TURN-014 割れた鏡の破片が突き刺さる
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アナザー被害者の共通点に旧型決闘盤を使う、決闘とハッキングの才能に秀でた決闘者兼ハッカーだという事に気付いた遊作の脳裏に綾乃―どちらかというとクロッシェの方の姿が浮かんだ
SOLのデータバンクへPlaymakerを助ける為と侵入してきたクロッシェ、その彼女もまたPlaymakerやアナザー被害者と同様の旧型決闘盤を使っていた筈だ
随分と前に感じさせる、葵が昏睡した際に閉ざされたLINK VRAINS。ログイン不可能な領域にハッキングを仕掛け、穴を開けた能力――決闘の才能に特別秀でた訳ではないが、条件には当てはまる
「遊作?」
「すぐに戻ってくる、少し待っててくれ」
「それは構わないが…」
《何々?どうしたっていうんだ?》
不思議そうに椅子から立ち上がった遊作を見上げる草薙とAiに深く事情を説明する訳でもなく、彼はCafé Nagiの店舗として使われるキャンピングカーから飛び出していた
時間は既にギリギリ、今から走っても間に合わない可能性の方が高く、明日にした方がまだいいと分かっていても、遊作の足は止まる事はなかった
久し振りに自分の面会へ来てくれた葵を見送り、夕食までの空白の時間を埋めようと編みかけのコースターに編み棒を通して、複雑でありながら、綾乃は繊細な模様を編んでいく
LINK VRAINSでの決闘という未知の体験を知るまで、没頭していた編み物の趣味は綾乃にとっては長年の友達の様なもので、長期入院の現状でも付き合ってもらっている
初めて編んだのは今よりも歪な模様のコースターだったな、と懐かしい思い出に微笑をこぼしていると扉の外に真新しい人の気配を感じた。機械の稼働音は聞こえなかった、夕飯ではない様だ
「えっと…誰か、そこにいるんですか?」
「俺だ」
「遊作くん?」
扉の外で声をかける事を躊躇っていたとしても、誰かも分からないのに声をかけるのは危険だ。中の人物がどんな人間か知らないのにPlaymakerに恋をしているクロッシェの危うさはここにあるのだろう
出来るなら綾乃がいない事を祈っていたが、在室しているのなら仕方ない。寧ろ在室していたのは、遊作がハッカー兼泥棒にならないで済んだので幸運だともいえる
面会時間ギリギリになって現れた遊作にも嫌な顔一つしない綾乃、その顔が遊作が起こした次のアクションーサイドテーブルに置かれた、彼女の決闘盤を奪った事で驚愕の色に変化した
「ゆ、遊作くん?あの…それ、私の決闘盤…なんだけど…何で持っていこうとするの?え?え?」
「アンタの意見は聞いていない、デッキは渡しておく」
「あ、ありがとう?」
自分の物ではないというのに決闘盤から慣れた手つきで綾乃のデッキを取り外し、それを彼女に渡すと遊作は踵を返していった。――綾乃の決闘盤と共に
暫く裸のデッキを胸に抱いていた綾乃が我を取り戻したのは、遊作と入れ替わりに入って来た配膳ロボの無機質な夕食の時間を告げる音声が耳に入った頃だった
「……さ…?椎名さん?」
「!あ、先生…」
「どうかした?何だか暗い顔をしている様だけど」
「え…」
目の前にはいつの間にか、病室へ入って来ていた女医の顔。葵が昏睡状態に陥っていた時に彼女を診ていた医師の一人だと綾乃は記憶している
どうやら医師から見て分かるくらいに、自分は暗い顔をしていた様だ。だが何の理由もなく、遊作があんな暴挙に出る筈はないと綾乃は信じている。だから、彼の名前に泥を塗る様な真似はしたくなかった
「…少し、私の決闘盤に異常が見つかっちゃって
今、メンテナンスに出しているんですけど、その間、決闘が出来ない事が残念だなって」
「あら、それならそうと言ってくれれば良かったのに」
「え?」
「お古だけど、私が昔、使っていた決闘盤を貸してあげるわ。お古と言っても、AIも搭載されているし、使いやすい筈よ
これは一人の患者に対して、特別扱いになるから…他の人には秘密ね」
この病院に少ない数しか置かれていない医療用VRマシンを使わせてもらっているだけでなく、プライベートで新型の決闘盤を貸し出してもらう事に綾乃は悩む
女医の言葉に少々間を置き、綾乃はお願いしますと頭を下げた。綾乃が下ろした視線の上で柔らかく微笑んでいた女の表情が変化していた事にも、彼女は気付かずに
「デッキデータ読み込み完了、後は《アタラクシア》に繋げて…」
翌朝、他の医師達に見つかる前にと、女医が持ってきてくれた決闘盤に昨夜の消灯時間後の時間を用いて作った、自身の【エフロエンス】デッキのリストを転送する
まだ早朝の種類に入る時間帯で、しかも今日は平日。幾ら女医に「ちゃんと動くか、LINK VRAINSで試してみて」と言われても早すぎるだろうと思われる時間
この新型の決闘盤を使うのは初めてである綾乃は、科学者が新しい数式を生み出した時の様にそれを試してみたくて仕方ないのだ
「IN TO THE VRAINS.」
眠りへ緩やかに落ちる様にゆっくりと自分の意識がVR空間へ向かっていく間、自分の姿が全く違うものへ書き換わっていく感覚。それは刹那の様な、永遠の様な時間
次にクロッシェとして目を覚ました綾乃は目を疑った、常時明るいテクスチャを用いられている筈のLINK VRAINSの世界がまるで、海底を彷彿させる仄暗さで彼女を出迎えたからだ
ログインした場所から辺りを見回し、ここがLINK VRAINSと同じVR空間にある建物の中である事が分かった。取り合えず、ここから外へ出ようとクロッシェが一歩、足を踏み出した時にそれは起こった
SOLのデータバンクへPlaymakerを助ける為と侵入してきたクロッシェ、その彼女もまたPlaymakerやアナザー被害者と同様の旧型決闘盤を使っていた筈だ
随分と前に感じさせる、葵が昏睡した際に閉ざされたLINK VRAINS。ログイン不可能な領域にハッキングを仕掛け、穴を開けた能力――決闘の才能に特別秀でた訳ではないが、条件には当てはまる
「遊作?」
「すぐに戻ってくる、少し待っててくれ」
「それは構わないが…」
《何々?どうしたっていうんだ?》
不思議そうに椅子から立ち上がった遊作を見上げる草薙とAiに深く事情を説明する訳でもなく、彼はCafé Nagiの店舗として使われるキャンピングカーから飛び出していた
時間は既にギリギリ、今から走っても間に合わない可能性の方が高く、明日にした方がまだいいと分かっていても、遊作の足は止まる事はなかった
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久し振りに自分の面会へ来てくれた葵を見送り、夕食までの空白の時間を埋めようと編みかけのコースターに編み棒を通して、複雑でありながら、綾乃は繊細な模様を編んでいく
LINK VRAINSでの決闘という未知の体験を知るまで、没頭していた編み物の趣味は綾乃にとっては長年の友達の様なもので、長期入院の現状でも付き合ってもらっている
初めて編んだのは今よりも歪な模様のコースターだったな、と懐かしい思い出に微笑をこぼしていると扉の外に真新しい人の気配を感じた。機械の稼働音は聞こえなかった、夕飯ではない様だ
「えっと…誰か、そこにいるんですか?」
「俺だ」
「遊作くん?」
扉の外で声をかける事を躊躇っていたとしても、誰かも分からないのに声をかけるのは危険だ。中の人物がどんな人間か知らないのにPlaymakerに恋をしているクロッシェの危うさはここにあるのだろう
出来るなら綾乃がいない事を祈っていたが、在室しているのなら仕方ない。寧ろ在室していたのは、遊作がハッカー兼泥棒にならないで済んだので幸運だともいえる
面会時間ギリギリになって現れた遊作にも嫌な顔一つしない綾乃、その顔が遊作が起こした次のアクションーサイドテーブルに置かれた、彼女の決闘盤を奪った事で驚愕の色に変化した
「ゆ、遊作くん?あの…それ、私の決闘盤…なんだけど…何で持っていこうとするの?え?え?」
「アンタの意見は聞いていない、デッキは渡しておく」
「あ、ありがとう?」
自分の物ではないというのに決闘盤から慣れた手つきで綾乃のデッキを取り外し、それを彼女に渡すと遊作は踵を返していった。――綾乃の決闘盤と共に
暫く裸のデッキを胸に抱いていた綾乃が我を取り戻したのは、遊作と入れ替わりに入って来た配膳ロボの無機質な夕食の時間を告げる音声が耳に入った頃だった
「……さ…?椎名さん?」
「!あ、先生…」
「どうかした?何だか暗い顔をしている様だけど」
「え…」
目の前にはいつの間にか、病室へ入って来ていた女医の顔。葵が昏睡状態に陥っていた時に彼女を診ていた医師の一人だと綾乃は記憶している
どうやら医師から見て分かるくらいに、自分は暗い顔をしていた様だ。だが何の理由もなく、遊作があんな暴挙に出る筈はないと綾乃は信じている。だから、彼の名前に泥を塗る様な真似はしたくなかった
「…少し、私の決闘盤に異常が見つかっちゃって
今、メンテナンスに出しているんですけど、その間、決闘が出来ない事が残念だなって」
「あら、それならそうと言ってくれれば良かったのに」
「え?」
「お古だけど、私が昔、使っていた決闘盤を貸してあげるわ。お古と言っても、AIも搭載されているし、使いやすい筈よ
これは一人の患者に対して、特別扱いになるから…他の人には秘密ね」
この病院に少ない数しか置かれていない医療用VRマシンを使わせてもらっているだけでなく、プライベートで新型の決闘盤を貸し出してもらう事に綾乃は悩む
女医の言葉に少々間を置き、綾乃はお願いしますと頭を下げた。綾乃が下ろした視線の上で柔らかく微笑んでいた女の表情が変化していた事にも、彼女は気付かずに
「デッキデータ読み込み完了、後は《アタラクシア》に繋げて…」
翌朝、他の医師達に見つかる前にと、女医が持ってきてくれた決闘盤に昨夜の消灯時間後の時間を用いて作った、自身の【エフロエンス】デッキのリストを転送する
まだ早朝の種類に入る時間帯で、しかも今日は平日。幾ら女医に「ちゃんと動くか、LINK VRAINSで試してみて」と言われても早すぎるだろうと思われる時間
この新型の決闘盤を使うのは初めてである綾乃は、科学者が新しい数式を生み出した時の様にそれを試してみたくて仕方ないのだ
「IN TO THE VRAINS.」
眠りへ緩やかに落ちる様にゆっくりと自分の意識がVR空間へ向かっていく間、自分の姿が全く違うものへ書き換わっていく感覚。それは刹那の様な、永遠の様な時間
次にクロッシェとして目を覚ました綾乃は目を疑った、常時明るいテクスチャを用いられている筈のLINK VRAINSの世界がまるで、海底を彷彿させる仄暗さで彼女を出迎えたからだ
ログインした場所から辺りを見回し、ここがLINK VRAINSと同じVR空間にある建物の中である事が分かった。取り合えず、ここから外へ出ようとクロッシェが一歩、足を踏み出した時にそれは起こった