TURN-012 正義を貫く為にある怨嗟
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「プレイメーカーさんが行った先にあったのは、この道だけでした
道なりに沿って行けば、ゴールのデータバンクに到達する筈です」
「まったく、借りを返しに来ただけだけど、先に行くとかの一言か何かあってもいいと思わない?
ねえ、クロッシェ?貴女、本当にアイツでいいの?もっといい人とか、貴女だったらいると思うんだけど…あ、お兄様はだめよ!」
「ふふ、葵ちゃんから晃さんを取ろうだなんて思ってないから安心して?」
Playmakerが辿ったと思われる道を予測し、ブルーエンジェルもとい葵の舵を取るクロッシェの笑顔は綾乃そのものだ
綾乃の笑顔は昔から、見ているだけで波打つ感情を穏やかにする力を持っている、簡単に言うと彼女の笑顔を見る事で安心しているのだろうか。それが仮想現実の中でも健在な事に安堵する
だからこそ、時々、葵は不安になる。綾乃という存在が彼女の作ったアバター・クロッシェと同一のものになってしまうのではと。そうなったら、残るのはどちらなのか
「ここが…SOLテクノロジー社のデータバンク、プレイメーカーさんはどこに…」
「!隠れて」
「ブルーエンジェルさん?」
前方から射し込む光の中には、Playmakerが向かったとされるデータバンクらしきエリア。ここに自分達よりも先に辿り着いている筈のPlaymakerの姿は入り口付近に見られない
もっと奥だろうか、とエリアの最深部に向かおうとするクロッシェを引き止めたブルーエンジェル。彼女はクロッシェよりも先に何かに気付き、それに見つからない様にと物陰に隠れてしまった
対岸の物陰からデータバンク内を盗み見るクロッシェ。その視線の先には探していたPlaymakerだけでなく、何故か葵の兄である晃と以前、自分にゴーストガールと名乗り、接触してきた女性がいた
「お兄様?何故、こんな所に…」
「財前、ゴーストガール。何故、お前達がここにいる?俺を待ち伏せしていたのか?」
「ん~、ちょっと違うかな」
SOLテクノロジー社のデータに興味があったのは、Playmakerだけではないのだと説明するゴーストガールとその彼女の雇人である晃自身がここのデータに興味があったのだという
だがSOLのセキュリティは厳重で、自分達だけではここまで辿り着けるか不安が残る――そこで自分達がここへ到着するまでの囮としてPlaymakerを利用した、という事らしい
「そこを退け、財前」
「ここから先に君を行かせるわけにはいかない」
「お前はそこに何が記録されているのか、それを知っているのか?」
「私も先程、初めて知った」
Playmakerから晃への問いかけはその会話を盗み聞きしているクロッシェにも投げかけられている様に感じた、勿論Playmakerはここに彼女がいるのなんて気付いていないから、それは錯覚だ
ここに危険を冒してまで来たのは、Playmakerに借りを返しにいくというブルーエンジェルの言葉に彼の危機を察知したから。ここに何があり、それを何故Playmakerが欲しがるのかまでは分かっていない
「10年前にSOLテクノロジー社で何があったのか、そして君に何が起こったのか」
まただ、とクロッシェは反射的に思った。また「10年前」というキーワードが自分の目の前に現れた
「10年前」というキーワードからクロッシェが連想する限りでは、その年代はPlaymakerというハノイの騎士に対する復讐者が生まれた分岐点だと認識している
ハノイの騎士によって、「10年前」にPlaymakerは彼自身の過去を奪われたと言っていた。だからその言葉を信頼していたが――事実は違った?
「それが分かっているのなら、そのデータを渡してくれ」
「それは出来ない」
情報を渡す事を拒む晃の表情はSOLのセキュリティ部長として、ハッカーであるPlaymakerを捕まえようという顔には見えない。逆にまるで自分よりも幼い人間を相手に諭す様な口調だ
晃はPlaymakerの持つAIを自分へ渡してくれる様に願い、ここを退却し、代わりに自分が10年前の事件の真相を追求してみせる、という約束まで提示してきた
PlaymakerとそのAIを追っていた晃からの取引にしてはPlaymaker側に配慮され過ぎている。だが葵が昏睡した一件から、SOLのセキュリティ部長という地位ある立場から晃が失脚している、それを聞いて合点がいった
その話を聞く事になったブルーエンジェルへクロッシェが視線を投げると彼女はやはり自分のせいだと分かっている様子で、かと言って、その事実から逃げる訳でもなくその話に向き合っていた
「どんな理由があろうと、この事件を他人に任せるつもりはない
1つ―この事件の真実は俺自身の手で突き止める。2つ―お前には関わりのないことだ。3つ―それでも関わるというのなら、俺を従える方法は分かっている筈だ」
「決闘か?」
「そうだ。お前が勝てば、お前の要求は全てのむ。俺はお前を信じ、このAIを置いて、姿を消す」
《え~?!》
「だが俺が勝ったら、お前達はここを立ち去れ」
「決闘しか、君を止める方法はなさそうだな…よかろう、ここで君に決闘を挑む」
「受けて立つ」
決闘の形式はスピードデュエルではなく、対リボルバーの時と同じマスターデュエル。晃は【ティンタングル】と呼ばれるテーマのデッキを駆使、このデッキはどうやらリバーステーマの様だ
先にフィールドへセットされた《ティンタングル・エンジェル》は葵を、《ティンタングル・ハウンド》はその葵を守るかの様にコンボで蘇り続ける晃、彼のデッキは財前兄妹の在り方そのもの
「プレイメーカー、恐らく君は葵や…その親友と同じくらいの歳なんだろう?」
「え…?」
「きっとそうなんだな」
決闘を申し込み、引き返す事は出来ないと言っても晃はまだPlaymakerを説得しようと試み続けた。きっと彼―Playmakerのリアルが葵や綾乃と同年代だと仮説を立てているからだろう
10年前にPlaymakerが過去を失ったというのなら、晃と葵は両親の結婚記念日にその両親を不慮の事故で亡くした。それからずっと、どんなに汚い裏仕事で手を汚しながらも晃は葵を守り続けてきた
二人の過去をクロッシェは知らない、彼らと出会ったのは晃がSOLに入ってから。異例のスピードで出社していく姿を気に入った両親が晃の妹と同い年の娘がいる、という話で接点を作ったのだ
利用されているか、晃が椎名夫妻を見極める時間は長かった。実際に綾乃が財前兄妹に会ったのはそれから暫くしてのこと。晃は心配していた様だが、幼い少女達は直ぐに打ち解けた
「もし葵が君のような目に遭ったなら、誰かも分からない人間に攫われたとしたら、私の精神はどうにかなってしまったに違いない
もう一度だけ、頼む!私を信じ、全てを任せてくれ!」
その言葉でクロッシェは確信する。晃はPlaymakerに葵を重ねている、と
同じ年齢である筈の彼に復讐を止め、普通の学生に戻って欲しいと晃は思っている。それは純粋に未成年であるPlaymakerを思っての言葉、意思だった。――けれど
「アンタに俺の、」
けれど、その言葉は
「何が分かるというんだ!!」
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