硝子越しのマリアへ
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くぁっと客がまばらなのを良い事に噛み殺そうともせず、大きな欠伸をした草薙は最早、手慣れた様子でホットドッグのソーセージを鉄板で焼いている
数日前にSOLのデータバンクからロスト事件―ハノイプロジェクトのデータを遊作が入手してから、そのデータの解析でまともに眠れていない日が続いた。だがそれは遊作も同じ事だろう
今日はその遊作を連れ、有る場所に向かう手筈になっている。これがお互いにとってのいい息抜きになればいいのだが――
―あれは…
昼時を過ぎ、ホットドッグを求めてやって来る客にも終わりが見えてきたその時、現れた少女の姿に草薙の目が奪われた
目の前から高性能のセンサーで歩く人を避け、自動的に目的地まで主人を届ける電動車椅子に乗った少女、その少女は草薙の視線に気が付くと柔らかく瞳を綻ばせた
「こんにちは、ホットドッグ1つ頂けますか?」
「お待ちどうさま、ホットドッグ1つだな?」
「ありがとうございます、ここのお店はお兄さんがお一人で?」
「ああ。そういうお嬢さんは…あそこの病院から来たのか?」
「久しぶりに外出許可証を頂けたので…前からこちらのお店に来てみたかったんです」
「それは光栄だな、うちのホットドッグは美味いぞ~」
はい、と草薙の言葉へ嬉しそうに微笑む綾乃がホットドッグを口に含む様子を、店仕舞いを終え、待ち人が来るのを待つ草薙もその横の椅子に座って眺める
まさか、この少女があのクロッシェと名乗る、Playmakerの追っかけだなんて、誰が思うだろう。草薙自身も遊作に頼まれるまでは思いもしなかった。あの時、彼女がクロッシェだと伝えた遊作と言ったら…
『遊作、調べものの件なんだがな…』
『……』
『お前の思ってた通りだ、クロッシェは椎名綾乃という患者が使ってるアバターだ』
『…間違いないのか』
『あのアバターは特殊でな、神経がマヒしている患者なんかが使う、リハビリ用VRマシン《アタラクシア》から出力されている
医者が持ってる《アタラクシア》の使用履歴をハッキングしたんだが、綾乃という女の子しか今は使われてなかった』
『そう、か…』
草薙からの返答を受けた遊作は身を乗り出す様にキーボードへ肘をついた、大きなため息も一緒だ
『だ、大丈夫か?遊作』
『…きって』
『ん?』
『大好き、って言われたんだ、アイツ……クロッシェの方から
いつものとぼけたテンションで言われたなら、何か言えたのにあんな…真剣に虚構の姿でしかないプレイメーカーを、大好きだと』
そこまで一息に言った遊作は一呼吸置く様についた、ため息は先程のものよりも更に大きく。人生を復讐に捧げる事を決めた、だと言うのに――
好意を寄せられても、突き放してきた遊作へしつこく食いつくクロッシェの言葉があまりにもストレート過ぎて、その想いが本物なのだと認識せざるを得ない。自分は応えられないというのに、彼女は何故、
「悪い、遅くなっ…」
「あ…」
「おう、遊作」
草薙がクロッシェ=綾乃だと知った時の遊作を思い返していると、彼本人が学校帰りの待ち合わせ場所―綾乃が入院する病院前に置いたCafé Nagiにやって来てしまった
綾乃を見つけ、固まってしまった遊作の心中を草薙は手に取る様に理解する。大方、何故この店に彼女が、とか、この間のクロッシェからの告白がフラッシュバックしているに違いない
「こいつは藤木遊作。俺の相棒でな、良ければ仲良くしてやってくれないか」
「草薙さん、何を」
「藤木…遊作くん。やっと名前を教えてくれたね」
「何だ、まだ自己紹介もしてなかったのか、遊作。だめだろ~?」
「アンタ、楽しんでるだろ…」
くだらない、そう笑ったのは僕
(そう言っていた僕へ)
(君から跳ね返る)
(愛の言霊)
「あ、私の名前…」
「……もう知ってる、椎名」
.
数日前にSOLのデータバンクからロスト事件―ハノイプロジェクトのデータを遊作が入手してから、そのデータの解析でまともに眠れていない日が続いた。だがそれは遊作も同じ事だろう
今日はその遊作を連れ、有る場所に向かう手筈になっている。これがお互いにとってのいい息抜きになればいいのだが――
―あれは…
昼時を過ぎ、ホットドッグを求めてやって来る客にも終わりが見えてきたその時、現れた少女の姿に草薙の目が奪われた
目の前から高性能のセンサーで歩く人を避け、自動的に目的地まで主人を届ける電動車椅子に乗った少女、その少女は草薙の視線に気が付くと柔らかく瞳を綻ばせた
「こんにちは、ホットドッグ1つ頂けますか?」
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「お待ちどうさま、ホットドッグ1つだな?」
「ありがとうございます、ここのお店はお兄さんがお一人で?」
「ああ。そういうお嬢さんは…あそこの病院から来たのか?」
「久しぶりに外出許可証を頂けたので…前からこちらのお店に来てみたかったんです」
「それは光栄だな、うちのホットドッグは美味いぞ~」
はい、と草薙の言葉へ嬉しそうに微笑む綾乃がホットドッグを口に含む様子を、店仕舞いを終え、待ち人が来るのを待つ草薙もその横の椅子に座って眺める
まさか、この少女があのクロッシェと名乗る、Playmakerの追っかけだなんて、誰が思うだろう。草薙自身も遊作に頼まれるまでは思いもしなかった。あの時、彼女がクロッシェだと伝えた遊作と言ったら…
『遊作、調べものの件なんだがな…』
『……』
『お前の思ってた通りだ、クロッシェは椎名綾乃という患者が使ってるアバターだ』
『…間違いないのか』
『あのアバターは特殊でな、神経がマヒしている患者なんかが使う、リハビリ用VRマシン《アタラクシア》から出力されている
医者が持ってる《アタラクシア》の使用履歴をハッキングしたんだが、綾乃という女の子しか今は使われてなかった』
『そう、か…』
草薙からの返答を受けた遊作は身を乗り出す様にキーボードへ肘をついた、大きなため息も一緒だ
『だ、大丈夫か?遊作』
『…きって』
『ん?』
『大好き、って言われたんだ、アイツ……クロッシェの方から
いつものとぼけたテンションで言われたなら、何か言えたのにあんな…真剣に虚構の姿でしかないプレイメーカーを、大好きだと』
そこまで一息に言った遊作は一呼吸置く様についた、ため息は先程のものよりも更に大きく。人生を復讐に捧げる事を決めた、だと言うのに――
好意を寄せられても、突き放してきた遊作へしつこく食いつくクロッシェの言葉があまりにもストレート過ぎて、その想いが本物なのだと認識せざるを得ない。自分は応えられないというのに、彼女は何故、
「悪い、遅くなっ…」
「あ…」
「おう、遊作」
草薙がクロッシェ=綾乃だと知った時の遊作を思い返していると、彼本人が学校帰りの待ち合わせ場所―綾乃が入院する病院前に置いたCafé Nagiにやって来てしまった
綾乃を見つけ、固まってしまった遊作の心中を草薙は手に取る様に理解する。大方、何故この店に彼女が、とか、この間のクロッシェからの告白がフラッシュバックしているに違いない
「こいつは藤木遊作。俺の相棒でな、良ければ仲良くしてやってくれないか」
「草薙さん、何を」
「藤木…遊作くん。やっと名前を教えてくれたね」
「何だ、まだ自己紹介もしてなかったのか、遊作。だめだろ~?」
「アンタ、楽しんでるだろ…」
くだらない、そう笑ったのは僕
(そう言っていた僕へ)
(君から跳ね返る)
(愛の言霊)
「あ、私の名前…」
「……もう知ってる、椎名」
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