TURN-037 束縛する、胸の痛み
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「こちらにいらっしゃるのは珍しいですね、椎名さん」
「財前君か、今までは止めていたんだがね」
「綾乃さんの為にですか?」
SOLテクノロジーのオフィスの一角に設けられた喫煙室、そこで目的の人物-綾乃の父親と出会った晃
初めて見たとも言える一臣の姿に驚きはしたが、最愛ともいえる娘が家出しているのだ。心配症である彼の妻 浅葱を前に自分が情けない顔をする訳にはとここで重い感情を煙として吐き出しているのだろう
批難している訳ではないが物珍しさで見つめていると吸い始めと思わしき煙草を彼は消してしまった。すいませんという晃の言葉に一臣はいつも皺が寄る眉間を和らげて苦笑をこぼした
「あの子に言われて気付いた。最近家で笑っていない事も、家族3人で食事を取る機会も作らずにクイーンから与えられる仕事にだけ没頭していた」
「椎名さん、綾乃さんも私の妹ももう小さな子供ではない
いつの間にか私達の手を離れ、自分で成長していく…その成長に私は驚いてばかりですよ」
「そうだな…綾乃があんな風に自分の意見を主張するなんて、これが初めてだ。…こんなに小さかったというのに」
そう言って一臣がパスケースから取り出したものに、今度は晃が目尻を和らげる番だった
パスケースに大切に仕舞われていた色あせた写真には小さな綾乃の笑顔が映り込み、一緒に閉じられた手紙は子供の幼い文字と子供が描いたクレヨンの絵が記されていた様に見えた
「…ん?」
「噂をすれば、ですね」
思い出に浸る中、大切な記憶の中から引っ張り出された相手の名前が携帯の液晶画面に表示される
どうやら電話ではなくメールを知らせるバイブレーションにあの子らしい気遣いだとこぼした一臣の表情は、ここ数週間で見た中で穏やかなものだった
「こちらで待つ様にと椎名さんが」
「ありがとうございます」
長机に沢山の椅子を見るに会議室に通された様だと綾乃は客として招かれた際に出た珈琲を口に含む。温かい珈琲だが緊張もしているのか、Café Nagiで飲むものの方がおいしいと思う味わいだ
これから始まるライトニングとの戦いは決して両親と関係ない話ではない。また子供の戯言と一笑されるかもしれない、それでもPlaymaker達と行動する中で父とちゃんと話し合う必要があると思ったのだ
学校帰り、遊作や尊に無理を言ってこうして押しかけてしまったが──流石に父の在籍する部署には娘としても通されなかった、何かアースの情報でも掴めないかと思ったのだが
「……くぁ、ぁ」
―昨日、緊張してあんまり寝れなかったからかな…
「何だか…ねむ…い…」
白く霞んでいく視界はLINK VRAINSの世界へクロッシェとして旅立つ際の浮遊感に良く似ている
ここはアースを解体した本拠地、眠ってはいけない、そう思いながら綾乃はついぞ自分が口にした紙コップの底に沈殿していた薬に気付く事無く意識を手放してしまったのだった
「…ふん、陳腐な真似をする」
Playmakerに勝つ為にAIとの同化を受け入れた、煌びやかな世界にも別れを告げてGo鬼塚はかつての姿からかけ離れた存在としてLINK VRAINSに立っていた
今一度、失われたプライドを取り戻す為にはPlaymakerに勝つしか残されていない、その為ならSOLの犬にだって成り下がる。もう周りからの評価など、周りの人間など彼はどうでも良かったのかもしれない
「俺にはもう関係のない事だ」
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