TURN-032 薄氷の夢は春に目覚める
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「やっぱり強いな、ファルシュは」
「…いいえ、今日はただ運がよかっただけで…」
「運に愛される事も決闘者として重要な事だろ?君はやっぱりプレイメーカー達と同じく、俺の憧れだよ」
「────」
負けたにも関わらず、まっすぐに対戦者の勝利を讃えるSoulburnerの言葉
その時にファルシュの想いは固まったのかもしれない
《我々は決闘に負けた、約束通りに君は君の自由にするといい》
「………私の好きにしていいんですよね、なら……私は、貴方達の味方となります」
「!」
《む…!これは…想定外の出来事だ…》
「そんなに驚く様な事でしょうか。今まで中立と言いながら、貴方達にばかり肩入れしてきましたよ?」
「まあ、それが分かってたから決闘を申し込んだんだけどさ…」
そこまであっさりと味方側になると決めたファルシュの言葉に納得できない、というよりも本当に想定外な事でSoulburnerは言葉が見つからない様子
けれどファルシュ自身は彼との決闘、言葉で決めてしまったのだ。Soulburnerを言い訳にする事なく、自分の本心を憧れてきた聖女達の様に貫き、その先の未来を見てみたいと
「どうせなら、最後まで貫き通してみたいんです
何もかも中途半端な私だけど、あの人の傍にいる事であの人に何の咎がない事を知らしめる為にここに立ち続けてみせたいんです
それでブルーガールさんに嫌われてもいい、その時はまた最初から友達になってと手を伸ばし続けてみせます!だって私──ブルーガールさんの事も大好きなんですから!」
―そう、それが私の原点
もう言い訳なんてしない、葵ちゃんや遊作くんが大切という思いに嘘をつきたくない
「…そっか」
雨で濡れ続けた心に1つの灯りが灯る。まだまだ小さくて風が起きれば消えてしまいそうな程にか弱いけれど、濡れた心を温めるには十分だ
そこには痛々しいファルシュはいない、ここに帰ってきたのは流星が燃え尽き、新たな命を呼び起こす際の一際大きな輝きを持ったファルシュの笑顔がいた
「ファルシュ、このエリアにイグニスが目撃されたみたいなんだ。一緒に探してくれないか」
「ええ、お任せを!」
《彼女、いい顔になったな》
「ああ。あれが本来のファルシュ…いや、クロッシェなんだろうな」
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ブルーガールと合流した目先で優勢であったアースがたった1度のターンでアクアを思う心を砕かれた、SOLのバウンティハンター・Go鬼塚の手によって
心を砕かれ、放心するアースがGo鬼塚に回収される場面を同じく放心し見届けるしかなかったPlaymakerは後方から接近するDボードの存在に気付いた事で我に返り、咄嗟にその腕を引き留めた
「っ…離してください!このままじゃ、アースさんが!」
「ファルシュ、落ち着いて!」
「無駄だ!あそこから助け出すには奴に直談判するしかない」
「鬼塚、さん…」
隆々とした筋肉を全て失い、痩せこけた男性をファルシュは一瞬Go鬼塚と認識できなかった
横でPlaymakerとの再戦を望む彼へブルーガールが決闘を願い出たが、鬼塚側に何か問題が発生したらしくそれは叶わずに鬼塚は回収したアースを手にログアウトしていった
あんな形でアースをみすみすSOLへと回収されてしまった中、Playmakerが最初にエリアを脱出。続けてログアウトしようとしたファルシュの腕をきつめに今度は彼女が引き留めた
ブルーエンジェルではなく、所々に現実の葵の要素が含まれたブルーガールの瞳に罪悪感で背けそうになる。だがSoulburnerとの決闘で答えを得たファルシュはブルーガールと視線を交え続けた
「…貴女のメッセージボックスにメッセージを送ったわ」
「え?」
「どうせ、慌ててスマホも忘れてきたんでしょ?」
久しぶりに彼女と交わした言葉は綾乃のドジっぷりを指摘する、呆れた笑顔で発せられた
「来たのね、綾乃」
「学校を休んでいるのに外出する事は、ちょっと緊張したけれど…葵ちゃんのお願いだから」
「こっちよ」
あの後、すぐにログアウトした綾乃はアカウントに入ってあった葵からのメッセージを開き、そこに指定されていた場所へ赴いた
Den cityの郊外に存在する工場の倉庫として使われていた様な廃墟、慣れた様にその奥へと案内する葵に綾乃に続く
「会う度に言ってる様だけどしょうがないわね。…久しぶりね、綾乃」
「こんにちは、ゴーストガールさん」
「エマよ」
「え?エマ…?」
「いつまでもハンドルネームで呼ばせるのはね
私は別所エマ、気軽にエマとでも呼んでちょうだい」
「じ、じゃあエマさん…と」
ずっと知りたいと思っていたゴーストガール、その本名を知った綾乃は早速とばかりにエマの名前を呼ぶ
名前を呼ばれたエマは何かしら?と感情を蕩けさせる様な微笑みを見せるもので綾乃はぱっと赤くなった顔を隠す、そこへ丸椅子と紙袋を持ってきた葵がエマに物申す視線を送った
「あの、葵ちゃんは何で私をここに呼んでくれたの?」
「…綾乃のおば様から制服やスマホを預かっていたから渡したかっただけよ」
「そっか…ありがとう、葵ちゃん」
大切な幼馴染からここに来てとお願いされたから断れなかったという事も少しはあったものの、それら全てを覆う様に綾乃にあったのは葵とただ会いたいという願いだけ
例えそれが自分の母親からの荷物を渡す為にやむを得ず、口を利いてくれたとしても嬉しくて仕方ないのだ。吹っ切れた様に笑顔を見せる綾乃に葵も緊張が解けたのか、疑問を口にした
「綾乃、貴女、今は一体ど…」
「!二人とも、こっちに来て」
「エマさん、どうしたんですか?…!これ!」
デスクトップタイプのパソコンの液晶には拘束されたアースの姿がどこからか送られてきていた。十中八九、エマがSOLにハッキングして送られている映像だろう
…その先はただただ残虐な映像が流れた、SOLの研究員によるAIへ人権なしと言わんばかりの体の切断とアースが培ってきた感情や思い出というデータの収集
涙を流しながら、それを奪わないでくれと懇願し消えてしまったアース。彼と少しの時間とはいえ、その人となりを知っていた綾乃は項垂れた髪の奥で両手で顔を覆った
「綾乃…」
「こんな、惨い事にお父さんは…」
こんな残酷な事に父が関わっているとは思いもしなかった、けれどハッキングされた映像の奥で父や鬼塚の姿を見てしまった
躊躇いがちに肩を支えてくれる葵の気遣いがあって、綾乃は支えられている状態であった
「どうして、目を覚ましてくれないの…?
こんなの人類の為なんかじゃない…アースさん達にだって…生きる権利は、ある筈なのに…!」
薄氷の夢は春に目覚める
(こんな事は許されない)
(──目を覚ましてよ)