音を記す音色に目を覚ます
夢を見ていたかの様にぼんやりとする頭を必死に動かす、自分は、自分は──
「綾乃…!」
「……おか、あ、さん…」
「目が覚めたのね…!」
涙ぐむ母はこの密閉された集中治療室に新たな病原菌を運び込まない様、ビニール製の服を身にまとっていた
そこで綾乃はクロッシェとして世界の危機に立ち向かい、リボルバーという巨大な壁の前で砕け散った事を1つ思い出す、もう1つは──
「無事に手術は終わったわ。麻痺は残るかもしれないけど、今よりは歩ける様になるって!」
そう、綾乃はLINK VRAINSへとログインする時に万が一の事を想定して両親へ手紙を残していた。それが2つ目に思い出した大切なことだった
もしも自分が戻ってこれなくなった時は同意書を使って手術へ挑ませてほしい、今まで勝手な事をした事の両親への謝罪をそこに記した。どうやら綾乃の意向はちゃんと汲み取られた様だ
「綾乃」
「おとうさん…」
「……何故、こんな無茶をした!」
「貴方!綾乃はまだ…!」
「たった一人の娘が二度と目覚めないかもしれないと言われ、どんな気持ちだったか分かるか!心配、したんだぞ…!」
目元を腕で抑えながらも涙を隠し切れない父の姿に目尻が熱くなる
あんなにも厳格で、今までこんなに大きな声を使って感情を露わにした事がない父親。どれだけ心配をかけたかが、その涙につまっていた
「ごめん、なさい…ごめん、ね…」
「…もういい、もういいんだ
ゆっくり眠りなさい、明日からリハビリが待ってるんだから…」
入院中に整体師、リハビリテーション科の看護師に筋肉が固まらない様にとマッサージを受けてはいた
それでも微かに麻痺を残した左足で社会復帰するまで時間がかかってしまった
「ごめんね、看護師さんに聞いたよ
遊作くん、私があの病室から他に移った時にも会いに来てくれたんでしょう?」
「…術後の経過はどうなんだ」
「見ての通り、かな?」
教壇でにこやかにクラスメイトとなる生徒達に挨拶する綾乃をひとしきり独占し、今までどうしていたのか、何故連絡をくれなかったのかと質問攻めする葵はあの教室では異様だった
昼休みを利用し、葵が綾乃から離れた隙に遊作は彼女を屋上へと連れ出した。自分だって彼女には聞きたいことが山ほどある、あった筈なのに綾乃を前にすると言葉が出ない
手持ち無沙汰な手をポケットにいれてみると何かが指に触れた。ああ、そうだ、これを綾乃に渡すことを夢見て、自分はずっとここに
「椎名」
「なに?遊作く…」
綾乃が気付いた瞬間には遊作との顔の距離はゼロ距離。動じる訳でもなく、ただ彼の綺麗な翡翠の瞳に魅入られていた
普段は長い前髪で覆っていた右の瞳が突然の光に眩む。距離が離れた頃には何事もなかったかの様に遊作は綾乃から離れ、屋上から出る為に出て行く背中を見せていた
「?…あ」
右側の顔の部位が妙に涼しくて、何だろうと綾乃はその部分に触れて気付く。何の形をしているかは分からないが、自分の長い前髪を右耳の上でまとめる様にしてヘアピンが指されている
いつか──綾乃がパソージェンとなって、現実へ戻って来た時にも彼は男子高校生としては恥ずかしいであろうデパート売り場に赴き、チョコレートを買って来てくれたことがあった
そんな風にしてもらえる程の人物ではないけれど、遊作の好意は嬉しくて──彼と同じく翡翠の瞳を持っていた、あのアバターを思い出した
「椎名、戻ろう」
そうやって何の見返りを求めず、手を差し出してくれる優しさをあの病室にいる頃から知っているが、初めて見たと思われる微笑に彼が一皮むけた事を知る
自分の方へと差し出された手に手を置けば、躊躇いがちに握ってくれる手の強さ、翡翠の瞳──全て最初から綾乃は知っていた、きっと遊作は彼だ
「遊作くん、これからよろしくね」
―ただいま、プレイメーカーさん
「…ああ、よろしく」
―おかえり、クロッシェ
夢を見ていたかの様にぼんやりとする頭を必死に動かす、自分は、自分は──
「綾乃…!」
「……おか、あ、さん…」
「目が覚めたのね…!」
涙ぐむ母はこの密閉された集中治療室に新たな病原菌を運び込まない様、ビニール製の服を身にまとっていた
そこで綾乃はクロッシェとして世界の危機に立ち向かい、リボルバーという巨大な壁の前で砕け散った事を1つ思い出す、もう1つは──
「無事に手術は終わったわ。麻痺は残るかもしれないけど、今よりは歩ける様になるって!」
そう、綾乃はLINK VRAINSへとログインする時に万が一の事を想定して両親へ手紙を残していた。それが2つ目に思い出した大切なことだった
もしも自分が戻ってこれなくなった時は同意書を使って手術へ挑ませてほしい、今まで勝手な事をした事の両親への謝罪をそこに記した。どうやら綾乃の意向はちゃんと汲み取られた様だ
「綾乃」
「おとうさん…」
「……何故、こんな無茶をした!」
「貴方!綾乃はまだ…!」
「たった一人の娘が二度と目覚めないかもしれないと言われ、どんな気持ちだったか分かるか!心配、したんだぞ…!」
目元を腕で抑えながらも涙を隠し切れない父の姿に目尻が熱くなる
あんなにも厳格で、今までこんなに大きな声を使って感情を露わにした事がない父親。どれだけ心配をかけたかが、その涙につまっていた
「ごめん、なさい…ごめん、ね…」
「…もういい、もういいんだ
ゆっくり眠りなさい、明日からリハビリが待ってるんだから…」
入院中に整体師、リハビリテーション科の看護師に筋肉が固まらない様にとマッサージを受けてはいた
それでも微かに麻痺を残した左足で社会復帰するまで時間がかかってしまった
「ごめんね、看護師さんに聞いたよ
遊作くん、私があの病室から他に移った時にも会いに来てくれたんでしょう?」
「…術後の経過はどうなんだ」
「見ての通り、かな?」
教壇でにこやかにクラスメイトとなる生徒達に挨拶する綾乃をひとしきり独占し、今までどうしていたのか、何故連絡をくれなかったのかと質問攻めする葵はあの教室では異様だった
昼休みを利用し、葵が綾乃から離れた隙に遊作は彼女を屋上へと連れ出した。自分だって彼女には聞きたいことが山ほどある、あった筈なのに綾乃を前にすると言葉が出ない
手持ち無沙汰な手をポケットにいれてみると何かが指に触れた。ああ、そうだ、これを綾乃に渡すことを夢見て、自分はずっとここに
「椎名」
「なに?遊作く…」
綾乃が気付いた瞬間には遊作との顔の距離はゼロ距離。動じる訳でもなく、ただ彼の綺麗な翡翠の瞳に魅入られていた
普段は長い前髪で覆っていた右の瞳が突然の光に眩む。距離が離れた頃には何事もなかったかの様に遊作は綾乃から離れ、屋上から出る為に出て行く背中を見せていた
「?…あ」
右側の顔の部位が妙に涼しくて、何だろうと綾乃はその部分に触れて気付く。何の形をしているかは分からないが、自分の長い前髪を右耳の上でまとめる様にしてヘアピンが指されている
いつか──綾乃がパソージェンとなって、現実へ戻って来た時にも彼は男子高校生としては恥ずかしいであろうデパート売り場に赴き、チョコレートを買って来てくれたことがあった
そんな風にしてもらえる程の人物ではないけれど、遊作の好意は嬉しくて──彼と同じく翡翠の瞳を持っていた、あのアバターを思い出した
「椎名、戻ろう」
そうやって何の見返りを求めず、手を差し出してくれる優しさをあの病室にいる頃から知っているが、初めて見たと思われる微笑に彼が一皮むけた事を知る
自分の方へと差し出された手に手を置けば、躊躇いがちに握ってくれる手の強さ、翡翠の瞳──全て最初から綾乃は知っていた、きっと遊作は彼だ
「遊作くん、これからよろしくね」
―ただいま、プレイメーカーさん
「…ああ、よろしく」
―おかえり、クロッシェ
祈った奇跡が色付く瞬間、
(少年は未来を向き直し)
(少女は大地に足をつけた)
(少年は未来を向き直し)
(少女は大地に足をつけた)
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