硝子越しのマリアへ
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「──お前のせいで沢山の決闘者が犠牲になった、俺はこの手で必ずお前を倒す!
ゴーストガール、Go鬼塚と同じ様に犠牲になりながらも、俺に突破口を切り開いてくれた椎名の為にも…!」
―リボルバー、の持ってるカード、は──ミラーフォース…どうか、気を付けて
「椎名…?」
―あの、どうしました…?腕、痛むんですか?
「…まさか……」
データで象られたコンクリート片で出来たLINK VRAINSの全てを吸収し、積み上げられたハノイの塔へデータストームで運ばれるPlaymakerとリボリバー
Playmakerが放った「椎名」という一見すると名前にも聞き間違えそうな名字。それをリボルバーは知っていた、アナザー事件で感染源の被検体のデータで見るよりも前に彼は彼女と
『え、お父様の介護を一人で為さっているんですか?』
『まあ…そういう事になるな。時々、君の主治医の一人が往診には来てくれるんだけど』
『滝先生とはお知り合いで?』
『ああ。父の…知り合いで昔から良くしてくれる女性なんだ』
彼がPlaymakerとの戦いであの忌々しいイグニスに腕を食い千切られた時のフラッシュバックが酷く、ほぼ無意識に響子が務める病院へ来た時に彼女とは出会った
たった一度だけと思われた、その出会いは何故か受診が終わった後も続いた。昼間の患者や見舞客で賑わいはなりを潜めた広い待合室で言う事もないであろう話を彼女に彼は語っていた
『でも介護なんて大変ですよね』
『父を思うと大変さなんて沸かないな、父の方が動く事も出来ずにきっと君の言う大変さを実感している筈だ』
『お父様、きっと辛いでしょうね…
息子さんに自分に介護をさせる事に対して、罪悪感やふがいなさを感じてると思います』
『え…』
『何となく分かるんです、私も家族じゃないけど病院のスタッフさんに助力してもらう時、申し訳ないから
だから、それが家族となると言い表せないくらいの罪悪感があるんだろうなって』
『……』
自分よりも些か年が幼い筈なのに、良く周りの事を気遣っている。これくらいの年の女子高校生ならば、自分の事ばかりで周りを顧みらずに好きな事へ没頭している者ばかりと彼は思っていた
不思議な雰囲気を持つ子だとほぼ無意識にそんな感想を彼は抱いた。多分そんな雰囲気を持つ子だからこそ、自分は自分の境遇、父の状態を話していたのだろう
『椎名さん、そろそろ病室に戻りましょう?』
『あ、はい!長話をしちゃってごめんなさい。えっと…』
『鴻上、鴻上──』
『私は椎名綾乃って言います!お大事に、鴻上くん』
その名前と姿を見たのは二度あった
一度目はアナザー事件で被害拡散し、時間を稼ぐための被験者選びの時
二度目は──先程、この手で少女をデータとして葬った時
「おい、リボルバー!」
「…!それでも、私はもう後戻りはしない」
《突然どうしたんだ?アイツ…》
例え、流星を彷彿とさせるアバターの決闘者があの少女だったとしてもそこで立ち止まる事はリボルバーには許されない
でも何故だろうか、Playmakerが不意にこぼした名前からリボルバーの頭にあの一度だけの出会いで呟いた少女の言葉が浮かんで忘れられない。否、忘れた事などなかった
《了見、お前には何一つ父親らしい事をしてこなかった…寧ろ、お前の人生に苦しみしか与えなかった
お前はそんな私に泣きごとの一つも言わぬ素晴らしい息子だった、だが信じて欲しい。本当はお前を巻き込みたくはなかった》
あの少女の言葉をなぞる様に目の前の父は長年、積み重ねてきた胸の想いを打ち明け、そして──出来得るなら聞きたくもなかったアラートが頭の奥で響き渡った
「あの子は一体、どこに…」
「うっ…」
「遊作!無事だったか…!」
リボルバーの放った相打ち狙いの戦術によって、吹き飛ばされたPlaymakerとリボルバーのアバターはハノイの塔周辺の高密度のデータに耐え切れず、現実へログアウトされた
だがキャンピングカーの中でLINK VRAINSの様子を監視し続けた草薙はまだハノイの塔が停止していない事を強制ログアウトされた遊作へ告げるも、それに慌てふためくのはAiだけだった
「行こう、草薙さん」
「どこへだ?」
「リボルバーの所だ」
「なに?!」
強制ログアウト、そして時間に追い込まれ、もはや体が限界に近い遊作に押されながら、草薙は運転席へと走る
──その目が見ていた液晶にLINK VRAINSだけではなく、空となったある病室の状況を遊作へ伝える事も、その時にはもう忘れていた
全ては遠く、幻想の果てへ
(あの少女との出会いも全て、)
(星屑が作る道の先へ置いて)