TURN-040 描いた未来図に叶う事のない夢を透かす
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―…おやおや…こんな所まで聖女ごっこをしに来るとは…呆れた性分、ですねぇ
彼の意識が砕けた体と共に残っていれば、聞こえてきそうな程にその登場は突飛なものであった
妖精の加護を受けた翼は彼女の着地と共に砕け、空中へ飛散する。それが意味する所は──この少女は自身が飛び込んだ渦中に静けさを取り戻すまで、現実へ帰還する方法を失ったということだ
「その人のデータを返してください、と言った所で聞いてはもらえないのでしょうね」
《その通りだ、これにはまだ使い道がある様だからな》
「なら」
《クロッシェ、君にとってはこのデータであった男は別段味方という訳ではない筈だ
それなのに何故、私に立ち向かってでも取り戻そうとする?》
中継が結ばれた映像の中、ライトニングと静かに対峙するクロッシェの返答へPlaymaker達の注目が集まる
この光景が映像と各地に結ばれている事を知ってか否か光のイグニスと対峙する少女の笑みに、かつてハノイの塔でライトニングの立ち位置にいたリボルバーは懐かしい既視感を覚えた
「その人にはまだ、ブルーエンジェルさんの事で謝ってもらってないですから」
《君がそう言うならば、相手を買ってやりたい所だがここまで飛んできた褒美だ
この先で待つ方との決闘で勝利できたのなら、このデータを無事に返そう》
「……」
《何を考えているんだ?クロッシェ、まさか怖気づいたとでも?》
「…いいえ、喜んでお招きを受けましょう」
目の前でぽっかりと口を開いたゲートの先、果てしなく続く闇は明ける事のない夜空の様でライトニングの言葉を否定しながら、クロッシェは密かに抱いた感情へ蓋をする為に口を一文字に結ぶ
たった1度切りの飛翔の為に作った翼は失った、ここから先は正真正銘の引き返す道のない一本道なのだ。一歩足を踏み出した所で、現実へ引き留められる様にクロッシェの瞳が中継先の彼らを見た
「あの人達と少し話をさせてくれませんか?」
《ああ、勝手にするといい。私は次があるのでね》
それだけを言い残し、ライトニングと彼に意識を奪われたままの空蝉である仁はクロッシェの前から消え去ってしまった
一瞬だけ解放された安堵感からこぼれたため息に気付きながら、クロッシェはこのミラーLINK VRAINSの各地と中継を結んでいるカメラマンへと足を延ばした
「助けて~!助けてくださいっ!」
「オイバカ!女の子に情けなく頼む奴があるか!」
「だって先輩~!」
「えっと…確かリボルバーさん達に連れていかれていた人…人?ですよね?捕まったんですか?」
「そう!そうなんですよ!見知らぬ方!」
「だから止めろって!」
どうやらカエルと鳩のアバターを持った彼らは、このミラーLINK VRAINSへPlaymaker達が突入すると同時に見放された所をライトニング達の網へ捕まった者と予想できる
正直、彼らを助ける手段まではクロッシェは考えていなかった、この世界が崩壊すれば自動的に助かるもの程度にしか考えていなかったのだ。実質、彼女のその予想で正しい筈だ
けれど──目の前でこの戦いに巻き込まれた彼らの存在も、投げかけられた救いを求める声に背を向けて先へ進む選択が出来る程、クロッシェの精神構造は残酷には出来ていなかった
「これをどうぞ」
「え?これは?」
「一応、緊急脱出用のプログラムです。急ごしらえのものなのでプログラムは雑ですが…使ってください」
「やったー!これで帰れますよ!ねっ!先輩!」
「いや、だがこれを俺達へ渡した君はどうするんだ…?」
「私にはやる事が残ってますから」
そう、先へと続く為の道は今もなおクロッシェを飲み込まんと口を開いたままでいる
先へ進む道が敵であるライトニングによって敷かれたレールである事に不服がないとは言わないが、最終的に戦わなければならない存在への近道なら乗ってみるのも手だろう
「なら!俺達もここに残る!」
「えー?!先輩、何言っちゃってるんですか?!帰る事が出来るんスよー?!」
「うっせー!ジャーナリストの一人として、ここで起こってる事を伝えずに帰れっかよ!でも、このプログラムは万が一の時の為に貰っておこううん」
「先輩…」
ちゃっかりとクロッシェが彼らへ譲渡する為に展開されたプログラムを入手し、どこか安堵したかの様に笑みを弾けるカエルに鳩のアバターが呆れ顔を浮かべている
ある意味での戦場カメラマンとなったというのにそれでも笑顔を、そして何よりもジャーナリズムという誇りを失わずにいる彼らにクロッシェもそのちゃっかりに乗っかってみたくなった
「そのプログラムを譲渡する見返りと言っては何なのですが…」
「お金なら無理っスよ!今月も給料前借で…」
「どうか、プレイメーカーさんの事で正しい報道を…あの人は賞金首に晒される様な決闘者ではないと皆に知らしめてほしいんです」
「──任せろ!」
どこの誰かも知らない戦場カメラマンだけれどその笑顔はどこか頼もしく、信頼してもいいかと心を軽やかにするには十分だった
最初にこの事件へ飛び込んだ理由を諦めきれなかった弱さはここで置いていこう、こんなちっぽけな存在だけどそれでもこの2人にはPlaymakerの誤解を解く事が出来た、これが精いっぱいなのだろう
「クロッシェ…ッ!」
《ブルーメイデン?いかがするおつもりなのですか?》
「決まってるわ!あの子がボーマンと決闘している場所を探すの!手当たり次第に当たれば…」
《落ち着いてください、ブルーメイデン!》
「でも!」
《貴女が言ったのです!クロッシェ…綾乃の事を誰よりも信じると、共に戦える様な関係になると》
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